徒手療法の世界に身を置いて 第54回
「触診の曖昧さをなくす」
徒手療法の中で最も重要な検査の一つが触診です。結構、曖昧になっている徒手療法家の先生方もいるのではないでしょうか? ここにあるはず、この辺にあるから、と経験に頼った触診は曖昧になりやすくなります。
胸椎8番の横突起を触ってみよう
臨床ではアライメントの異常と硬さを見つけることができれば、それが何番だろうと施術はできます。もちろん、それで患者さんが良くなっていけば正解だし、良くならなければ不正解ということになります。しかし、矯正するとなればどうでしょう。より細かな触診が必要になります。この逆に「胸椎8番の横突起を触りましょう」と課題が出されたらどうでしょう。徒手療法家はどのように胸椎8番の横突起を触るのでしょう。いきなり触れる先生はそうそういないのではないでしょうか。
まずは基準が必要
胸椎8番は12個ある胸椎の上から8番目、下から5番目になります。ですから胸椎1番か胸椎12番を最初に特定する必要があります。そのためには、胸椎1番または12番の解剖学的特徴を知っておかなければなりません。スタートを間違えれば、8番目は触れなくなります。
棘突起が触れたら次は横突起
ここでも棘突起と横突起の位置的関係を知っていることが必要になります。胸椎の棘突起は後方下方に伸びているため、棘突起と横突起の位置が他の脊椎と比べて大きく変わります。そのため、これらの関係を知らなければ触診することはできません。そして、その横突起が本当に目標とする脊椎の横突起なのかどうかを判断するために、探したい胸椎8番の棘突起と横突起を触り、横突起を軽く押してみましょう。同じ椎骨であれば、棘突起も動いてくるはずです。このような練習を重ねてこそ、「これ胸椎8番の横突起」といきなり触れるようになるのではないでしょうか。
人は頭の中にあるものしか表現できない
自分が感覚的に触っているだけかどうかを確認するためには、何をしようとしているのか、まずは口に出してみることです。そうすることで、自分のこれからの行動を客観的に見直すことができます。私が受講者によくやってもらうのですが、まず三人一組になってもらい、一人が施術家さん役、もう一人が患者さん役、そして残った一人に施術家さんに指示を出す役をやってもらいます。その指示役さんになった人が、自分のイメージで施術家さんに指示を出し触ってもらいます。それが間違いなく触れれば、その指示役さんはしっかり目的を持った触診をしているということになります。ただし、施術家さん役になった人は先入観を持たず、指示役さんの言うとおりに触らなければなりません。
触診技術は姿位を変えて脊椎をカウントすることでも練習できますが、頭の中にある思考は何かの形で出さないと理解しているかどうかがわかりません。触診で悩んでいる先生は技術面で触れないのか、思考面で触れないのか確認してみるのも良いかもしれませんね。
Webセミナー徒手療法家のための基礎講座『《部位別》徒手療法の検査&アプローチ』
辻本 善光(つじもと・よしみつ)

東大阪市にあったインターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、旧・国際カイロ)に22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
(一社)日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)の学術大会ではワークショップの講師を、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)の設立当初には試験作成委員を務める。ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを全国各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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