徒手療法の世界に身を置いて 第47回
「姿勢別の変化-生体力学的考察」

 姿勢を変えて視診や触診を行うことは、時として臨床上、有意義な情報が得られることがあります。
 

姿勢は各受容器からの情報により、筋の出力でつくられます

 姿勢は関節などの固有感覚、平衡器からの情報、視覚からの情報、皮膚感覚からの情報に対して、筋が反応し姿勢を保持します。つまりどこからの情報が影響しているのかを考えなければ、問題点にはつながりにくくなるのではないでしょうか?
 

立位姿勢

 立位姿勢は姿勢分析検査によく用いられる姿勢ですが、立位姿勢ではいくつかの要素を考慮する必要があります。立位における姿勢は下肢の状態に左右されます。また、重力がかかる姿勢なので抗重力筋なども考慮しなければなりません。立位姿勢と坐位姿勢で姿勢が変わっていた場合、立位姿勢に影響しているのは脊柱よりも下肢の方が強いということになります。
 

坐位姿勢

 坐位姿勢では下肢の影響を受けずに姿勢を保持します。このとき、脊柱と抗重力筋がその姿勢に影響します。立位姿勢と比べて姿勢の変化がなければ、問題は脊柱と抗重力筋ということになるでしょう。
 

臥位姿勢

 臥位姿勢では抗重力筋の影響を受けることもなくなります。しかし、中には臥位でも筋の緊張が残っている患者さんや、歪んで寝ている患者さんもいると思います。これらは関節や筋からの情報が上手く処理されていないか、α-γ連関の異常などが頭に浮かぶでしょう。また、筋緊張がないのに体が歪んでいる場合には、関節フィクセーション等が考えられます。
 

 これらを考慮することで、問題点が脊柱下部または下肢にあるのか、脊柱上部にあるのかの鑑別にもつながるのではないでしょうか? また、発症姿勢によりどの姿勢を中心に考えればよいのかも見えてくるでしょう。

 先にも述べたように姿勢は感覚入力系による影響が多く、実際の筋緊張はあくまでも体の反応にすぎません。しかし、その感覚情報に基づき、ヒトは身体バランスを取るために、あるいは、重力に適応するために脊柱バランスを変えていきます。これらは運動連鎖を考えていく上でも非常に有意義な情報を提供してくれると思います。

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辻本 善光(つじもと・よしみつ)

現在、辻本カイロプラクティックオフィス(和歌山市)で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

 


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