徒手療法の世界に身を置いて 第17回
何を触って、何を探すのか?

第12回のコラムで少し触診のお話しをさせていただきましたが、今回は実際に何を触って何を探すのか? 特に触診したときの硬さについてお伝えしたいと思います。

理学検査における触診で確認すること

 ①大きさ ②形 ③表面の形状 ④硬さ ⑤圧痛 ⑥乾燥/湿り気 ⑦温度などがあります。

 各部位において触診する内容は変わりますが、基本的には上記の7項目を確認できれば良いと思います。特に徒手療法では、④の硬さについて関節や筋の硬さなど触診におけるウエイトが大きくなりますが、硬さを診る上でいくつか注意が必要です。

関節が硬いとは?

よく関節が硬いと表現されますが、これは関節運動が硬い、つまり可動性が減少しているときに使われる表現ですが、触診における硬さの要因として、骨性、結合組織性、関節間性の3つがあり、それぞれ抵抗の質が異なります。このうち骨性のものは徒手療法に反応が悪く、改善する可能性が低くなります。簡単に言うと、癒合してしまっている関節がこれに当たります。その反対に結合組織性や関節間性の硬さは徒手療法に反応が良く、特に結合組織性のものは、モビリゼーションなど少ない力の施術法でもよく改善してくれます。詳細は可動域検査のところでお話ししますが、どういったエンドフィール(最終域感)かで何を施術するのかという目的がはっきりします。

筋が硬いとは?

筋を触診してやはり硬いと感じるときも、筋の状態に合わせて触診した際に感覚の違いが生じます。つまり求心性収縮のときの硬さと、遠心性収縮または伸張時の硬さです。

この2つには、はっきりとした違いがあり区別することが可能です。また、触覚としてわからなくとも他の検査と合わせることで予想できます。求心性収縮の硬さは中身がギュッと詰まったような硬さで、ある程度の弾力性があります。ゴムボールを押すような感じに近いでしょうか? また遠心性収縮や伸張時の硬さは比較的表面で跳ね返されるような硬さとして確認されます。ただし触った感覚は、触診している施術者がどう感じるのかということになるので、ご自身で体験されると良いでしょう。

この違いを感じることでも施術が変わってきます。求心性収縮は筋そのものを緩めたり、運動神経系の過剰な興奮を抑えることで施術できます。マッサージも適応となります。遠心性収縮や伸張時の硬さは、起始と停止を近づけなければなりません。そのため、筋を直接施術する前に関節操作が必要となるケースが多くなります。

このように、ただ硬いとわかっても施術効果として、よく出る患者さんとあまり出ない患者さん、また施術効果が長く続かない患者さんなどが出てきます。ご自身のテクニックスキルが悪いのではなく、適応が少しズレてるのかも知れません。今一度ご自身が使っているテクニックの特徴と、患者さんの状態をすり合わせてみてはいかがでしょうか?

このコラムが少しでも先生方の助けになれば幸いです。次回は可動域検査についてお話ししようと思います。


辻本 善光(つじもと・よしみつ)

現在、辻本カイロプラクティックオフィス(和歌山市)で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

 


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