徒手療法の世界に身を置いて
第37回「ミスをなくす努力を」

 年明けから、震災や航空機事故など大変な出来事が続き、「今年は一体どうなるんだろう」と心配になるスタートになってしまいましたが、この一年、また何卒よろしくお願いいたします。
 

人為的ミスを省みることができるか

 患者さんが良くならない、結果が出ない、という話をよく聞きます。それらの多くは、施術法が良くない、検査が不十分など、原因はいくつか考えられますが、そのほとんどは人為的ミスということになります。人為的ミスである以上、これらは改善できる要素を含んでいます。施術する側がそれを省みることができるかどうかが問題になります。
 

知っていれば治せるが、知らなければ治せない

 昨年から中川貴雄先生が科学新聞社のWebセミナーに登場されています。モーション・パルペーションから症例報告まで、実に幅広くお話しされておられますが、「key-Note」として上手に行うポイントを説明されています。このポイントを外すと施術が上手くいかなくなり施術にムラが出てきます。先生はその講義の中で「知っていれば治せるが、知らなければ治せない」ということを話されました。この言葉の意味するところは? 個人的に二つの意味を含んでいると考えています。一つは施術方法を知らなければ治せない、もう一つは患者さんの状態を的確に知らなければ治せない、この二つです。
 

トライ&エラー

 知っていれば治せると言っても、実際に行ってみないと結果はわかりません。患者さんの状態に変化が現れれば、その方法は上手く行えているし、変化が現れなければその方法を行う上で、何か間違いがあったのかもしれません。技術にしろ、知識にしろ、それを身につけ自分のものにしていくには、トライ&エラーの繰り返し、エラーの修正をしていくしか方法がありません。
 では、何が変わるのか?患者さんの症状なのか、検査所見なのか?患者さんの症状の変化を、自覚的所見で多角的に評価することは難しいし、検査としての信頼性もそれほど高くはないとしたら? そこで重要になってくるのが検査所見です。検査所見の中でも、患者さんおよび施術者の相互評価できるものが望ましいものとなります。可動域検査や筋力テストなどが望ましいものとなるでしょう。運動器の障害であれば、検査の陽性所見の減少に伴い患者さんの症状も軽減してくるでしょう。
 

人為的ミスをなくす努力を

 どれだけ気をつけていても、人為的ミスは人が何かをしている以上、減ることはあってもゼロになることはありません。もちろん10年以上施術をしてきて、一度も悪くしたことがないという先生もおられるでしょう。しかし、その後もそれが続くという保証はありません。だからこそ、臨床に携わる徒手療法家は常に知識を得、技術の研鑽をしていかなければなりません。そして、トライ&エラーを繰り返し修正していくことで、知識や技術が磨かれ初めて自分のものにしていくことができるのです。
 


辻本 善光(つじもと・よしみつ)

現在、辻本カイロプラクティックオフィス(和歌山市)で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

 


関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。