カイロプラクターかく語りき 第6回
グレー・ゾーン

大事なのは仕事の出来
日本独自の基準でいいのでは?

カイロジャーナル90号(2017.10.22発行)より

 

何かを説明しようとするとき座標軸を用いると非常にわかりやすい。カイロプラクティックもまた然り。ということで日本におけるカイロプラクターは以下の4つに分類できる。

  1. ①WHO基準を満たす教育を修了し、仕事のできる者
  2. ②WHO基準を満たす教育を修了せず、仕事のできる者
  3. ③WHO基準を満たす教育を修了せず、仕事のできない者
  4. ④WHO基準を満たす教育を修了し、仕事のできない者

仕事と教育によるカイロプラクター4分類

 

横軸をWHO基準教育修了の有無、縦軸を仕事のできる・できないとしたとき、座標のどこかに必ず当てはまることになる。①に当てはまるのが理想であるし、その中でも上部に置かれるのが最も理想的といえよう。逆に④の下部は最悪である。

この分類を踏まえて、カイロプラクターの多くはどこに分類されているだろうか。教育機関の数から単純に推測すれば②と③が多くを占めると考えられる。しかしながら、②と③に該当する人の5年生存率が低い、つまり卒業後5年以内に業界を離れる者が少なくないと聞く。そうなると③はともかく②は思った以上に少ないものと想像できる。③が年を重ねるごとに淘汰されていく一方、②に関して言えば業界での生存年数と上位の率は比例するのかもしれない。上手い人が生き残る。当然であろう。

前回、「測るモノサシが違う」と書いた。この座標で言えばWHO基準を満たした者はその修了の有無、つまり横軸を最重要視する。しかしながら、社会で最重要視されるのは縦軸、仕事の出来不出来なのである。そう、世間一般からすれば上部に位置してくれれば①でも②でも大した問題ではないのだ。それでも仮に横軸となるWHO基準の有無で推し量ると①と④が良しとされ、②はたとえ上位であっても切り捨てられることになる。これはちょっとオカシイのではないか。

そもそも②と③がほとんど全てだったところに突然①と④が設定され、自分たちが優位だと言わんばかりにデカい顔をされる。あえて語弊のある表現を用いているが、②と③からすればそんな心情の人もいることだろう。基準さえ満たしていれば自分よりヘタクソであっても認められる。これではさすがに納得はできない。

それでも皆が①を目指す方向に進めば一番良いのだが、話はそうすんなりとはいかない。開業者を対象としたWHO基準を満たすためのコースも設置されているが受講者数の伸びは芳しくないと聞いている。「日本にはカイロの法律がないのだから必要ない」という人もいるのだろう。ただ、そういう発言をする人はカイロの普及や発展に関して無頓着に違いない。平たく言えば「自分さえよければそれでいい」のだ。カイロ普及の面からすると困ったものである。

③と④はもちろん、①も②もその上位を目指すはず。ならば横軸の位置を上方変化させることで①と②の範囲を狭め、それを基準とすればいいのではないか。他の先生方もたびたび口にされる日本独自の基準というやつだ。その上で「当オフィスはカイログループ①に登録されております」などと各々表示してくれればわかりやすい。そもそもが看護師と准看護師のような違いでしかないのである。長い年月を経て看護師へ一本化されようしている流れ同様にカイロ業界もならっていけばいいと、個人的には思っている。

それでも「そんなのはダメだ」「認められない」と猛反発する人はいるのだろう。特に物事を「正しい」「正しくない」で判断する人にはその傾向が強いように思う。「グレー・ゾーン」の存在は許されないものなのか。それならそれで結構だが、ダメだダメだの一辺倒では話が先に進まない。自分の思いを大切にすることが相手の思いをも大切にしていることには必ずしも繋がらない。それを念頭に置いた上で各人が重い腰を上げて行動を起こしてほしいと願うばかりである。


山本元純(やまもと・もとすみ)

山本カイロプラクティック研究所(東京・杉並区)所長RMIT大学日本校(現・東京カレッジオブカイロプラクティック=TCC)卒業ブログ 「ちゃんとカイロプラクティックしなさい」を運営

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