代替療法の世界 第20回 「足し算、引き算-カイロプラクティック栄養学を学んで」

ちぐはぐだらけの飽食時代を生きる日本人

食うや食わずの生活をしていた時代はとうの昔。今は何でも食べられるようになった。むろん世界では1日1ドル以下で生活をしている人たちもいる。しかしながら多くの日本人は飽食時代を生きている。テレビでは、やれスイーツ特集や大食い番組などを放送する。一方ダイエット番組なども盛んだ。マッチポンプ、ここに極まれり。マッチポンプとは片方で火をつけ、片方で消火するという意味である。これを当てはめると現代人にとって飽食の時代は食べながら痩せなければならないから忙しい限りだ。生活習慣病も身近な問題になってしまった。

何でもかんでも食べれば良いのか!?

一般的に食はどうとらえられているのだろうか。医食同源という食養の大切さを説いた言葉がある。食べたものが血となり肉となり身体をつくる。当たり前といえば当たり前の話だが、食養生なんてことは考えなくても自然に行われてきたのである。しかし飽食の時代はそうもいかなくなってきた。
生活習慣病を予防するために専門家が出てきて各種の食品の有効性を説明する。マスコミも当然こうした風潮に乗っかるから、テレビをつければ健康番組などでは何々という食品は血圧に良い、はたまた血糖値を下げる効果がある等々。健康雑誌でも特集を組んで紹介する。CMなんかでは健康食品をいまだに半額とか、低価格で一家族3袋までとか、あの手この手で売り込みをかける。健康商売と言ってしまえば身も蓋もないのであるが、いやはや商魂たくましい。あれを摂ったら良い、これも体に良いという。世に出回っている健康に関する栄養学のほとんどは足し算の栄養学である。

知らぬは、患者も治療者も同じ

和泉宏典DCのカイロプラクティック栄養学では、これら足し算の栄養学とは一線を画す。食べ物を効率的に体内に取り込むには消化、吸収、排せつが必要になる。中でも特に「排せつ」に着目する。
神経活動にはNaポンプ、Kポンプに代表される脱分極が欠かせない。ホメオスタシスは素晴らしいシステムだが同時に盲点もある。その恒常性を維持するためには他の組織を踏み台にする。欠乏した細胞外液(血液)のカリウムを維持するためには、細胞内液のカリウムを血液中に持ってくるのだ。血液中のカリウムをいかに減らさないようにするか、が大事なのである。このカリウムを排出させてしまう飲食物がある。つまり何を摂るかではなく、何を摂らないかが重要になってくる。
カイロプラクティック栄養学は足し算の栄養学ではなく引き算の栄養学である。多くの不定愁訴を訴える患者は、知らず知らずのうちにこうしたカリウム欠乏の状態に陥っているのだ。血液検査の結果を鵜呑みにしてはならない理由がここにある。つまり医療機関で「何も問題がないですよ」と太鼓判を押されても、不定愁訴をもっている患者は問題が山積みになっているのである。

手遅れになる前に

ではカリウム欠乏になると何が起こるのか? 細胞からはカリウムが枯渇するために脱分極が上手く行えなくなる。神経細胞が発火しやすくなり疲弊して交感神経の亢進が起こる。交感神経過緊張により、相対的に副交感神経の活動低下が起こる。副交感神経が働かなければ、消化、吸収、排せつといった生命維持に必要なシステムも上手く働かなくなる。こうして悪循環に陥ってしまうのである。
一般的な医療ではこうしたカリウム欠乏に対しては、ほとんどと言っていいくらい対処方法がない。一般的にカリウムが枯渇することはないと考えられているし、ホメオスタシスの働きでよっぽど悪くならないと血液検査での異常値は表れないのである。検査で異常値が見つかったら「時すでに遅し」の状態なのだ。

中身は難しいが、コンセプトは単純明快

和泉DCは不定愁訴(病気ではない症状)には原因があるという。それは3つあって、精神的ストレス、肉体的ストレス、化学的ストレスである。カイロプラクティック栄養学では化学的ストレスに焦点を当てる。カイロプラクティックのケアで肉体的ストレスの除去はできるだろう。それによって愁訴が減少すれば、それに越したことはない。しかし改善しない場合も当然あるだろう。そうした場合には上記の3つの要因が不定愁訴を改善させるカギになる。
精神的ストレスを減少させるには仕事を辞めたり、思い切った環境の変化が必要になるから現実的には厳しいだろう。化学的ストレスである栄養、つまり食生活の改善は、やる気があればできることである。これはカイロプラクティック栄養学の単純明快な理論であり、3つの要因のうち2つの要因を除去できれば、不定愁訴も軽減する可能性が高くなるということだ。栄養が身体に及ぼす影響を理解するのは容易な作業ではないが、患者に根拠と自信を持って栄養指導ができるようになれば、大いに助けになることだろう。

目から鱗が落ちる情報ばかり

栄養学クイズをいくつか出そう。
1. カリウムを欠乏させてしまう飲食物を3つ挙げよ!
2. カリウム欠乏により特異的に硬くなる筋肉はどこか?
3. ポテンジャーソーサー(胸椎前弯が強くなり上胸背部が凹み、水が溜まる皿のように見える状態)はどのような栄養状態で起こるのか?
4. 迷走神経を賦活させる3つの動作とは?
5. 産後うつの要因として三大栄養素の何が原因か?
6. 補水液やクリームを塗っても肌がカサカサする原因は?

上記のクイズは1回目と2回目の講義内容から抜粋して作ってみた。カイロプラクティック栄養学が果たす役割は、美容から健康に至るまで多岐にわたる。カイロプラクティック栄養学に興味のある方は今からでも遅くはない。幸い2週間限定だったセミナー動画の視聴が、和泉DCの配慮で10月以降に予定されている次回シリーズの直前まで視聴できるようになった。このチャンスを見逃す手はない。カイロジャーナル・ドットコムに連絡してみることだ。カイロプラクティックに限らず代替療法に携わる人には必須の学問だと思う。気になるクイズの答えはセミナー動画で確認して欲しい。


山﨑 徹(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者
 
看護師、柔整師の資格を有する傍ら、カイロプラクティックとの出会いからシオカワでガンステッドを学び、21世紀間際にスタートした科学新聞社主催の「増田ゼミ」 で増田裕氏(D.C.,D.A.C.N.B.)と出会ったことから、以後、氏の追っかけを自任し 神経学、NAETを学ぶ。現在は専らオステオパシーを学び実践しているが、これまでに 身につけた幅広い知識と独特の切り口でファンも多く、カイロ-ジャーナル紙から引き続き連載をお願いしている。

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