代替療法の世界 第26回「風林火山」

機を見るに敏

「風林火山」、歴史、時代物にご興味ない方でも一度は見聞きしたことのある言葉であろう。戦国大名の中で一、二の強さを誇った武田信玄率いる軍団が、旗指し物に掲げ戦っていた沈着冷静、勇猛果敢さを象徴する言葉である。

出典は孫氏の兵法である。全部は紹介しないが、「風」の意味を紹介しよう。故其疾如風(故に其の疾きこと風の如く)である。これは情報戦のことを指している。孫氏の兵法は戦争における戦術を記したものだ。だがビジネスにも十分応用できる。孫氏の兵法の成立年代は紀元前500年とされている。

イエス・キリストが生まれる前の大昔から情報の重要性は説かれていたのである。現代では特に情報の取捨選択があらゆるシーンで重要になる。だからビジネスシーンでも孫氏の兵法は重用されている。例えば、アップルのスティーブン・ジョブスも愛読していたように。

 

合法的なロンダリング!?

コロナ禍では一般大学の対面授業もままならない。地元紙によれば、名古屋の私立大学の半期の授業料は75万円だそうだ。対面授業もなく短期留学もコロナのせいで絶たれたと報じられていた。

例えば放送大学は、もともと通信制だからコロナ禍だからといって、特別に授業形態を変えているわけではない。ただし、コロナの影響で対面授業が縮小されたりしているが。学費も単純計算が成り立つ。1単位5,500円で卒業までの取得単位要件が124単位である。

うち面接授業が20単位であるから、もともとの対面授業が少ないのである。試験は6日間あり、1日の受験科目数は8科目だから、半期で最高96単位が取得できる計算だ。1年間を前期と後期に分けてそれぞれで単位認定試験に合格すると単位がもらえるのだが、コロナの影響で自宅で受験ができるようになっている。

2週間という期限つきではあるが、時間無制限の教科書、参考書ともに参照可能の試験である。当然、高得点が狙える。80点以上ならA評価。90点以上なら丸Aがつく。マネーロンダリングならぬ学歴ロンダリングができる。

丸Aを取ればGPAスコアに換算すると4を取る計算になる。平均的に限りなく4に近い数値を取れるようになるのだ。欧米の教育制度に明るい人や特に米国に留学を考えている人はこの数値の破壊力は十二分に理解できるだろう。

 

Zoomの使い方の妙が際立つ

ケリー・ダンブロジオ氏(以下、ケリー)がサピエンシス・ボディケア(代表・佐藤海人)主催で、11月14~16&21~23日という6日間の長丁場でウェビナーを行った。1日4時間、合計24時間という質の高い、内容の濃いセミナーになった。

まずケリーが説明とデモを見せ、ブレイクアウト・ルームという小部屋を作り、次に生徒6、7人でTA(ティーチング・アシスタント)とともに小部屋に入り、質疑応答を行って理解の習熟度を深めていく。

最後は生徒2人で小部屋に入る。その中で生徒同士がお互いに治療を行った。1対1の小部屋にケリーやTAが自由に行き来できるようになっていて、受講生の進捗状況も確認できた。

こうした教育システムを作り上げる巧みさがケリーのケリーたる所以である。コロナ禍に見舞われてからZoomを使い出したと聞いたが、わずか数か月でZoomの機能を十分に使いこなしている様を見せつけられると、「さすがはケリー」と言わざるを得ない。日本人ではないけど守破離のやり方をよく知っている。

段階を追って生徒の質を上げていく手法は素晴らしいものがある。手から手へ伝えていく作業は大事なものだと思うが、コロナ禍では臨機応変に手法も変化させなくてはならない。従来のやり方に拘泥していては何も事態は進展しないのだ。

もっとも今回のウェビナーは、われわれが対面で受講したときはTBEn(トータルボディ・エナジティックス)だったが、現在はEB(エナジェティクス・バランシング)と変わっていて、Zoomを使ったやり方がドンピシャだったのであるが。

 

EBのポイントとは?

さて、ケリーのエナジティックスであるが、科学新聞社主催で行ったときと比べてアップデートしている。例えば治療の前提条件になるグラウンディングとカリブレーションである。

グラウンディングとは、地球とのつながりのことであり、自分と重力とのバランスを取ることと解釈しても差支えがないであろう。カリブレーションとは、イエス、ノーの設定をするということであり、これができていないと質問に対しての答えが正確に出なくなるのだ。

この設定ができていないと治療どころの話ではなくなる。そしてケリー・メソッドといえば最後に評価は欠かせない。エナジティックスの治療は、ともすれば患者にとっては何をされたかわからないことが多い。だから評価をしっかり行い、治療前と治療後の変化の違いを実感してもらう必要がある。

ケリー・メソッドの評価のポイントは自律神経と関連させたものである。上から後頭骨、肩の高さ、肩甲骨下角の高さ、腸骨稜の高さ、仙骨基底部の深さなどである。後頭骨と仙骨に差があれば副交感神経の影響を考慮できるし、その他の部位であれば交感神経の影響である。あとは可動域検査であるが、これは患者自身に施術者が誘導して行う。これは一般的な可動域検査なので割愛する。受講生は実感していると思うが、ケリーのエネルギー・テクニックは効果がある。

 

EBの治療原理とは?

