代替療法の世界 第48回
「終わりの始まり」

金の切れ目が縁の切れ目

 本ジャーナルにて、木村功氏の「イネイト・インテリジェンスとは何か? 本論休題」において業界の事情を紹介している。業界の抱える構造的な問題をよく調査されていると感じる。私がオステオパシーの業界に関わり始めて15年が経つが、最近では国際セミナーの興行が厳しい状況と聞く。これには様々な要因があろうが、コロナ禍により患者が減少し治療家の収入が減ったこと、世界的なインフレによるセミナー講師への支払いが上がったこと、などが原因として考えられる。この二つに共通するのは金銭である。「金の切れ目が縁の切れ目」と言うが、経済的な問題は構造そのものを変える。昔アクティベーターのセミナーで、受講生の資格の有無によって受講制限がかけられたことがあった。初めは日本カイロプラクターズ協会(JAC)の会員およびRMIT在学生のみに受講が認められた。ほどなくして医療系国家資格保持者が解禁になり、続けてカイロ学校卒業生も受講が認められた。これらの流れは受講生が確保できなかったために解禁された結果である。セミナーをするにはお金がかかる。会場の手配、講師料、教えることに対しての権利代等々。それらを賄うには最少遂行人数を確保しなければセミナーが維持できないのだ。理想論をいくら語ろうが、金がなければ何もできないのである。
 

相次ぐ学校事業からの撤退

 こうした流れはカイロに限らず、オステでも同じである。全日本オステオパシー協会は学校を閉めたし、日本トラデショナル・オステオパシー・カレッジ(JTOC)も新規の生徒の募集はしていないと聞いた。オステを学ぼうという人数は減少の一途を辿っている。例えば、ピーク時の鍼灸等の合格者数と、最近の合格者数を比較すると面白いことがわかる。下記に示すが、人数に関して端数などの細かい数字は省いているので、約○○人と読み替えてご覧いただきたい。

●鍼灸師 4,500人⇒ 3,000人
●あん摩マッサージ指圧(あマ指)師 2,000人⇒ 1,000人
●柔道整復(柔整)師 5,000人⇒ 2,000人
●理学療法士(PT) 7,000人⇒ 6,000人
●作業療法士(OT) 1,300人⇒ 1,100人

 鍼灸30%、あマ指50%、柔整40%の減少率という風に、独立開業権を持つ資格保持者が、ピーク時の半分強しかいないのである。PT、OTともに約8%の減少率である。国家資格を取得後も継続して、オステに限らず代替療法に興味がある御仁は少ないのが現実だ。今までは免許取得者が多かったので、ある程度の人数が代替療法に参入していた。しかしながら免許を取る人数が減って、オステを含め代替療法を学ぼうとする人も減った。単純な図式である。この流れは変わることはないであろう。また、これから学ぼうという若者は勤務している場合が多いと思う。したがって、学びに費やせる可処分所得は少ないと推測する。無理してセミナーに出られなくはないだろうが、借金をして出るほどの価値はあるのだろうか。
 

社会インフラの破綻?

 これらの免許資格者の減少は何を意味するのだろうか。単純に需要と供給のバランスで考えると、これらの資格を取ったところで食えないから、他の職業を選んでいるとも言えるだろう。木村氏の「第29回 本論休題2-1」を参照すれば、PTの平均給与はその他の職域の人々と比べても低い。30年くらい前に私が准看護師として病院に勤めていた頃は、看護師よりPTの給料は高かった。今は逆転して看護師の方が高い。PTを年間1万人も供給していれば、給料が下がるのは必然だろう。医療システムに組み込まれた資格保持者は、国家予算から供出される医療費で生計を立てている。それは公共事業のインフラの一部なのである。そして医療費は増加の一途を辿っているのだが、病院経営の7割が赤字である。保険制度において、診療報酬を1%上げるには5000億円必要である。仮に医療従事者の給料を5%上げるには2.5兆円かかる計算だ。今のままの体制を維持していくには、自己負担割合を増やすか、国家予算の配分を多くするか、の二者択一である。増田DCが過去にジャーナルで、自己負担率が5割を超えてくると、代替療法、もといカイロプラクティックなどの自費治療が脚光を浴びるだろう、と予言していたことを思い出す。
 

どうなる、裁判の行方?

 そのような現状を見て、自由診療に活路を見出す者はいるのだろうか? KINMAQ整体院山形南院に対して、工藤はりきゅうマッサージ治療院が提訴した。問題としたのは、医師の指示なしでのPTの治療が適正かどうか、というのも一つの争点であった。山形地裁の一審ではPT側が負けて、仙台高裁では双方痛み分け、現在は最高裁で審議中である。が時間の進行とともに確定判決はいつか出る。そのとき、指示なし理学療法は違法であると判示されればどうなるか? PTと名乗り、治療院の開業が難しくなるということになる。そうなれば将来独立して仕事をしたい人は、柔整、鍼灸、あマ指の資格取得を目指した方が無難な選択になる。逆説的に言えば、今までは賢い子たちが業界に入ってきていたから、将来性に価値を見出し、独立開業を目指して、高額の国際セミナーを投資と思って参加してきたのだろう。がしかし、残念ながらそういう具合に考えてくれる子たちはいなくなった。1周回って業界に見切りをつけたのだろう。だからセミナー運営は厳しさを増してきた。近い将来、終焉を迎える可能性が高い。現状は業界の「終わりの始まり」であるから、市場が需要と供給のバランスによって新しい形を模索することになる。業界は自然淘汰されることによって、落ち着くべきところに落ち着くことになるのは必然の流れである。「自然淘汰」、ダーウィンの言葉は真理をついている。
 


山﨑 徹(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者
 
看護師、柔整師の資格を有する傍ら、カイロプラクティックとの出会いからシオカワでガンステッドを学び、21世紀間際にスタートした科学新聞社主催の「増田ゼミ」 で増田裕氏(D.C.,D.A.C.N.B.)と出会ったことから、以後、氏の追っかけを自任し 神経学、NAETを学ぶ。現在は専らオステオパシーを学び実践しているが、これまでに 身につけた幅広い知識と独特の切り口でファンも多く、カイロ-ジャーナル紙から引き続き連載をお願いしている。

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