「治療院成功への道」
第2回 患者さんの目線に立って、治療家の身だしなみを考える

公園で時間を潰すだけで職務質問を受ける対象

先日、5歳の末っ子を保育園に迎えに行くと、時間を勘違いしていたため30分ほど早く着いてしまいました。どうやって時間を潰そうかなと思いながら、ふとスマホを見るとメールやメッセージがかなり来ていたので、近くの公園の日陰のベンチを探して、返信しながらやりとりすることにしました。すると10分ほど経ったとき、誰かが私の目の前に立っていることに気づき、顔を上げました。

「すいません、少しお話しを聞かせていただいてよろしいでしょうか?」と警察官から職務質問を受けたのです。「えっ、なんで?」と一瞬とまどいましたが、ひと呼吸おいてから考えてみると、小さな子供たちや子育て世代のママたちが集う公園に、中年の男性が一人で座ってスマホをいじっている。それだけで周囲の方々が危険を感じるのは、無理もないことだと気がつきました。

世間では30代過ぎるとオッサンという分類に位置づけされる

私事で申し訳ありませんが、整骨院で毎日仕事をしていると、来院される患者さんから「先生」と呼ばれます。すると、自分がオッサンだということを忘れてしまうことがあります。

私も3人の子持ちです。なので、もし昼間に子供たちが遊んでいる公園のベンチに、中年男性が30分も一人で座っていたら、やはり警戒の対象にすると思います。つまり、世間一般の女性から見たら、中年の男性が同じエリアにいるだけで、警戒する対象だということになります。そんな中年男性が一人で開業する治療院に、女性の患者さんが来院されたとき、「安心してください」ということは無理なお願いなのかもしれません。

安心・安全な環境だから治療効果も高くなる

整骨院に来院される患者さんのデータを取ってみると、およそ7-8割が女性の患者さんで、さらにJ-net21で整骨院の潜在需要のデータを見ると、20−30代の女性が代替医療に興味を持っていることがわかります。

https://j-net21.smrj.go.jp/startup/research/service/cons-osteopath2.html

しかし、そんな女性の方々の立場に立って考えてみると、中年男性が一人でいる治療院に来院することを躊躇してしまうのは無理のないことだと思うのです。中年男性が一人で公園にいる、それだけで不審者の対象となってしまう。それが世間の認識です。なので体の不調を抱え、どこに治療に行けばいいのか迷っている方に向けて、整骨院や治療院はできるだけ情報を発信することが大切だと思っています。

先生の経歴や治療家になった経緯、治療院の沿革、そして誰が担当し、どんな施術をするのか? 患者さんの目線に立ち、わかりやすく言葉にすることが大切になると確信しています。

第一印象で嫌われたら一生選ばれない

人は見た目が9割とも言われます。ですからホームページや広告で、情報発信をする上で写真はとても大切なファクターになります。もし写真に写っている治療家が薄汚れた服を着ていたり、写りが悪かったりするだけで選ばれなくなります。つまり、髪型や服装といった身だしなみは清潔感が必要不可欠になります。

これは写真だけでなく、実際に患者さんが来院されたときにも、同じことが言えると思います。緊張して治療院に入ってきた女性の患者さんからすると、初めて会う先生が

・服にコーヒーやお茶のシミがついている

・服がシワだらけ、髪がボサボサ

・ヒゲが生えている

・体臭や口臭がきつい

・待合室や施術室が散らかっている

これのどれかに該当してしまうと、初診の患者さんがもう次に来院しようという気はなくなると思います。令和の時代に治療院を運営するなら、中年男性は身だしなみを気にしすぎるくらいがちょうど良いかと思います。

 男性のヒゲが好きという女性はいても、ヒゲがないと嫌だという女性はいない

ヒゲを剃るという話をすると、必ずと言っていいほど「あの有名な〇〇先生は、ヒゲを生やしている」という反論を受けます。でも、これは有名な〇〇先生だから成り立つのです。そもそも有名であるということは、それだけ世間で周知されています。さらに、初めて来院される患者さんも有名な先生の人となりを知って来院されます。

しかし、私のような有象無象の治療家のことは誰も知りません。ですから、初めて来院される患者さんから信頼を得るためには、第一印象で嫌われないようにする必要があります。

私が経営の勉強をさせていただいているところで、『「男性はヒゲが生えていないとダメ」という女性は少数、「ヒゲを生やした男性はダメ」という女性の方が多数、どんな業種であれ、接客しないといけない仕事なら多数に受ける方を取れ』と教えられました。

「本当かな?」と思って女性患者さんに聞いて回ったところ、ヒゲがないとダメという女性はゼロ、ヒゲ面が嫌という女性が圧倒的で約75%、つまり4人に3人はヒゲを良しとはしていないのです。やはり安定して患者さんが来院するまでは、ヒゲは剃っておく必要があります。

開業したら気楽に仕事ができると思っていた

10年前に開業したとき、ようやくこれでオフィスでの決まりごとや、院長、オーナーの目を気にせず、自分の好きなように整骨院をやりくりできると思っていました。修業時代に勤めていた整骨院は

・靴下は白

・下着は白衣から透けるため派手なものはダメ

・ヒゲは禁止

・茶髪は禁止

・白髪が多い先生は黒染めを強制

・仕事の前日は口臭や体臭がする食べ物は禁止

・白衣は毎日洗う

というルールがありました。当時は何もそこまでしなくても…と考えることもありました。でも開業してわかりました。施術も経営も、細かなところまで意識を向けることが大切だということが。独立開業すれば、もう誰も叱ってくれる人はいなくなります。そして評価は他人がするものです。

施術においては、患者さんのわずかな不調を検査や問診、触診で見つけ出せるから、患者さんのお悩みを改善できます。先生の身だしなみも検査や触診、テクニックと同様に細かなところまで気を配ることによって、患者さんを慮ることができるのではないでしょうか。

これからの時代、患者さんが安心して施術を受ける環境をつくるために、先生の身だしなみはやはり気を配る必要があると考えています。


作尾 大介(さくお だいすけ)

こころ鍼灸整骨院 院長
治療院成功塾 主宰
・柔道整復師
(一社)微弱電流療法研究会 代表理事
空手の指導者をしていたときに、ケガで修業を断念する道場生たちを目の当たりにし、治療家の道を志す。整骨院での下積みと勉強の日々が続く中でも稽古は欠かさず、大会で優勝を飾る。選手引退後、2013年に外傷以外保険診療を一切使わない整骨院を開業するも、施術単価が安い同業者が立ち並ぶ中、自費診療は受け入れられない状況が続き、もう廃業かと追い詰められたときに、もっと経営の勉強をしなければと寝る間を惜しんで経営の勉強に取り組む。その後、業績は V 字回復を果たす。
全く経営理念の違う古株の治療家から嫌がらせを受けたこともあったが、「保険診療に頼らない院の経営方法を教えてほしい」という同業者からの声を受け、自費診療での安定した院の経営方法を教える塾を主宰。2020年、新型コロナウイルス感染拡大によって廃業する院も出る中、塾生たちは全員売り上げを伸ばし、中には緊急事態宣言中に開業し、月100万円を超える収益を叩き出した人もいた。
現在も、自費診療で質の高い経営を継続させる方法を伝える傍ら、MPSGに所属しカイロプラクティックの勉強に励んでいる。

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