徒手療法の世界に身を置いて 第50回
「脊柱の連結」
脊柱は小さな椎骨の連結構造になっています。これらの連結には、靭帯や関節包などの結合組織と、運動に関する筋がその構造および機能に関係しています。
椎間関節
椎間関節は上位椎の下関節突起と、下位椎の上関節突起から構成される滑膜関節です。構造的には平面関節で、その軸性は多軸関節に分類できます。関節包を持ち、その中には滑液が存在します。通常、脊椎の関節操作時においてクラック音が生じるのは、関節が開いた際にこの内圧が下がるため、滑液中の空気成分が気化することで発生すると考えられています。
椎体間関節
椎体間関節は上下椎の椎体の間にある椎間板による連結です。実際、椎体に強固に付着しているのは椎体周縁部のみで、それ以外は、椎体上面および下面にある小孔より椎間板との間で物質輸送が行われています。椎間板における物質輸送も、椎間関節と同様に圧力の変化により行われています。午前中に身長が高く午後に低くなるのは、重力負荷によって椎間板内の物質が骨側に吸収されるためです。
椎骨の運動を考える
脊柱の運動は椎間関節と椎体間関節の調和によって成り立っています。例えばモーション・パルペーションにおける棘突起接触のものは、棘突起が椎体の正中後方に存在しているため(中部胸椎では下方にも伸びる)、その力は椎体そのものに掛かりやすい傾向にあります。これに対し横突起接触のものは、左右に伸びるため椎間関節にその力が掛かりやすくなります。また生体力学的面からも、屈曲-伸展および側屈時には髄核の移動が起こりますが、回旋運動では髄核の移動はほとんど起こりません。したがって脊椎運動の回旋は、椎間関節が主たる役割を持ち、屈曲-伸展および側屈は椎体間関節が主たる役割を持つことになります。
テクニックの選択
椎体運動に関わる組織が運動により変わるため、用いるテクニックも選んでいかなければなりません。カイロプラクティックにおいては、ガンステッド・テクニックとディバーシファイド・テクニックが良い例でしょう。ガンステッド・テクニックにおいて、椎間板理論というものがあります。これを見る限りでも、ガンステッドが指標にしているものが椎間関節ではなく、椎間板関節ということになります。そのためガンステッド・テクニックを行う際は、X線分析を行い椎間板の方向を確認する必要が出てきます。またディバーシファイド・テクニックで用いられるリスティングは、LPSとかRPIのように左後方や右後方のように、回旋主体で使用されます。また、そのテクニックの多くは横突起接触のものがほとんどのため、ディバーシファイド・テクニックは椎間関節を狙ったテクニックということになります。
このようにモーション・パルペーションにおいてもテクニックにおいても、得意不得意があるのを認識する必要があり、自分が使いやすいからといってテクニックを選択しない方が賢明な方法と言えるでしょう。またこれらを知っていれば、同じリスティングでも棘突起コンタクトの方が良いのか、横突起コンタクトの方が良いのかが選択できるのではないでしょうか?
次回は、椎体間関節と椎間関節の鑑別検査について少しお話しさせていただこうと思っています。
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辻本 善光(つじもと・よしみつ)

東大阪市にあったインターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、旧・国際カイロ)に22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
(一社)日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)の学術大会ではワークショップの講師を、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)の設立当初には試験作成委員を務める。ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを全国各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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