カイロプラクターかく語りき 第3回

カイロプラクティックの使者
患者への説明を諦めてはいけない!

カイロジャーナル87号 (2016.10.15発行)より

 

いつの頃だったか、カイロプラクターが一堂に会した飲み会に参加した時のことだ。初対面の先生方がいたこともあり、最初は在り来たりの馬鹿話で盛り上がってはいたのだが、酒が進むにつれ情報収集が始まり出す。新たな情報はもちろん、他の先生方がどのようにしてオフィスを運営・発展させているのか、またどのような施術を行っているのかなどを探り探っていく。情報を共有したり、他の先生の優れている点を取り入れたりと、ほんの数時間の間に様々な考えを巡らせる。結構頭を使う飲み会ではあるが、これが実に楽しく心地よい。

そんな中、こんな話題が出たことがあった。
「カイロプラクティックを説明するとき、サブラクセーションとイネイトインテリジェンス(以下、イネイト)の話をするか?」

その場にいた先生方は皆「サブラクセーションの話はする」と答えられたと記憶している。その一方で「イネイトの話はしない」先生方がほとんどだった。

カイロに対する理解が広がらない背景の一つに、サブラクセーションとイネイトの問題があると個人的には考えている。正直なところ、すでに様々な療法を試した上で「最後の砦」としてカイロのオフィスを訪れるという方々が多い。カイロに対する期待もあるが、同時に不安感も少なからずあるはずだ。そこにサブラクセーションとイネイトというわけの分からないカタカナで畳みかけられるのである。それを「理解しろ」というのはさすがに無理があると思わざるを得ないのではないか。そう考えがちだ。

試行錯誤の末、私は二回に分けて説明することにしている。初回はサブラクセーションの話を交えたカイロの説明を行い、イネイトの話は二回目に行う。初回の施術によってイネイトを言葉より先に実感してもらえれば、その後の説明もより簡単になると思うからだ。先の先生方も、イネイトを言葉で説明するよりも実感してもらった方が早いと考えておられるのかもしれない。それでも私は、やはり言葉で説明するべきだと思うのだ。

以前、「整体」と表記するカイロプラクターについて書いた。カイロプラクターが「整体」表記を止めない理由の一つに「検索のされ易さ」があると思う。ネット検索が当たり前となったこのご時世、まずは検索されなければ何も始まらない。それはその通りだ。ただ実際に施術を受ける前に「整体じゃなくてカイロなんですけど、いいですか?」とか、あるいは施術後に「実はカイロでした」とか言うのだろうか。「施術を受ければわかってもらえる」という人もいるが、ずいぶんと都合のいい話に聞こえてしまう。そもそも説明する気などないのではないか。受ける側は良くなれば何でもいいのかもしれないが、施術をする側がその考えに乗じるというのはお粗末というか情けないというか…。

サブラクセーションにしてもイネイトにしても、説明したところでおそらく「理解してもらえない」などと勝手に思い込んではいないだろうか。そうだとしたらかなり失礼な話である。一度冷静になって、自分の胸に手を当てて考えていただきたい。カイロプラクターはそんなに賢いだろうか。勉強上手あるいはテクニック上手な先生はいても、賢いと思わせる先生などそうは見当たらない。あくまでも個人的な見解ではあるが、反論は受けつけない。

そんなカイロプラクターでも理解できるサブラクセーションとイネイトである。一般の人たちが理解できないはずがないではないか。
「もし簡単に説明できないようなら、あなたはそれを十分に理解していないのだ」かのアインシュタインは言葉を残している。この言葉はカイロプラクターには重く圧し掛かってくるのかもしれない。

思うに、要はカタカナ語が取っつきにくいだけなのだ。内容やその意味は理解できても単語そのものが覚えられなければ、どうしたって伝わりづらい。だからといって、説明をしないよりはした方が絶対良いに決まっている。この点はカイロプラクターが一生抱えていく課題と言えよう。

誰よりもイネイトを信じているカイロプラクターが、自身の勝手な思い込みからその説明を諦めてしまうというのは残念でならない。何事においてもそうだが、本気で伝えようとすれば伝わるもの。カイロプラクターが本気になればカイロプラクティックは伝わるのだ。

その昔「男は黙って…」というビール会社のコピーがあった。男女はともかく、黙って事を進められるくらいにカイロをメジャーにする。それがカイロプラクターとしての使命ではないだろうか。


山本元純(やまもと・もとすみ)

山本カイロプラクティック研究所(東京・杉並区)所長RMIT大学日本校(現・東京カレッジオブカイロプラクティック=TCC)卒業ブログ 「ちゃんとカイロプラクティックしなさい」を運営

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