徒手療法の世界に身を置いて
第30回 「”カイロプラクティック スタディ ミーティングKANSAI vol.1” に参加して」
今月8日、土曜日に一日かけて、大阪で「カイロプラクティック スタディ ミーティング」と題して、合同セミナーと「カイロプラクティック ソウルナイトWEST」が開催されました。合同セミナーでは4人の講師によって、それぞれの得意分野が紹介されました。内容は、股関節、腰椎、小児カイロ、頚椎と一見バラバラな感じがしますが、終わってみればそれぞれがリンクし結果、何か一つのテーマでまとまっていたように感じられました。
テクニックを一つに絞らなくても、ええじゃないか(今増心堂先生)
タイトルからは想像しづらいですが、股関節の伸展制限をテーマに検査法と施術法が紹介されました。検査法はいたってシンプルで可動域検査と筋力テストによる評価法でした。この“いたってシンプル”が実はポイントになります。グッと持ち上げてしまえば、制限を感じることはできません。また、固定の場所が違っても同様に可動制限を見つけることはできないため、的確な固定と優しい他動運動が必要になります。これらは触診の基本でもあり、すべてと言っても言い過ぎではありません。
また、施術法に至っては、人は同じ刺激が続くと“慣れる”という適応能力が存在するため、適度に刺激を変える方が良いということで、ドロップテーブルを用いた関節操作に始まり、筋肉へのアプローチおよび施術器具を用いた刺激の三つが紹介されました。このときも力は最小限です。
運動要素から施術を考える‐腰椎編(辻本善光)
腰椎の検査では、その問題が椎間関節なのか? 椎間板なのか? を鑑別する方法を紹介させていただきました。これはオステオパシーの検査でありますが、生体力学の知識に置き換えたうえで、主たる問題が関節なのか椎間板なのかを鑑別するものでした。
検査は座位の患者の乳頭突起を触診し、屈曲と伸展で差異がどう変化するかで決定するのですが、肝心なのは腰部側弯の状況はもちろん乳頭突起を触っておく必要があります。参加していただいた先生の中には、「それ、わかりにくいでしょ」という先生方もおり、少しアドバイスをさせていただきました。
実際、いろいろな学校で勉強されているのでしょうが、触る場所などは教わっていても、触り方までは教わっていない。教わっていたとしても、ただ「ここがそうだよ」とか「これがそうだよ」というだけで、“わかる触り方”を教わっていないのが現状ではないでしょうか?
知って得する!小児カイロ(山地梨英子D.C.)
生後4か月になるかならないかの赤ちゃんの施術を見せていただきました。これは大変貴重な経験でした。
検査は赤ちゃんの向き癖などを視診で観察し、原始反射を用いた評価法です。見た目は赤ちゃんを抱っこしているだけですが、その過程で原始反射の確認をしているのですが、そもそも“原始反射”を知らなければ、何をしているかはわからない。この知識がなければ、小児カイロは成り立たないとのことでした。また施術する力も最小限でなければならず、触り方一つで結果が変わってくるのは成人の施術と同様でしょう。
頚椎の直接法と間接法の考察(山崎徹先生)
トリを務めたのは山﨑徹先生。カイロジャーナルの連載でも馴染みのある先生です。山﨑先生はカイロプラクティックをはじめ、NAET、オステオパシーなどを勉強され、その見識の広さは今回の講師陣の中では一番だったのではないでしょうか。徒手療法家が良く使う手技としては、動きの悪い方向に動かす直接法が主流になっています。カイロプラクティックのアジャストメントもこの直接法の一つと言えますが、間接法は簡単に言うと動きの悪い個所に刺激を入れるのではなく、隣接する動きのある個所に刺激を入れます。
普段、直接法をしている先生から見ると「えっ!」となる内容でしたが、患者さんからすると、非常に楽に施術を受けてもらえる半面、動きのあるものに対して刺激を入れるので、直接法よりは安全で、力もほとんど必要ありません。しかしながら隣接する個所に刺激を入れるため、これも触診能力が必要となります。
徒手療法家に必要な技術とは?
どの講師陣も、検査やそれに伴う知識が必要であるという根幹は一緒です。その応用の仕方がそれぞれ違うだけであり、基本的なところは変わらない。そのうえで、それを表現していくための触診能力が必要だということを再確認させられました。この検査能力と触診能力がなければ、どんなテクニックを用いても結果はついてこない。逆に言えば、検査能力と触診能力が備われば、どんなテクニックでも自分のものにすることができるのでしょう。
辻本 善光(つじもと・よしみつ)
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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