代替療法の世界 第22回 「飲んでも飲まれるな」カイロプラクティック栄養学第二期に参加して
酒は薬になるのか?
酒は百薬の長なんてことを昔からいう。酒飲みが自分自身を肯定するための方便かもしれないが、適切な飲酒はストレスを発散し交感神経優位の状態から副交感神経へシフトさせることができる。ストレスの種類も大別すると3種類あり、中でも精神的ストレスが一番悪さをする。積極的なアルコール摂取は推奨していないが、これはカイロプラクティック栄養学の考え方の基本でもあり、過度のストレスを軽減させることにより交感神経のトーンを減少させるということである。コロナ禍の今、アルコール摂取が増え依存症患者も増えている、と地元のローカル新聞が伝えていた。また第2次世界大戦後のヤミ市で「カストリ」なる飲み物があった。これは日本酒を搾った後の酒かすに水を加え、蒸留したものである。蒸留酒はアルコールの沸点が水の沸点より低いことを利用して作られる。戦争後のストレスを軽減させるために酒かすからでも酒を作り出して飲もうという涙ぐましい努力があった。コロナや戦争後の精神的ストレスは厄介なしろものである。確かに飲酒はこうしたストレスを軽減させるだろう。
過ぎたるは及ばざるがごとし
一方で酒は命を削るカンナともいう。これは読んで字のごとく少しずつ命を削っていくという意味合いだ。度が過ぎればストレス軽減どころの話にならない。アルコールは薬物の一種であり、飲酒量が増えると耐性が付き、それに呼応するかのように摂取量も増えていく。ではアルコールがいかに命を削っていくのか?その理由はなんであろうか。前回、カイロプラクティック栄養学の記事でカリウム欠乏について書いたが同じ理由によるものである。アルコールにより細胞内のカリウムが奪われるのである。細胞内にはカリウムが多く存在し、細胞外にはナトリウムが多く存在する。それらが細胞内外を行き来することで活動電位が発生し生命活動が行われている。つまり生命活動の根源であるカリウムが枯渇すれば、当然ながら生命活動は維持できなくなる。慢性的にそれが起これば細胞は容易に興奮しやすくなり閾値は上昇し神経は疲弊する。疲弊だけならまだしも行き着く先は細胞死である。
ベルカーブの意味とは
アルコールを代謝するとアセトアルデヒドが発生する。このアセトアルデヒドを速やかに除去するには4つの物が必要。鉄、B2、B3、モリブデンの4つである。これらの物質が必要不可欠なのであるが注意が必要なのは鉄である。特に女性は月経があるために毎月一定量の血液が失われる。血液の主な成分はヘモグロビンである。ヘモグロビンは鉄で作られており、毎月女性は鉄を体外に排出せざるを得ないのだ。だから鉄欠乏におちいっている人はアセトアルデヒドを除去する能力が極端に低い。貧血を判定する検査項目には赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビンがある。中でも鉄欠乏を判断する方法はヘモグロビン値(血色素量)を見れば簡単だ。検査表を見ると正常とされている上限値、下限値が示されている。これはヘモグロビンの数値を測り中央値を基準として出したものだ。こうした正常値のグラフのことをベルカーブという。中央値のあたりがベルの頂点にあたり、下限値、上限値がそれぞれベルカーブの裾野にあたる。日本語で言うと正規分布曲線のことであり、危険率を1パーセントに設定するか、5パーセントに設定するかによって上限値、下限値からの限界値まではそれぞれ0.25から0.5に変わってくる。つまりその限界値を超える数値の左右の人たちは確率的に99パーセントか95パーセントで入らないものをいう。平たく言うと、危険率1パーセントの統計は99パーセントの信頼度であり、危険率5パーセントは95パーセントの信頼度があるということである。測定した検査値に関しては、おおよそ間違いはないということだ。さて、ここからがカイロプラクティック栄養学の醍醐味であり、ベルカーブの意味を読み取っていく作業になる。正常とされている数値から異常値を読み取っていくのである。具体的なヘモグロビンの数値は控えるが、正常とされていても異常とみなしてよい数値がある。つまり正常値の中でも下限値に近い人は鉄欠乏であるとみなして鉄分を補給すると好結果を生むということである。食品ではレバー、赤肉が推奨される。貧血のほとんどの人はタンパク質をしっかり取ることで解決する。
甘いものにはご用心
ここで1つの疑問がわく。まったくアルコール摂取をしないのに調子が悪い人はどうであろうか。酒は飲まないが甘いものには目がない人は要注意。そういうタイプの人は腸にカンジダ等の菌が発生している可能性がある。アルコールをまったく摂取していないにもかかわらず、砂糖により腸内で発酵が進みアルコールを作りアルデヒドが発生する。アルデヒドを除去するには鉄が必要不可欠である。ただでさえ女性は貧血になりやすいのにアルデヒドの処理に鉄を使うようになれば・・・悪循環の始まりである。この貧血のことをディールブレーカーとも言うそうだ。直訳すれば取引中止となろうか。つまり貧血は酸素の運搬役であるヘモグロビンの働きが十分でないことを表す。酸素が細胞にいきわたらないと、どうなるか?これもまた細胞の死につながるのである。アルデヒドが産生されるということはアルコールが少なからず発生しているということだ。そうして作られたアルコールが多幸感を生み、気分をハイにする。これが砂糖を欲してしまう理由の1つである。知らず知らずのうちにアルコールを作り出してしまう腸内環境を改善させなければならない。簡単な方法はアルコールの材料になるものを腸内に入れないということである。ただやみくもに砂糖の害を説いても納得しないだろう。キーワードは腸内発酵とアルデヒドの発生である。腸内が荒れるとお肌の環境も悪くなる。美容に直結するから聞く耳も持ってくれる可能性は高い。
目的を明確に、住み分けを
和泉DCは重要なことを繰り返し言う。「我々代替療法の仕事は病気を相手にはしないが、症状を相手にする」「医師の仕事と我々の仕事は目的も違うし、当然ながらターゲットが違う。病理的な問題は医師に譲るべきだし、未病による不定愁訴を相手にするべきである」と。そうした住み分けが代替療法という職業、ひいては自分自身を守ることにもつながる。確かに患者は何らかの症状を持ってくるから、その背景には病気もあるかも知れない。しかしなんでもかんでも手を出して医師の領分を侵すこともない。目的を明確にすることで代替療法家、医師、お互いに共存共栄していけるだろう。それには病気から来る症状なのか、それとも病気ではないが症状があるのか。という鑑別判断が必要であろう。では鑑別はどうするのか?という話になるのであるが、問診と血液検査の両方を加味して査定することになる。血液検査は当然ながら異常値は出ていない。だが異常値が出ない段階でも不定愁訴を表す数値は見えているのである。具体的な査定方法はウェビナーで確認してもらえば良いと思う。正規分布曲線をどういう風に読み解くのか。それがカギになろう。そうした視点は今までの栄養学にはなかったように思う。ウェビナーを受けるたびに新しい知見がある。時間の許す方はライブで参加することをお勧めする。ライブで参加することのメリットは即座に疑問を解消できるという点である。栄養学の分厚い本を読むのも良いが大幅な時間短縮につながる。
山﨑 徹(やまさき・とおる)
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