徒手療法の世界に身を置いて
第38回「運動学習~基礎運動学より」
「勉強会やセミナーではできていたのに、いざ患者さんを前にすると、できていたはずのことが上手く使えない」。多くの先生方が経験していることだと思います。
運動技能(施術法)の訓練/練習は?
運動技能を習得するには順番があり、基礎運動学においては「1.良いフォーム 2.正確さ 3.速さ の順で指導していくのが望ましい」とされています。これはそれ以外の技能を習得することにも通じることで、この順番でやっていくことが近道となります。
ぎこちないフォームやスムーズな流れのないフォームでは、正確さや速さが身につきません。また、身についたと思っていてもすぐにできなくなってしまい、ムラのある技術になってしまいます。
良いフォームを身につけるためには、施術を行う徒手療法家の立ち位置やスタンスから始まるため、患者さんに対してどこに立つのか、また、どのような姿勢で立つのか、が非常に重要なポイントになります。
一連の動作を流れで練習する
施術法の中には、いくつかのパーツ/手順に分けられるもの、分けられないものがあります。理想的な練習は、それぞれの手順を良く理解し、目的を持って一連の動作として練習するのが望ましいですが、そのやり方にもデメリットは存在します。このやり方だと、各手順を一連の動作で行うため、どこを間違えているのかわかりにくいということです。
経験上、一連の動作での練習と各手順の練習は並行して行った方が良いと思います。フィニッシュのフォームがいくら綺麗でも、無理矢理つくられたフォームは、正確さや速さが伴わないことが多くなります。
内在的フィードバックと外在的フィードバック
内在的フィードバックとは、練習する側の感覚が重要となります。上手くいったときの感覚と、そうでないときの感覚の相違を感じることが重要です。
外在的フィードバックとは、指導者からの助けです。外在的フィードバックは内在的フィードバックを賦活させます。だからこそ効率良く訓練/練習することができるのです。
これが勉強会やセミナー中にはできても、患者さんを前にしたときに上手くできない要因の一つとなります。これらをなくしていくためには、勉強会やセミナー中に修正された場合、どこを直されたのかよりも修正されたときの感覚に集中することです。例えば、「もう少し牽引を加えた方が良い」と修正されたとします。そしたら「牽引が足らなかった」と考えるよりも、適度な牽引を加えたときの手の感覚を忘れないようにすることです。
一人で練習するには限界がある
内在的フィードバックに頼りすぎると、フィードバック情報が間違えている場合、正確さが低下してきます。そのためには、定期的に外在的フィードバックを取り入れる必要があります。要は第三者からの確認作業を怠らないようにすることです。
先にも述べさせていただいたように、第三者からの外在的フィードバックは自身の内在的フィードバックを賦活し、間違ったフィードバック情報を修正してくれます。そのために何度でも第三者からのフィードバックを積極的に求めていくことです。
そして、そのフィードバックをやらされていると感じるのではなく、自身の目的としなければなりません。やらされている訓練/練習は、まず身につくことがないからです。
辻本 善光(つじもと・よしみつ)
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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