では、効果があるEBの治療原理とは何であろうか? 治療原理の根幹を成すのは、量子力学である。

まずはニュートン力学から

第1法則:均一な運動(静止)状態にある物体は外力の影響を受けない限り、その運動状態(静止)のままになる

第2法則:物体の加速度は、物体に作用する正味の力と質量に依存する。正味の力は質量と加速度の積に等しくなる

第3法則:すべての行動に対して等しく反作用がある(力のペアの相互作用)

このニュートンの法則、平たく言うと、第1法則は物体を動かさない限り、その場に居続ける。第2法則は軽い物体は軽い力で動くが、重い物体は大きい力を加えないと動かない。第3法則は物体を動かすときに、必ず動かした分の力が自分にも入っている、ということである。

一般相対性理論は上記のニュートンの法則に基づいており、われわれが感じる世界全体が第1から第3法則の部分の合計によって、この物理的な世界に適用されているのだ。これは長らくわれわれの習慣の中に根づいていることであり、量子力学の世界観を理解する足かせになってきた。

宇宙を支配する2つの法則がある。これは量子力学を理解する上で重要になるポイントである。1つは量子重ね合わせの原理であり、これは複数の共存状態の性質を示し、量子があるときは波、あるときは粒として存在することをいう。2つ目は量子もつれの原理であり、量子粒子のペア(グループ)は、空間と時間にわたって接続され、互いに協調して機能することをいう。

 

アインシュタインの考えを否定したジョン・ベル

量子もつれに関してアインシュタインは、こうした現象を「離れた場所での不気味な行動」と呼び、粒子が長距離にわたって他の粒子と瞬時に通信することは不可能であると主張した。その理由として、量子もつれが起こるには光速よりも速い通信速度が必要であり、これは物体がそのすぐ近くの環境によってのみ影響を受けるという局所性の原則(ニュートン力学)と矛盾するからである。

しかし1960年代、素粒子物理学者のジョン・ベルは、このパラドックスを解決した。彼の発見は、量子もつれは自然界に存在し、また量子力学によって予測された結果は、局所性を保存した理論(いわゆるニュートン力学)では説明できないことを示した。

 

もつれがポイント

この粒子が物理的に相互作用するという量子もつれのポイントは、

  1. 永続的に相関し、独立して行動する能力を効果的に失うことができる
  2. それらの状態と性質は相互作用するようになるため、遠く離れていても、一方に対して実行された行動が他方に影響を与える
  3. コミュニケーションは即時であり、仲介者を必要としない

以上を踏まえると、EBの治療原理は非局所性理論と量子もつれにより、仲介者なしで長距離にわたって患者に同調(評価と治療)することができるのである。物質とエネルギーは、条件に応じて波と粒子の両方として存在する可能性がある。

これは観察の行為により、これらの波動関数は、物理的なものから粒子の形に崩壊することを示しており、粒子の形に崩壊すると、先ほどまでは物理的な体(人間の生物学的物質)であった物は潜在的な形として現れる。

ケリーのエネルギー治療の原理はこうした物理法則を基に成り立っている。量子もつれのポイント2によれば、ケリーの住んでいるフロリダと日本の距離を考えてみても、EBの治療(遠隔治療)のユニークさが理解できるだろう。

 

こんなときだからこそ、岡井DCと孫氏の兵法のコラボで!!

岡井DCの「ピンチはチャンス」が沁みてくる。コロナ禍は確かにピンチである。一方で放送大学を利用した方法やケリーのZoomを用いたウェビナーはピンチをチャンスに変える方法である。現在の取り巻く環境は変わらない。だとしたらその環境の中で適応しなければならない。で、どうするか? 岡井DCが何度も言う「ピンチはチャンス」がそのヒントになる。

現状をみると、2020年度の大学卒業者就職内定率は約70%である。これは卒業しても30%の人たちが無職であるということだ。コロナ禍はこういうところにも影響を及ぼしている。であるならば、さっさと見切りをつけて、方針を転換するのも1つの方法であろう。

先の名古屋の学生の例を出すと、1年間の授業料は150万かかる、今1年生だから残りの3年間の授業料は450万円。例えば、放送大学に入学し直すと入学金と授業料で70万弱である。それを差し引いても380万円は残る計算になる。留学資金に充てれば十分とは言えないまでも、助けにはなるだろう。自己最高のGPAで入学できれば、その後の展開は容易に想像できるはずだ。

留学してカイロプラクティックのような専門職大学で学ぶも良し、また興味のある分野を大学・大学院で学ぶのも良し。感染症の歴史を振り返ってもコロナ禍は必ず収束するだろう。そのときまで林のごとく静かに、火のように激しく知識を蓄え、山のようにどっしりと構えて収束を待てば良い。風林火山の妙はここにあり。ただし留学には英語という大きな山があるのだが。


山﨑 徹(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者
 
看護師、柔整師の資格を有する傍ら、カイロプラクティックとの出会いからシオカワでガンステッドを学び、21世紀間際にスタートした科学新聞社主催の「増田ゼミ」 で増田裕氏(D.C.,D.A.C.N.B.)と出会ったことから、以後、氏の追っかけを自任し 神経学、NAETを学ぶ。現在は専らオステオパシーを学び実践しているが、これまでに 身につけた幅広い知識と独特の切り口でファンも多く、カイロ-ジャーナル紙から引き続き連載をお願いしている。

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