代替療法の世界 第34回「盾と矛」 コロナウイルス その2

前回の答え合わせ

 

前回の記事の中で、いくつかコロナウイルスに対してクイズを出題した。早速、答え合わせといこう。

問1:ワクチン接種者がPCR検査を受けた。その人のPCR検査で、コロナウイルスは見つかる?

答え:見つからない。

理由:PCR検査はウイルスの遺伝情報の特定の部分を何度もコピーすることにより、コロナウイルスが体内に存在していることを証明する。だから、ワクチンにはウイルスの遺伝情報は存在していないので、見つからないのである。さらに付け加えると、ワクチンはウイルスの突起部分(スパイクタンパク質)のmRNAを投与するのみであり、病原体を投与するわけではない。そして、mRNAによりスパイクタンパク質が細胞内で生成され、生体内でコロナウイルスを攻撃する抗体がつくられるという仕組みである。

問2:ワクチン接種後、副反応が強く出たが、副反応がほとんどない人と比べて免疫力はよりアップしている?

答え:アップしない。

理由:副反応と免疫力の獲得には相関関係はない。なぜなら、mRNAワクチンは断片的(ウイルスの突起部分)な特徴を捉えたものである。なので、そのウイルスの特徴に対して免疫細胞が反応できる状態を作り出すことが目的である。過剰に反応、過小に反応するなど個人差はあるが、体内に十分な量のmRNAを入れ、さらにその情報を複製することにより免疫を獲得するのである。mRNAの寿命は3日である。

問3:mRNAワクチンは生体内でDNAに入り込む?

答え:入り込まない。

理由:RNAをDNAに逆転写すれば、DNAを介して入り込むことができる。しかし逆転写には逆転写酵素が必要であり、人間を含め哺乳類は逆転写酵素を持っていない。

問4:RNAは安定しており、めったなことでは壊れない?

答え:壊れる。

理由:汗、唾液等で容易に崩壊する。だから取り扱いには十分注意しないと実験ができない。だからmRNAワクチンの取り扱いが難しい理由がここにある。

問5:スプーン1杯の海水にウイルスは存在している?

答え:約1億個。

問6:人間は生まれながらにしてウイルスを身体に持っている?

答え:持っている。

理由:赤ちゃんが母体で育つ仕組みである。子供は母親にとっては異物であり排除するものである。すべての哺乳類がレトロウイルスを持ち、レトロウイルスの働きにより子供を異物として認識できないようにしている。異物として認識したならば、たちまち流産させてしまうだろう。ここに免疫の妙がある。祖先がレトロウイルスに感染し胎盤の特殊な膜をつくるための細胞融合促進分子の設計図を手に入れたのである。レトロウイルスを取り込むことにより、哺乳類として母体内で育てることができるようになった。ウイルスと共生することにより、母体内である程度まで生育することにより生存率が上昇した。ウイルスのおかげで種としての繁栄を享受しているのだ。卵生から胎生への生物としての大きなシフトはウイルスの力で行われたのである。

問7:DNAウイルスは突然変異をする?

答え:突然変異する。RNAウイルスと比較すると100分の1である。

問8:RNAウイルスは突然変異をする?

答え:突然変異する。DNAの100倍変異しやすい。

理由:DNA、RNAとも変異はする。しかしながら、その変異体はほとんどがガラクタであり、たまに感染力が強く弱毒性のものが生まれると、それが既存のウイルスを駆逐する。サル社会のボスの交代のように置き換わる。

 

矛盾

最強の盾がある。最強の矛がある。では最強の二つを戦わせてみれば、優劣がつくのではないか? もし優劣がつかないのであるならば、「盾と矛」どちらも最強とは言えなくなる。「矛盾」の成立のエピソードである。これらをウイルスとワクチンに例えてみると、未知のコロナウイルスは最強の矛で、mRNAワクチンは最強の盾となる。今現在(2022.4.5)軍配は矛であるコロナウイルスに上がっている。カタリン・カリコ氏によりmRNAワクチンが日の目を見るようになった。最初のころmRNAワクチンは使い物にならなかった。炎症が強すぎて実用化できなかったのである。ヤマサ醤油のシュードウリジンを用いてウリジンと置き換えることで炎症反応が減った。こうして人類は総力戦でmRNAワクチンを開発したのである。われわれはコロナに負けているのか? このまま負け続けるのか?

 

かわいいウサギも増えすぎると・・・

もう一つ、ウイルスの特性からコロナウイルスを見てみると、案外良い勝負をしている。理由を言う前に、ウイルスの特徴を述べる。一般論ではあるが、ウイルスは変異を繰り返すたびに弱毒化し感染力をアップさせる。ウイルスの目的は自分自身を増やすことである。であるならば、宿主を殺してしまえば元も子もない。宿主はある程度元気でウイルスを撒き散らいてくれなければならないのだ。こうしたウイルス側の戦略がある。海外の事例で見ると、オーストラリアに狩猟用ウサギが輸入された。最初は24羽だったが繁殖力は凄まじく、瞬く間に数億羽に増えた。牧草地の草を食い荒らし、狩猟の的から害獣になった。政府は対応を迫られる。ウサギだけを狙い撃ちにするウイルスがあった。そのウイルスを輸入し拡散させた。当初は99%の致死率によるウイルスにより激減した。しかし政府の喜びもつかの間、ウイルスに耐性を持つウサギの出現により状況が一変する。さらにウイルスが変異、弱毒化し容易にウサギが死ななくなった。この事例からもウイルスの特性が理解できるだろう。

 

ワクチンは最強の盾

mRNAワクチンは壊れやすい。だから厳重な温度管理が大切で、品質を維持しようとしたら公衆衛生、物流システムが整っているところでしか接種できない。いうなれば、先進国が恩恵を得られるワクチンと言い換えることもできる。先進国以外は十分なワクチン接種ができない。そういう国では何が起こるのか? ウイルスが蔓延し、ウイルスが変異する。

先に述べたように、RNAウイルスはDNAウイルスの100倍変異しやすい。となれば、その地域ではウイルスが変異する可能性が高くなり、より感染力が強く、弱毒化したウイルスが発現しやすくなる。ウイルスにとって変異しやすい場所はいくつもあるだろう。地球を蟲毒(こどく)の呪詛の器に例えると、地球規模でウイルスを戦わせ、より感染力が強いウイルスをつくり出しているのである。

先進国の人々は、取り敢えずワクチンを打って感染による重篤化を防ぎ、時間稼ぎをしている間に、ウイルスが弱毒化するまで待てば良い。良い勝負をしていると言った理由はこれである。その恩恵はワクチンを打ちたくないというワクチン否定派にも与えられる。それはワクチン接種派による集団免疫獲得効果と、ウイルスの特性による弱毒効果である。これら二つの効果により、ただただ静かに時間が過ぎるのを待つだけで良い。結果は時間がつくる。新たなパンデミックが起きてもmRNAワクチンで対処できる。経済格差がもたらす残酷な話であるが、ある意味では最強の盾、いわんや人柱か。


山﨑 徹(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者
 
看護師、柔整師の資格を有する傍ら、カイロプラクティックとの出会いからシオカワでガンステッドを学び、21世紀間際にスタートした科学新聞社主催の「増田ゼミ」 で増田裕氏(D.C.,D.A.C.N.B.)と出会ったことから、以後、氏の追っかけを自任し 神経学、NAETを学ぶ。現在は専らオステオパシーを学び実践しているが、これまでに 身につけた幅広い知識と独特の切り口でファンも多く、カイロ-ジャーナル紙から引き続き連載をお願いしている。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。