「治療院成功への道」
第1回 治療家に、いま求められるもの
-患者さんの立場になって考える-

今月からまた、あるきっかけでカイロプラクティックと直接かかわる話ではないが、整骨院での自費診療に取り組むも思うに任せず、店をたたむ危機から経営という観点で院の在り方を見直し、見事経営を安定させた作尾大介君に執筆してもらうことにした。

彼とは、10年ほど前になるか大阪で有志によって私を祝ってくれるパーティーを開いてもらったことがあって、その際にそれまでさほど会話もしたこともなかったが、「実は私も斎藤さんと同じ誕生日なんですよ」と耳打ちされ、それ以来、自分の誕生日を考えると顔が浮かぶ、良いのやら悪いのやら何とも言えない付き合いになってしまった。その誕生月が今月である。スタートさせるには格好の機会かもしれない。

それから後日知ったことだが、彼には空手に打ち込んだ強面の面もある。年齢で押さえつけるのは止めて、やさしく「息切れしないように連載に向かって頑張ってね、押忍!!」

科学新聞社 斎藤 信次


はじめまして、兵庫県小野市で【こころ鍼灸整骨院】を開業しております、作尾大介と申します。ご存じない方が大半だと思いますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

私のカイロプラクティックとの出会いは、整骨院での修業時代に専門学校のときの恩師、木村建雄先生の紹介で、中川貴雄先生が主宰されているモーション・パルペーション研究会(MPSG)に参加させていただいたことがきっかけでした。

そしてこのたび、またその木村先生とのご縁で、木村先生の30年には遠く及ばないが10年近く昵懇(じっこん)にさせていただいている本サイトの責任者、斎藤信次氏から「原稿を書いてみませんか?」とお声をかけていただき、せっかくのチャンスなので「いま、痛切に感じていること」を書かせていただくことにしました。拙い文章ですが最後までお読みいただければ幸いです。

14校しかなかった柔整師養成校が、規制緩和の波に乗って100校にもなった

平成10年に規制緩和によって、柔整師の養成校が雨後の筍のごとく増えました。狭き門だった専門学校も私が入学した頃は、小論文と簡単な学力テストだけで入学が可能になりました。その後、整骨院でアルバイトをしながら、養成校の夜間部に通い下積みをさせていただきました。

今では法律上考えられないことですが、学生の頃から患者さんの施術を任せていただき、修業時代には毎日親指がパンパンになるくらい、患者さんをマッサージしていました。でも、心の中では「これって施術と言っていいのだろうか?」と、モヤモヤしながらも下積みだと割り切りマッサージをしていたのです。

ただ、そのとき感じたことは、「この先10年後、同じことをやっているんだろうか?」「これを治療と呼んでいいのだろうか?」、そんな葛藤を毎日抱えていました。

専門学校の同級生に相談しても、「大丈夫や! お前は真面目やなぁ~ 揉んどけばええねん」「そんなことより、どうやって経営していくかが大事やろ」といった反応。

そんなある日、学校でこの原稿を書かせていただく大元のきっかけをつくってくれた講師、現在はMPSGの講師も務めている木村建雄先生と出会ったのです。木村先生が腰痛で辛そうにしていた学生を施術すると、10秒間ほど足を軽く引っ張るだけで、可動域や筋出力が改善し、腰痛まで改善するという治療を目の当たりにしました。この治療に感動した私は、「この技術を学びたい!」と、先生に頼み込みMPSGを紹介していただきました。そして、少しずつカイロプラクティックの面白さに魅了されるようになったのです。

コロナをきっかけに激変する治療院業界

それから15年後、コロナをきっかけに治療院業界も激変しました。15年前に「このままマッサージをしているだけでいいんだろうか?」と相談した同級生は、整骨院を閉め工場に勤務しながら、ウーバーイーツのアルバイトをしているという噂を耳にしました。

コロナ以降、患者さんからは、「親戚が東京の〇〇に住んでいるんですが、こんなご時世だからこそ、ちゃんとした治療院を探しているんですが」「70歳の母が腰痛で悩んでいまして…信頼できる先生はいませんか?」という相談を受ける機会が増えました。

詳しくお話を聞かせていただくと、体が辛くてもどこで治療を受ければ良いのかわからず、病院や近所の治療院、リフレクソロジーに通うも良くならず、「もう治らない」と諦めかけているとのことでした。

街を歩いていると、職業病かもしれませんが、整骨院や整体院、リラクゼーションといったお店がコンビニより多く立ち並んでいるように感じられます。「どこに行っても治らなかった…」、患者さんから同じような言葉を言われた経験は、皆さんそれなりにおありなんじゃないでしょうか。

