徒手療法の世界に身を置いて
第39回「可動域テストを臨床に落とし込む1例」

 可動域テストには自動可動域テストと他動可動域テストの2つがある。徒手療法家が検査として使うモーション・パルペーション(MP)は、他動可動域テストの1つに分類されるが、同様に整形外科テストにおいても可動域テストが応用されている。また、自動可動域テストは筋力テストにおける筋力3にあたる。
 

改変ヘルフェット テストに見られる臨床所見

 このテストは整形外科テストの1つで、整形外科的には半月板損傷を示唆する検査として紹介されている。

 このテストは膝屈曲時に脛骨粗面が膝蓋骨中央に位置し、伸展時に膝蓋骨の外側縁に沿って移動しないというのが陽性所見である。生体力学的には膝の自動回旋を見ているのであるが、半月板損傷がない被検者にもテストが陽性となる場合がある。このときに考えられるのが、膝関節特に脛骨の機能障害となる。
 

膝の伸展を他動運動と自動運動で比較する

 半月板損傷のない被検者に、自動運動と他動運動を行ってもらう。自動運動では起こらない膝の自動回旋が、他動運動では起こるというのであれば、自動回旋させる筋肉である大腿四頭筋の問題である。同様に、自動運動でも他動運動でも自動回旋が起こらなければ、関節の問題が考慮できる。後者はMPで所見として現れやすいが、前者はMPでは所見が出てこない、または取りにくい。
 

自動運動は筋肉が作用し、他動運動では筋肉は作用しない

 検者が他動運動でしかテストを行っていなければ、筋の作用を確認できない。しかし自動運動だけ行っても、筋によるものか関節が関与しているのかわからない。これらを見極めるにはどちらも必要になってくる。筋が関与していれば、次に神経系が問題なのかも見えてくる。神経系が問題となれば腰神経の支配を考える。

 他動運動だけだと膝関節の施術にとどまっていたものが、腰椎にまで目を向けることができるし、腰椎に問題がない、または施術しても自動回旋が起こらなければ、筋単独の問題で筋力トレーニングが必要となるだろう。
 

 徒手療法は筋骨格系の問題に対して有効な手段となる。そして、筋骨格系は神経系なしでは上手く機能しない。神経-筋-骨格の評価ができなければ、徒手療法の効果は十分に発揮できない。この神経-筋-骨格の評価の入り口になるのが、自動可動域と他動可動域の比較なのである。
 


辻本 善光(つじもと・よしみつ)

現在、辻本カイロプラクティックオフィス(和歌山市)で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

 


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