代替療法の世界 第15回「新しい試み」

このアーカイブは、カイロジャーナル紙(休紙)2020年2月からの記事です。

 

山﨑美佳D.C.の試み。厳しい環境下こそ、行動あるのみ! 私も同じ山﨑ですが。

カイロプラクティックを取り巻く環境は厳しいものがある。これは多くの方が共通して感じていることだと思う。「良くない」と悲観的なことばかり言っていても、現状は全く変わらないのである。変えるには行動するのみ。山﨑美佳(やまざき・はるか)D.C.が新しい試みを始めた。私も同姓の同じ﨑だが、美佳さんは「やまざき」、私は「やまさき」。違いはこれだけではないような気もするが。

 

Facebookを始めたら

私事だが、長年頑なに使い続けてきたガラケーの携帯がついに壊れ、やっとスマホ・デビューした。これを機に、人もすなるFacebook(フェイスブック:FB)を我もせん、と始めることにした。するとそこに、美佳D.C.がDr.Heidi Haavik著の『The Reality Check』をみんなで読む会への呼びかけをしていたのである。締め切り2日前でギリギリ滑り込みセーフ。

Heidi女史はニュージーランドのカイロプラクターであり、神経生理学者。ニュージーランド・カイロプラクティック・カレッジの研究センターの代表でもある。カイロプラクティックを科学的に研究している第一人者。『The Reality Check』は令和元年2月に出版された。もちろん未邦訳。

 

趣旨も決まりも、すべて単純明快

読む会の趣旨は単純明快。1.読む、2.まとめる、3.発表する。これの繰り返しである。細かい決まりはもちろんある。まずは本を買うこと。LINE(ライン)がつながること。LINE上でまとめを発表するので、どうしてもこの二点は外せない。1週間で1章を読んで、各自がまとめて日曜日に投稿するのだ。全文翻訳できる人はそうしてもいいし、できなければ、その章の中で気に入ったところや感じるところをピックアップして、自分なりの言葉でまとめれば良い。英語に自信がない人でも、今はGoogle(グーグル)翻訳やWeb上には翻訳サイトもゴロゴロある。主催者の美佳さんは多様性を求めているのだ。多くの方が参加することにより、多くの考えが集まる。一つの本をみんなで読むことにより、それぞれの読者がそれぞれの考え方で本を解釈する。みんなで同じ本を読むのにはそういう理由がある。

 

美佳D.C.の願い、ネライ

美佳さんは、自分一人では「最後まで読み切れない」と言うが、彼女の経歴からしてそれは嘘。理化学研究所で研究に従事していたのだから、この本以上の膨大な英語論文を何本も読んでいたはず。それにこの本の対象は一般人向けである。カイロプラクティックの意味、科学性を説いている本であり、カイロプラクティックの啓蒙書とも言い換えることができる。正しくは読み切れないじゃなくて、そうした一般向けの本をカイロプラクターだけに限らず、治療家みんなでシェアしようという彼女のやさしい思いだ。最終的には、その情報は患者に提供されるから、より良い形でカイロプラクティックのことが世の中に発信されるだろう。

 

これまでのところを紹介すると

イントロと第一章の翻訳とまとめは終了した。以下に抜粋して紹介する。

著者のHeidi女史は、自身の少し他の人とは違う生い立ちが少なからず、カイロプラクターという職業を選択したことに影響を与えていると言う。ノルウェー人としてノルウェーで育ったのだが、母親がニュージーランド出身の歯科衛生士。父はノルウェー人医師。そういう家庭環境だったから、伝統的なノルウェー料理も食べたことはないし、学校の英語の先生よりも流ちょうに英語をしゃべる。やっぱり周りからは浮いてしまう。カイロプラクターを選択するということは「医学」という大きな道路からは外れてしまう。でも居心地の悪い場所は、彼女にとっては慣れっこであった。いい意味で疎外感に慣れっこになっていた。カイロプラクティックに触れたときに、その居心地の良さにカイロプラクターになった。そんな彼女が特に強調するのは、カイロプラクティックのメカニズムの解明だ。機能していない脊柱セグメントをアジャストしたときに、何が起こるのか? を論理的に示していきたいというのである。

 

脊柱サブラクセイションとは

第一章は脊柱サブラクセイションがテーマである。カイロプラクターは、この脊柱サブラクセイションを見つけ矯正をする、というのが仕事。かように脊柱サブラクセイションという言葉は、カイロプラクターにとっては大切なものだ。しかしながら他業種にとっては、理解されにくいのも事実。今日でのサブラクセイションは亜脱臼ではない。脊椎に付着する筋群が外傷や姿勢の変化、使い過ぎのせいで固くなる。それらの働きで脊椎が捻じれ、触診したときにズレているように感じる。もしくは固まっているように感じるのだ。サブラクセイションを他の治療業界では、spinal fixationやvertebral(spinal)lesionとかsomatic dysfunctionなどと呼ぶ。神経学者でもある彼女は、この脊柱サブラクセイションが、日常の脊柱の機能にどのように影響を与えているのか? その多岐にわたるメカニズムは今一つ説明できていないと言う。それらのことをシンプルに伝えたい、との思いが彼女の目的である。

 

これからでも、ぜひ参加を

今からでも遅くはない。我こそはと思う方の参加を歓迎する。ただし条件が一つある。

今までの発表が終わった章のまとめと発表をすること、途中参加の条件はこれだけだ。参加はなるだけ早い方が負担は少ない。10月27日には二章のまとめの発表。次の11月3日には三章のまとめという風に続いて行くから。結構スケジュールはきついが、終わったときには達成感を感じられると思う。何よりも英語の本を一冊読破したということは、大きな自信にもつながる。知識も得られて、患者に対する説明や説得力も増す。こうした機会を提供してくれた山﨑美佳D.C.の行動力に感謝する次第。


山﨑 徹(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者
 
看護師、柔整師の資格を有する傍ら、カイロプラクティックとの出会いからシオカワでガンステッドを学び、21世紀間際にスタートした科学新聞社主催の「増田ゼミ」 で増田裕氏(D.C.,D.A.C.N.B.)と出会ったことから、以後、氏の追っかけを自任し 神経学、NAETを学ぶ。現在は専らオステオパシーを学び実践しているが、これまでに 身につけた幅広い知識と独特の切り口でファンも多く、カイロ-ジャーナル紙から引き続き連載をお願いしている。

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