徒手療法の世界に身を置いて 第52回
「コンタクト部位の選択」
前回、前々回と、椎体間関節の問題か、椎間関節の問題かの鑑別のお話をさせていただきましたが、今回はコンタクト部位の選択についてお話しさせていただきます。
屈曲-伸展および側屈に関係する椎体間関節
椎体間関節は、椎間板(髄核)の動きと密接に関係しています。これらの障害に対しては、椎間板への影響を考慮しなければなりません。そのため、解剖学的には棘突起接触の方が有利となります。これは頚椎、腰椎では特に顕著になります。なぜなら、椎体の真後ろに棘突起が存在するからです。また胸椎は棘突起が後方下方に伸びますが、できる限り棘突起の基部をコンタクトすることで、修正できるのではないでしょうか。
回旋に関与する椎間関節
椎間関節は左右の回旋と密接な関係を持ちます。回旋運動時には髄核の移動はほとんどなく、椎間板(髄核)の関与が少なくなります。回旋の障害は、頚椎なら椎弓板/関節突起、胸椎なら横突起、腰椎なら乳頭突起へのコンタクトが有利になるでしょう。もちろん、これらの接触部位に関しても、コンタクト位置の調整や、矯正時のトルクや矯正方向の修正で、椎間板(髄核)に対しても影響を及ぼす可能性が出てきます。
モーション・パルペーション(MP)による鑑別
先に説明させていただいているように、基本的なコンタクト部位の選択は、あくまでも得意か不得意かの話であって、臨床上での参考にしていただければ良いのですが、最終的な運動制限の決定はMPによって行われます。MPでもそれぞれの動きを確認する際、棘突起接触での屈曲-伸展、回旋、側屈の検査があり、横突起接触でも同様に屈曲-伸展、回旋、側屈の検査があります。例えば、横突起接触による回旋制限の差異よりも、棘突起接触による回旋制限の差異の方が硬ければ、回旋制限であっても棘突起接触の方が効果的に施術できる場合があります。
臨床上での修正案
MPによる問題の運動制限が複合している場合、屈曲-伸展および側屈制限は棘突起コンタクトで矯正し、回旋制限は横突起で矯正するといったことも可能でしょう。また側臥位のプルテクニックは、基本的には棘突起接触になりますが、回旋制限に対して非常に有効な手段となります。このように、コンタクトの選択だけではなく、使用する手技によっても得意、不得意が存在しますので、これらも施術の際に考慮していただくと良いでしょう。
まとめ
それぞれのコンタクト部位によって得意、不得意が存在します。また少しの修正で、不得意な運動制限に関しても修正していくことは可能です。しかし修正に関しては、触診技術の向上や施術技術の向上が不可欠となるため、日々の研鑽が重要になります。日頃、思うような成果が得られていない場合、一度コンタクト部位を見直してみるのも大切だと思います。
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辻本 善光(つじもと・よしみつ)

東大阪市にあったインターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、旧・国際カイロ)に22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
(一社)日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)の学術大会ではワークショップの講師を、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)の設立当初には試験作成委員を務める。ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを全国各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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