治療院成功への道 第4回
「物価高騰の中、治療院はどうあるべきか?」

 数カ月前からインフレによる物価高騰の波が身近に感じられるようになってきました。こんな状況の中、治療院はどう対応していけばいいのか、自分が思うことを書いてみました。
 

治療家を選ぶのは患者さん

 4カ月前に行きつけのお蕎麦屋さんの値段が200円上がりました… 最近のインフレの影響で流通費や材料費が上がったこと、さらに、コロナの影響も少しずつ落ち着いてきたものの、3年前のお店の繁盛ぶりと比べると、値上げも仕方がないのかと。

 値段が上がったことは少し負担になるものの、美味しい蕎麦を食べたいという欲求には勝てず、相変わらず常連面して、いつもの「かき揚げ丼とせいろの大盛り」のセットを食べに通っています。過去に地元のお蕎麦屋さんをいろいろ食べ歩いてみましたが、やはりここが一番美味い。

 値上げをしたときは、いかに人気のお蕎麦屋さんであっても、やはり客足が減っていました。でも値上げから4カ月経った現在では、新規のお客さんも増え、またお店は忙しくなっています。値上げをしたときには、なんとも残念な気持ちになりましたが、今となっては並ばずに蕎麦を食べることができた3カ月前が、なんだか恋しく感じてしまいます… われながら本当に自分勝手な奴だなと…
 

インフレの影響は治療院にどう影響するのか?

 最近アメリカで生活している知人が、「スターバックスのコーヒーが1杯1,000円、コーヒーと一緒にサンドイッチを食べようものなら3,000円以上もかかる」と嘆きのツイートをしていました。

 日本にいると、こんなインフレの影響を今はそれほど感じることがありませんが、ありがたいことなのか、世界で起こっているインフレをリアルに感じることができない状況になっています。

 われわれの業界に置き換えて考えてみると、今の施術料金のままで治療院を運営するなら、世界基準で見たときに価格の価値が下がっていることになり、インフレの問題は対岸の火事ではないと感じます。
 

治療費の値上げは悪なのか?

 私は整骨院を運営する傍ら、保険診療に頼らない整骨院経営をサポートする仕事(治療院成功塾の運営)もしています。そのときによく「治療費を上げたら患者さんが来なくなるのでは」「今まで続けて来てくれた患者さんを裏切ることになるのでは」という相談を受けることがあります。これは保険診療から自費診療に切り替えるとき、あるいは今の治療費を上げるときに必ず受ける相談です。
※そもそも健康保険は外傷以外に使えません。外傷以外で保険請求をしたときは不正です。

 しかし考えてみてください。お蕎麦屋さんが値段を上げたから、お店に行かないという選択はお客さんが決めること。つまり値段を上げて来なくなった患者さんにとって、それだけの価値しかなかったということではないでしょうか。「患者さんのために」という謳い文句は、値上げを余儀なくされたときに、かなり上から目線だったことに気づくことになります。

 日本にいたらわからないことでも、海外では400円のコーヒーが1カ月経つと倍以上の値段になっているのです。未来のことは誰にもわかりませんが、インフレの影響や増税は今後確実に私たちの生活にも深く関わってくると考えています。
 

コロナによって急速に進んだ価値観の変化

 2020年3月新型コロナウイルスの感染が流行し、治療院業界は大きな影響を受けました。コロナによって1回1,000円以内で施術を受けることができる整骨院は、軒並みシャッターを下ろしました。私は兵庫県で開業していますが、緊急事態宣言中も整骨院や鍼灸院は診療をしてもいいという県からの許可も出ていました。2年以上経った今だから言えることですが、コロナが流行する前は、「完全予約制」「1回5,000円以上の治療費」の整骨院はほとんどない状況でした。

 しかしコロナ禍の中、予約が取れないほど忙しくなった整骨院は、外傷以外はすべて自費診療。完全予約制を導入しながら、業界のコンプライアンスを守りつつ整骨院や治療院を運営している傾向がありました。つまり、コロナをきっかけに患者さんのニーズは多少治療費が高くても、人との接触が少なく、何度も通院せずに済む質の高い施術にニーズが高まったと考えられます。

 昔の整骨院は、ワンコインくらいで治療を受けることができ、待合室はたくさんの患者さんで一杯になっていました。中には行列ができることもあったくらいです。でもコロナの影響で、医療機関では人と人との接触を極力避けるようになりました。

 コロナによって国民の価値観が変わり、患者さんから治療院に求められることも変わったと考えています。今後インフレが進めば、さらに治療院に求められるニーズは変わってくるだろうと予測しています。コロナをきっかけに、5年前と比べると3倍速くらいで時代が変化しているように感じられます。このスピードに置いていかれないように、治療院も治療家も柔軟に対応していく必要があるのではないでしょうか。


作尾 大介(さくお だいすけ)

こころ鍼灸整骨院 院長
治療院成功塾 主宰
・柔道整復師
(一社)微弱電流療法研究会 代表理事
空手の指導者をしていたときに、ケガで修業を断念する道場生たちを目の当たりにし、治療家の道を志す。整骨院での下積みと勉強の日々が続く中でも稽古は欠かさず、大会で優勝を飾る。選手引退後、2013年に外傷以外保険診療を一切使わない整骨院を開業するも、施術単価が安い同業者が立ち並ぶ中、自費診療は受け入れられない状況が続き、もう廃業かと追い詰められたときに、もっと経営の勉強をしなければと寝る間を惜しんで経営の勉強に取り組む。その後、業績は V 字回復を果たす。
全く経営理念の違う古株の治療家から嫌がらせを受けたこともあったが、「保険診療に頼らない院の経営方法を教えてほしい」という同業者からの声を受け、自費診療での安定した院の経営方法を教える塾を主宰。2020年、新型コロナウイルス感染拡大によって廃業する院も出る中、塾生たちは全員売り上げを伸ばし、中には緊急事態宣言中に開業し、月100万円を超える収益を叩き出した人もいた。
現在も、自費診療で質の高い経営を継続させる方法を伝える傍ら、MPSGに所属しカイロプラクティックの勉強に励んでいる。

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