代替療法の世界 第47回
「死人に口なし」
新しい概念の発見
ハンス・セリエのストレス理論は、病気に対しての概念を変えた。それまでは病気の原因は病原体であると考えられていた。しかし、セリエはストレスによる病気の成立を提唱したのだ。実験医学を用いて自説を検証し、仮説を証明した。第一段階はラットに様々な物質を注入し結果、副腎皮質肥大、リンパ組織委縮、胃十二指腸潰瘍という変化を起こした。次に、外傷、高温、低温、放射線、拘束、過剰な運動負荷などを与えた。すると同じように3つの変化が起こったのだ。そこからセリエはストレス学説を打ち出し、ストレスをつくり出す有害作用をストレッサーと呼んだ。
ストレスによる病気の機序
では、このストレッサーを代替療法の視点で読み解くと、どうであろうか。オステオパシーなどが創始される前から、人類はストレッサーに晒され続けてきた。なにもストレッサーを除去する方法はオステやカイロの専売特許ではない。ストレッサーがどういう機序で悪さをしているか。が分かれば、その機序を変化させることで治療することができるのである。では人体に有害作用(ストレッサー)が入ってきたときの発生機序である。
1.脳下垂体が副腎皮質刺激ホルモンを放出する。
2.副腎皮質ホルモン(コルチコイド)が出ることにより副腎が疲れて副腎皮質が肥大する。そして副腎皮質に溜め込んでいたコルチコイドの顆粒はすべて放出される。
3.全身に散ったコルチコイドはリンパ組織を委縮させる。リンパが委縮するとリンパ球の産生ができなくなる。すると相対的に顆粒球の比率が高くなる。顆粒球が多い状態は交感神経優位の状態と同じであり、副交感神経系の働きは低下する。となると胃粘膜、十二指腸の粘膜は弱くなり、胃十二指腸潰瘍のでき上がりである。
ホントに検証できるのか?
であるならば、メスメルの動物磁気を用いた催眠術の効果の機序も、ストレッサーの除去によるものであると考えるならば納得できる。よって代替療法を代表するスティル、D.D.パーマーが初期の頃に行っていた、マグネッティック・ヒーリングの治癒の動作原理は同じものであったと推察できる。どちらにしても、メスメル、スティル、パーマーともに死んでいるから、本当のところは伝聞でしかないのだ。「死人に口なし」とはよく言ったもので、後世の人が「あーだ、こうだ」言っても、ホントのところは検証のしようがないのである。それでも、書きつけなどがあれば参考程度にはなるのだが、草創期の治療術を探るには情報が少なすぎるのである。
スティル・テクニックひとつとっても、バスカークD.O.の解釈は違うと言う人がいたり、いや正しいという人がいたりするのだ。真偽のほどを議論するのは良いのだが、あまりそれにこだわっても時間の無駄であろう。人類の長い歴史の中では、カイロにしてもオステにしてもそれらが人類に恩恵を与えたのは、ほんの僅かの時間であり、人間の体のメカニズムはカイロやオステが誕生する前から、それほど変化していないのである。平たく言えば、人類が誕生して以来、常時ストレッサーに晒されてきたがために病気になり、ストレッサーを除去する治療術が、シャーマニズムを皮切りに各地に存在して、それらが医療として、または代替療法として現在に至るということである。
治療の味つけ方法とは?
ということは、ストレッサーを除去する方法論であれば、何でも良いということになる。オステ、カイロに拘りがある御仁は納得がいかないであろうが、人間の仕組みを考えれば、こうした結論に辿り着くほかはない。ストレッサーとして外傷、高温、低温、放射線、拘束、過剰な運動負荷があった。それらが脳下垂体を介して副腎刺激ホルモンを出し、最終的には胃、十二指腸潰瘍になる。「脳下垂体を介して〜」というのがポイントで、ここには精神的ストレスであっても、容易にストレス反応を起こし得ることは容易に想像がつく。パーマーがサブラクセイションの原因とした、自己暗示(精神的ストレス)を取ることでも効果はあるのだ。NAET、TFT、EMDRなど身体的、心理的な介入によって治療する術はいくらでもある。科学は辻褄が合わない治療術の共通項を導き出してくれることもある。その共通項こそが、治療における「さしすせそ」になる。
お待たせしました。前回お出しした問題の答えは?
さて、前回での水平思考問題の回答と解説である。問題を再掲する。
●前提条件
1.あるところにテントを設営した。突然、熊に襲われてパニックになって逃げた。
2.そこから南へ10キロ移動した。
3.さらに、そこから西へ10キロ移動した。
4.さらに、そこから北へ10キロ移動した。するとテントを設営していた場所に戻った。
●問題:熊の色は何色?
●解説:前提条件に最初に南へ移動する、とある。この問題を解くヒントは、方位磁石と3回の移動で元の位置に戻っているということである。南⇒西⇒北という3つの位置が出てくるが、スタートからだと北⇒南⇒西⇒北となる。北がスタート地点であるので、そこから南に行って、西へ行って、北に行って、スタート地点に戻れる場所はどこであろうか。そうした場所は地球には一点だけであり、そこは北極点である。場所が北極ならば、そこに生息する熊はホッキョクグマとなる。正解は白である。
山﨑 徹(やまさき・とおる)

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