患者さんの立場になって考えると、治療院の数は増えて選択肢は増えたことは良いのですが、今度はどこの治療院を選べば良いのか、見当がつかない状況になっているのです。 治療院を探す手段は、ネットで「症状 治療院」と調べるか、知人から口頭で聞くしかない状況になっています。

体の不調に悩む患者さんは、ホームページやブログを見ても、専門用語だらけでは理解することはできません。これから患者さんの役に立つためには、患者さんに選ばれる努力が絶対必要になるんだろうと確信しています。

 

患者さんの立場で考える

先日、自宅の畳の張り替えのために、畳屋さんのホームページを探していました。すると患者さんが治療院を探すのと同じように、どこを選べば良いのか全く見当がつきませんでした。

どこを見ても同じホームページのテンプレートと構成、専門用語だらけでわかりにくいブログ、いつ見ても期間限定の値引き。うんざりしながらネットで検索をしていると、「お、ここは良さそうだな」と思える畳屋さんが何軒かありました。それは商品の説明や料金の違いの説明を、畳について何もわからない私でも理解しやすいように書かれているものでした。ホームページを読んでいくと、思わず「なるほど」とつぶやいてしまうほど、とてもわかりやすい文章だったのです。

思えば、カイロプラクティックのセミナーでも、講師の先生は受講生の理解力に合わせてアドバイスをしてくださいます。知識と経験が豊富で、なおかつ技術を研鑽している先生の言葉には深みがあると感じています。

患者さんの立場になって考えて、治療家のホームページやブログを見ると、専門用語で症状の説明をされても、何を言っているのかさっぱりわかりません。肩甲挙筋や上腕二頭筋と書いているだけで「なんや、それ?」となります。

つまり、治療者側の立場で詳しい説明や、学んできた経験から情報発信したとしても、患者側が望んでいる情報を受け取れなければ、苦労して作った文章やブログも意味もたないことになります。

昔は整骨院やカイロプラクティックの看板を掲げているだけで、患者さんは来院してくださいました。しかし、今は街を歩けばコンビニ以上に治療院が溢れかえっています。これからは体の不調を抱える患者さんに、わかりやすく情報を発信していくことが大切になると考えています。

患者さんの目線になり、わかりやすい説明ができるようになれば、問診や検査にも活かすことが可能です。患者さんに伝わりやすい説明や表現ができれば、治療難民になった方々の救済になるかもしれません。

・これから変わり続けていく治療院業界に適応するため

・賢人たちから学んだ技術や知識を次の世代にも伝えていくため

・体の不調に苦しみ治療院を探している患者さんの役に立つため

私の治療院でもブログやホームページの文章を、患者さんが読んだときにわかやすい表現に文章を変えたら、たくさんの新規患者さんが来院してくださるようになりました。広告費は1円も遣うことなく、毎月定期的に新規患者さんが来院してくださいます。

来院なさる患者さんに来院の動機を窺うと、「〇〇のブログを読んで」「ホームページの腰痛の文章を読んで『ここなら!』と思った」という嬉しい言葉をいただきます。

今後、治療院を継続していくためにも、今まで学んできた知識や技術、経験を患者さんの立場に立って文章書く必要があると考えています。


作尾 大介(さくお だいすけ)

こころ鍼灸整骨院 院長
治療院成功塾 主宰
・柔道整復師
(一社)微弱電流療法研究会 代表理事
空手の指導者をしていたときに、ケガで修業を断念する道場生たちを目の当たりにし、治療家の道を志す。整骨院での下積みと勉強の日々が続く中でも稽古は欠かさず、大会で優勝を飾る。選手引退後、2013年に外傷以外保険診療を一切使わない整骨院を開業するも、施術単価が安い同業者が立ち並ぶ中、自費診療は受け入れられない状況が続き、もう廃業かと追い詰められたときに、もっと経営の勉強をしなければと寝る間を惜しんで経営の勉強に取り組む。その後、業績は V 字回復を果たす。
全く経営理念の違う古株の治療家から嫌がらせを受けたこともあったが、「保険診療に頼らない院の経営方法を教えてほしい」という同業者からの声を受け、自費診療での安定した院の経営方法を教える塾を主宰。2020年、新型コロナウイルス感染拡大によって廃業する院も出る中、塾生たちは全員売り上げを伸ばし、中には緊急事態宣言中に開業し、月100万円を超える収益を叩き出した人もいた。
現在も、自費診療で質の高い経営を継続させる方法を伝える傍ら、MPSGに所属しカイロプラクティックの勉強に励んでいる。

 

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