雑誌モデルの急死 頚椎アジャストのせい?
米カイロプラクティック業界、偏見に負けず
科学的根拠ある前向きな姿勢
カイロジャーナル89号 (2017.6.19発行)より
ツイッターにカイロプラクティック・アジャストを受けたことを書き、その後に意識不明になったことで、原因がカイロの首のアジャストであると断定するメディアが続出した。日本の週刊誌でも、10月になってその報道が二次的に報じられた。10月にメディアに流れた検死報告書には、カイロプラクティックとの因果関係があるとはされておらず、事故であったと書かれていたにも関わらず、カイロプラクティック・アジャストが原因で死亡という見出しの記事が散見された。
冷静なカイロプラクティック業界
この状況に米カイロプラクティック界はどのように対応したのだろうか。米国カイロ協会(ACA)は、検死報告書がメディアにわたった早い段階で「ケイティ・メイに関するメディアからの質問への回答書」を発表した。ACAは、状況の詳細が不明なのでこのケースに特定的なコメントはしないとし、医学的知見とカイロプラクティック業界の取り組みに絞って発表した。首のマニピュレーションと脳卒中との間に因果関係は認められていないこと、カイロプラクターは脳卒中の前兆症状をチェックするように教育されており、卒後教育でも継続して科学研究の知識を学んでいること、カイロプラクターは患者の全身状態を把握してから治療を行うように教育されていることなどが簡潔に書かれていた。しかし、メディアのセンセーショナルな記事に対向するには十分ではなく、さらなる対策が望まれた。
TV出演で事実説明
11月16日、テレビの人気番組である「Drオズ・ショー」にカイロプラクターが招待され、説明する機会がやってきた。この番組の司会のDrオズは心臓外科医で、様々な専門分野のゲストが招かれ医学的な議論をする。過去にも出演経験のあるスティーブン・ショシャニーDC(以下DrS)と、ニューヨークの神経血管外科医のブロキングトン医師(以下DrB)が招かれた。
当日、DrSは単刀直入に「メイさんの死の原因が頸椎マニピュレーションなのか」という問題を取り上げ、Bow-Hunter’s Stroke(弓を射るときのように頸部を旋回した姿勢をとることで、椎骨動脈にストレスがかかって損傷し、血栓が生じて脳卒中が引き起こされる)の可能性を説明した。カイロプラクティック・アジャストを受ける前に、撮影で無理な姿勢を保持し、痛みが生じていたからである。
DrBは、専門医として自分は毎日脳卒中の患者を診ており、原因が明らかな脳卒中もあるが、多くの脳卒中では原因が特定できないと説明した。最近では、ペンキを塗っているときに動脈損傷した男性を診ており、このような症状は、30~50歳で過去に病歴のない健康な人に起こることもあると語った。多くの場合、血管損傷で脳卒中は起きないが、中年の頸椎に起こった場合には、20%の確率で脳卒中につながると話した。
DrSは、自分は20数年間で20万回以上頸椎アジャストを行っているが、一度も脳卒中の症例に出会っていないこと、大規模大学であるライフ大学では、450万回以上の頸椎アジャストが行われてきたが、脳卒中の症例はなかった事実を述べた。
「Drオズ・ショー」の当日のタイトルは「カイロプラクターはあなたを殺す可能性があるか」という扇動的なものだったが、内容は科学的事実とカイロプラクティック側の見解を広く知ってもらう機会となった。
偏見には理論で
長いカイロプラクティックの歴史がある米国だが、カイロプラクティックへの執拗な攻撃は確かに存在し、メディアの追随も珍しいことではない。未だに米国ウィキペディアのケイティ・メイの項には、「検死報告書はカイロプラクティック・アジャストの結果による脳卒中であることを確認し、検死官はそれを事故と判定した」などと事実を混乱させる記述が残っている。
そんな中でもほとんどのカイロプラクターは冷静で、最新の科学研究を理解し、患者に理論的で親切な説明をしようと心がけている。カイロプラクティックに対する情熱と信念で、偏見を打破していく米国カイロプラクターの前向きの姿勢から学べることは多いのではないだろうか。
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