徒手療法の世界に身を置いて 第1回
正確な検査の重要性、必要性を求めて – Vol.1

連載させていただくことにあたりまして

和歌山で辻本カイロプラクティックオフィスを開設している辻本です。このたび、本当にひょんなことから、このような機会を与えていただき、連載を始めさせていただくことになりました。どうぞ、よろしくお願いいたします。

私は高校卒業後、友人の誘いもあって三燈会医療学園 日本物療医学専門学院に入学しました。ここでは物理療法の理論や実技だけでなく、様々な徒手療法の理論や実技を学びました。卒業時期に、カイロプラクティックの理論と代表的なテクニックの講義があり、卒業後に同じ三燈会医療学園が併設していました国際カイロプラクティック専門学院の2年生に編入しました。当時はどちらの学科も2年制でしたので、トータル3年間、カイロプラクティックを主とした徒手療法を学びました。

国際カイロプラクティック専門学院卒業後は、就職も考えていましたが、ちょうどその頃、2つの学科が合併され3年制の設立が決まったこともあり、「教員として働かないか?」と誘いを受けて1年間の教員課程を経て、教壇に立ちました。もう四半世紀以上前の話です。教員として活動している20年以上の間に、たくさんのD.C.の先生方とお会いし、お話を聞かせていただく機会をいただきましたが、一番は何といってもクレイハンズ先生との出会いでした。

日本でもカイロプラクティックの国際基準化がスタートし始めた当時、RMIT日本校立ち上げに携わったクレインハンズ先生が、国際カイロと教育提携を結んでいたクリーブランド カイロプラクティック カレッジ ロスアンゼルス校とCSCコースを国際カイロで開講してくれたのです。このとき改めて「ひとを診る」とはどういうことなのかを再確認させられました。今でも時折CSCコースの資料を読み返すことがあります。

たった1つの疑問から

カイロプラクティックに限らず、この業界には様々な療法があります。カイロプラクティックにおいても例外ではなく、その数は50以上にも上ります。そんな中で沸き上がったたった1つの疑問。「同じ患者さんを異なった手法を用いるカイロプラクターが診たとき、問題点は同じになるのか?」ということでした。施術するところが違っても問題はないと思います。それはそのテクニックやカイロプラクターの考えですし、それぞれのテクニックで良くなっている患者さんがいるのも事実です。

教壇に立っていた頃、学生やCSCコースの受講生そして卒業生から「患者さんが良くならないんです。検査して施術しているんですが。どこが悪いんですかね?」。そんな質問をよく受けていました。話を聞いてみると、それぞれのテクニックの検査で施術ポイントを決めていたり、理学検査をしていても、ただやっただけで所見の考察に間違いがあったりがほとんどでした。

もう少し言わせてもらうと、自分の持っているテクニックをするための検査をしているだけで、「ひとを診る」ことをしていなかったのです。セミナーなどで良いテクニックを勉強しても、問題点にアプローチできていなければ宝の持ち腐れになります。

検査にもテクニックにも基礎がある

初めの勉強会は愛媛でした。ちょうどCSCコースを修了された先生方から「もう少しテクニックの勉強がしたい」という要望があり、卒後教育の一環としてスタートしましたが、やってみると「このテックニックができないのは〇〇が足らないからだな」と気づきをもらいました。そして足らない〇〇を補うために次の勉強会を始めると「あれ、△△の理解がもう少しかな?」と次は△△を補うための勉強会の開催。そんなこんなで愛媛の先生方とは10年を越えるお付き合いになりました。そのうちに愛媛以外の地域でも勉強会の開催が決まり、たくさんの先生方とお話ししている中で、一番足らないと思ったのが「検査」でした。検査所見は「ひとを診る」ということにおいて最終評価であり、テクニックを行うスタートにもなります。ここでの所見の評価で問題点が決まり、それによってテクニックを行う部位も決まってきます。

まずはここからだ! わからないことが、わかるようになるのも大切ですが、「わからないことが、わからない」ということに気づいてもらう方がよっぽど有意義だと感じ、現在も「検査」の勉強会を開催させていただき、2020年にはカイロジャーナルでのWebセミナーでもお世話になっています。この連載を通じて、少しでも検査への理解や重要性をお伝えできればと思っています。


辻本 善光(つじもと・よしみつ)

現在、辻本カイロプラクティックオフィス(和歌山市)で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

 


関連記事

コメント

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。