代替療法の世界 第45回
「視点の違い」

忠臣蔵の登場人物、それぞれの思い

 年末が近づくと、必ずと言っていいほど赤穂浪士がテレビ、寄席などで登場する機会が増える。ほとんどの人が知っている話である。主君の仇を忠義の志士47人が宿敵である吉良上野介を討つ、というものである。この話をそれぞれの立場から見た場合には事情が違ってくる。
1.志士47人視点
2.吉良上野介視点
3.赤穂浪士視点
である。

1.はこの物語の主人公たちである。憎き吉良を倒す面々。赤穂義士銘々伝として講談で語られる「赤垣徳利の別れ」「安兵衛婿入り」など。人々の共感を得やすく、話としても面白いから現代までも受けつがれているのだ。
2.は吉良側の視点である。なぜに浅野内匠頭(以下浅野)に刃傷沙汰を起こされたのか。吉良は地元では名君であったという説もあり、物語に描かれているような悪人ではなかったという評価もあるのだ。
3.はその他の赤穂浪士の視点である。当時300人くらいいた赤穂藩士は浅野の切腹により、お家は断絶。今で言う強制リストラである。47人は吉良を討ちヒーローになった。残された250人はどうしたのであろうか。47人側に入っていれば結果的に死ぬのだが、英雄として死んでいけるし、残された家族、縁者などは忠義の士の恩恵を得たであろう。しかしながら、250人はメンバーにも入れなかったのであるから、元赤穂藩士だったというのは隠し通さないと生きていくのがつらかったであろうと想像できる。
 

こだわる人、こだわらない人

 こうした視点を代替療法に向けてみると面白い。多角的な視点から分析する人、細かなところまでこだわる人、多種多様である。先の赤穂浪士で例えると、多角的に捉えれば赤穂浪士が10人でも30人でも、「浅野の仇を赤穂浪士が取った」という話の本筋があって、それに付随する立ち位置によって物の見え方が変化する。という捉え方をしているだけのことである。もちろん細部にこだわれば、「赤垣徳利の別れ」など枝葉に話に広がっていくのである。どちらにしても、ここでのポイントは視点の違いである。大局的に見るのか、見ないのか、である。またアンドリュー・ワイルによる代替療法の分析によれば、代替療法はお互いに辻褄が合わないということであるので、Aという解釈で行われている行為、Bという解釈で行われている行為がそれぞれあるならば、Aの行為はBでは理解できないし、Bの行為はAで理解できないのである。そうした素地が代替療法には含まれるのが、代替療法の怪しさであり、面白さである。
 

祝!山本逸二氏の寄稿

 こうした怪しさ面白さは、代替療法の一つであるオステオパシー(以下、オステ)もまたしかり、サイモン・シンの代替療法解剖によれば、オステオパスの行う治療の方がカイロプラクティック(以下、カイロ)よりも穏やかで脊柱にはこだわっていない。したがって、治療によって怪我をさせる危険性はカイロよりも低い。オステの行う治療は、腰痛においては通常医療と同じくらい効果ある(つまり同じくらい効果がない)という科学的根拠があるということである。えらい言われようだが、彼もそれなりのメタ解析を経て結論を出しているから、その言には耳を傾けるべきであろう。科学を標榜しているオステにとって、言説に対抗していくには科学的な根拠を示していくしかないだろう。その一助となるべく、愛知県の山本逸二氏(以下、山本氏)が新たにジャーナルに寄稿すると聞いた。業界にとっては喜ばしい出来事であろう。読者も期待されたし。
 

面白さは一緒

 先の講談「赤垣徳利の別れ」は、討ち入りが決まった赤垣源蔵が実の兄を訪ねた際に酒徳利を持参する。兄は留守にしていて帰りを待つのだが、なかなか帰ってこない。討ち入りの刻限が近づく中、兄の羽織を前にして盃を二つ並べ持参した徳利から酒を注ぐ。羽織に向かって思い出話をとうとうと語り、一人で飲み、討ち入りに行く。帰宅した兄は源蔵が訪ねてきたことを家人から告げられるも、源蔵が新しい主君に仕えると聞いて驚く。翌朝、赤穂浪士が吉良を討ち取ったという知らせを聞き、源蔵がその中にいるに違いないと確信し、使いの者を送る。見物人が列をなす中、源蔵を見つけた使いの者は、兄に言づけはないかと問う。「最後にもう一度会いたかった」と。兄は事の子細を聞き、使いの者が受け取った吉良討ち入りの際に使用した呼び笛を鳴らさせ、その音を酒の肴にするという一席である。ジーンとくる良い話であるが、実は創作であり真っ赤な嘘だらけだ。ただ物語の面白さにとって、嘘であろうが本当であろうが変わりはないのである。
 

つながりを見つける楽しさ

 視点つながりで話は変わるが、2027年の大河ドラマは「小栗忠順」が主人公になるようである。幕末の物語も幕府側視点、薩長連合視点で見ると、どちらも正義でどちらも悪となる。大筋は幕府側の視点で描かれるようになると思うのだが、タイトルが「逆賊の幕臣」とあるので、どちらの視点でも楽しめるだろう。同じく幕臣の勝海舟とのライバル関係や有能なるがゆえに、自ら役職を辞めても幕府に呼び戻されるなど、相当面白い人物である。この「小栗忠順」は小栗上野介忠順という名前であり、奇しくも吉良上野介義央と同じ上野介である。吉良は討たれて死に、小栗は斬首される。どうも上野介は良い死に方をしないらしい。

 


山﨑 徹(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者
 
看護師、柔整師の資格を有する傍ら、カイロプラクティックとの出会いからシオカワでガンステッドを学び、21世紀間際にスタートした科学新聞社主催の「増田ゼミ」 で増田裕氏(D.C.,D.A.C.N.B.)と出会ったことから、以後、氏の追っかけを自任し 神経学、NAETを学ぶ。現在は専らオステオパシーを学び実践しているが、これまでに 身につけた幅広い知識と独特の切り口でファンも多く、カイロ-ジャーナル紙から引き続き連載をお願いしている。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。