徒手療法の世界に身を置いて
第36回「たゆまぬ努力を」
11月に東京で開催された岡井健DCの「マイプラクティス ―知識を知恵に、技術を技に-」、残念ながら参加することはできませんでしたが、このサブタイトル、個人的に大いに気に入っています。
「実技がいいです」「実技中心でお願いします」
各地でセミナーをやらせていただいていると、年末に次年度の計画を立てることになります。それで参加していただいている方たちに希望を聞くと、必ずと言っていいほど「実技がいいです」「実技中心でお願いします」という声が返ってきます。もちろん、これまでも実技を含め紹介させていただいていますが、ひと言で実技、実技と言っても、検査の実技もあれば、施術の実技もあり、基礎知識だけでは実際の臨床の場では、とても使えるようにはなりません。使えるようになるには「修正」や「応用」が必要になります。
特殊と思われる技術ほど基礎知識が必要
最近、私が代表理事を務めさせていただいている国際カイロプラクティック師連盟(FJIC)で、小児カイロプラクティックの研修会を開催することになりました。先日、その第1回目の資料が届き、講師をお願いした先生から「こんな資料ですけど配布しますか?」と言われ、内容をチェックさせていただきました。
初級編の1回目の資料としては申し分のない内容で、小児カイロプラクティックを理解していくための最低限の知識、小児を診るための検査/施術に必要な知識、言うまでもなく運動発達や姿勢反射の話でまとめられていました。
この最低限の知識がないと、初級編の2回目、さらに中級編、上級編と進んでいったら、講師の先生が何を言っているのか、チンプンカンプンになってしまいます。これらは私も含め大多数の徒手療法家の皆さんが、「知っているつもり」になっていることが多く、だからこそ最初に確認も含め、知識の再確認や講師との擦り合わせが必要になってきます。
テクニック習得のためには、まずは知識を
最低限の知識がなければ、教えられるテクニックは技術の域を超えることがありません。これらはHow toであり、施術のための技術としては成り立ちますが、臨床としてはすべてではなくなります。つまり、ある患者さんには効いても、別の患者さんには効かないという風になってしまいます。これでは、いつまで経っても技術が技になることはないでしょう。
知識だけでも、テクニック(技術)だけでもダメ
見様見真似で始めたテクニックと、やり方を教わりながらとでは、どちらが早く習得できるか、判断するまでもないでしょう。後者なのは言うまでもありません。ここに必要になってくるのが知識で、ここを理解しないと一人で練習することもできません。
施術とは施術者の考えや想いを、技術を用いて患者さんに体現し、伝えていくものだと思います。知識だけでは意味がありませんし、そこに施術者の考えや想いがなければ、ただただ患者さんの体を使って技術の練習をしているに過ぎません。どちらかだけではダメです。知識と技術は車の両輪で、どちらか一方が欠けていてもダメだし、どちらか一方だけに偏るのもダメです。そして、知識や技術を知恵と技に昇華させるには、常に勉強し常に練習する必要があるのです。
年末年始のこの季節、今一度、自分自身を振り返られてはいかがでしょうか。今年一年、拙いコラムにお付き合いいただき、「本当にありがとうございました」と心から申し上げたいと思います。来年も何卒よろしくお願いいたします。
辻本 善光(つじもと・よしみつ)
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
コメント
この記事へのコメントはありません。
この記事へのトラックバックはありません。