代替療法の世界 第53回「新しい試み」
– 3月8日開催、荒川、木村、辻本氏の大阪コラボ・セミナーから –
楽しいコラボ・セミナー
先日、表題のサブタイトルにも挙げたセミナーに参加してきた。そのセミナーが非常に楽しい雰囲気の中で行われていたので、今回はそのセミナーについて書かせていただくことにした。
カイロプラクティックのテクニックには数多くの種類がある。多種多様なという意味合いのディバーシファイド・テクニックをはじめとして、SOT、AK、ローガン・ベーシックなどなど多数ある。中でも根強い人気のテクニックであるガンステッド・テクニックをご存じであろうか。その独特の分析方法、並びにテクニックの独創性など他の治療術とは一線を画している。長年にわたりガンステッドの研究を重ねてきた荒川氏、その解釈をサポートする木村氏、そして基礎教育で定評のある辻本氏の3人を迎えてのコラボ・セミナーが開催された。
求道者、荒川恵史
まずは荒川氏から。その昔、シオカワ・スクールでターグル教室というものが月一で行われていたときからの知り合いで、筆者と同じくしてセミナーを受けた同期のような存在である。その後、氏はガンステッドに魅せられて探求の道に入っていく。あるとき、米国へ行った際にガンステッドの写真データを入手したと言っていた。そこからが凄かった。ガンステッドがアジャストを行っている写真を等身大に拡大し、この形からは、「体の使い方はこうだろうとしか考えられない」と言ってガンステッド・テクニックを考察していた。そこまでやるか、というのが率直な感想であったが、その当時から現在に至るまで、氏のやってきたことにブレはないのである。
セミナーでのコンセプトは明確である。
1、カイロプラクティックのオリジナルのテクニックとは何か?
2、B.J.パーマーが述べているアジャストメントとは何か?
3、アジャストメントは「いつ」行われるのか?
4、Extra somethingとは何か?
以上の4つのキーワードをベースにしてガンステッド・テクニックを考察しているのである。
「形」から入る、一着の発想
もう一つの重要なキーワードは「形」である。彼の出身地の豊橋は吉田藩であり、柳生新陰流が藩の剣術として普及していたそうである。この新陰流の元になった陰流の発想も「形」からである。天井から刀を吊るし、その刀が最速、最短で動く動きを分析したのである。刀が人を切るときにこういう動きをするから、その動きを邪魔しないような動きとは何か、から剣術が練り上げられていったのである。となると荒川氏の提唱する「ニーチェスト・テクニック」のポジショニングとアジャストメントの形が崩されることなく、「サイドポスチャー・テクニック」にも使われていないといけないということに一致する。荒川氏の言を裏付ける1927年発行のカイロプラクティックのアート(Stephenson著)に「カイロプラクティックは柔術の功である」と記されている。また柳生新陰流の柳生宗厳は上泉信綱(新陰流開祖)から体術の印可を受けている。剣術ではなく体術であるというのが興味深い。だから柳生には無刀取りなどの体術からの応用技が見られるのである。このように、柔術の基礎になったのは剣術の刀の動きである。だから、「形」から入るのは正解なのだ。
基本の検査の重要性
基本と検査の重要性はいくら強調してもいいだろう。これがあれば、様々なテクニックや治療術を学んでも応用が利く。逆に言えば、新しい治療術やテクニックを学ばなくてもやるべきことが見えてくるのである。それぐらい基本と検査には効果があるのだ。さて、その基本を教えてくれるのが辻本氏である。先に荒川氏のガンステッドの考察を記した。辻本氏のセミナーは荒川氏の考察を補完する。例えば検査法を分けると、反射検査、筋力検査、知覚検査などがある。これらの神経学的検査が一致しない場合はどうするか。多くの臨床家は悩むのではないだろうか。
例えば脊髄神経の皮膚支配域(デルマトーム)と、末梢神経の皮膚支配域の違いである。一例を挙げると、「膝から下が痛い」という主訴があったとする。神経根レベルであればデルマトームだとL3、L4辺りになるだろうか。デルマトームを頼りに自信を持って脊柱をアジャストしても、良い結果が得られるときもあれば、効果がないときもある。こうした場合は、何が原因か、の特定がカギになる。
1、前脛骨筋のトーンが低下している。
2、膝蓋腱反射が低下している。
という状況であったら、何をどうやって検査をし、治療を組み立てるのか。
ここからが辻本氏の検査の真骨頂である。
1、前脛骨筋は深腓骨神経に支配されている。
2、膝蓋腱反射は大腿神経支配である。
これらの支配神経の通り道の分析が重要になる。2つの神経はともに椎間孔を通る。深腓骨神経は総腓骨神経が枝分かれして名称が変わったものである。だから椎間孔から前脛骨筋に至るまでの筋肉や関節を吟味することが肝要である。大腿神経も同じことで、腸腰筋、筋裂孔、縫工筋、大腿四頭筋から下腿筋膜までのチェックが必要である。通り道の筋肉に問題があればそれを処理し、関節に問題があればそれを処理するだけである。治療効果の判定は筋力テストで出来るのだ。処理の結果、前脛骨筋のトーンが回復し、膝蓋腱反射が正常に戻れば、治療が上手くいったという証左になる。
サポート役に徹する
本ジャーナルで、「イネイト・インテリジェンスとは何か?」の連載でお馴染みの木村功氏は、荒川氏の実技の際に武道的身体操作を補完すべく、受講生に体の使い方を細かく指導していた。徒手療法界の論客ではあるが、論だけにとどまらず実践にも通じている。常々「カイロプラクティックのアジャストメントはリセット、もしくは変容のスイッチである」と論じている。たまにFacebook上で、イネイトの定義や発動条件を巡って楽しく議論させてもらっており、その深い哲学的洞察には刺激を受けている。とは言え、実技の際には難しい話など一切なく荒川氏のサポート役に徹しているのだ。
コラボ・セミナー、それぞれのセミナー、どちらも対面で
先に論じた、辻本氏の検査によって椎間孔の関与が濃厚だということになれば、荒川氏が提唱するガンステッド・テクニックの有効性が発揮される。ただし、そのサブラクセーションが椎間関節由来か、椎間板由来かの鑑別が必要になる。その鑑別ができれば、狙い方、アジャストメントの方向性が決まる。辻本氏の検査と荒川氏のガンステッド・テクニックの考察がコラボした意味が良くわかる。次回のコラボ・セミナーの開催は6月21日、大阪で行われる予定である。また、このコラボ・セミナーとは別に、3人とも東京でシリーズの対面セミナーを行っている。手取り足取りの講習を望まれる方は、一度参加されてみてはいかがであろうか。
山﨑 徹(やまさき・とおる)

コメント
この記事へのコメントはありません。
この記事へのトラックバックはありません。