徒手療法の世界に身を置いて 第5回
正確な検査の重要性、必要性を求めて – Vol.5
タネと仕掛けの賜物、マジック!
最近テレビであまり見かけなくなったマジック。イリュージョンと呼ばれ、世界的にも有名な引田天功やMr.マリックのように、「何度でも見たい!」と思わせるマジシャンも多数いる。彼らは観客を魅了し、ある一点から目を離させない。
また、マギー司郎のように観客の前でわざとタネ明かしをするマジシャンもいる。こちらもまたコミカルで、「もう一度見たい!」と思わされたものだ。
どちらのマジックが好みかはさておき、イリュージョンと呼ばれるものにも、一般の方にわかりやすいマジックにも必ずタネや仕掛けが存在している。そして彼らは、そのタネや仕掛けを考え、如何に上手く見せられるか、また失敗しないように日々繰り返し、繰り返し、何度も何度も練習を積み重ねている。
施術家としてのタネや仕掛け
マジシャンにとって出し物が成功するか否かは、タネと仕掛けにかかっている。タネや仕掛けに無理があれば、当然失敗する確率が高くなるからだ。
では、われわれ施術家にとってタネや仕掛けは何になるだろう? 実際にステージでマジックを披露することが最終段階だとすれば、施術家にとっての最終段階は施術技術ということになる。つまり、それを成功させるためのタネや仕掛けは、検査とその考察ということになる。
検査や考察に無理があれば、必ず施術技術にも無理が生じる。この無理をなくしていくためには、基礎医学をはじめとする基礎知識が重要になってくる。これがなければタネも仕掛けも考えられない。イリュージョンと呼ばれるものほど、綿密に計算された準備が必要になってくるだろう。些細な食い違いが、いざ観客を前にしたパフォーマンスに大きく影響を及ぼすことを、経験上わかり過ぎるぐらいわかっているのだろう。
プロとしての基準
施術家として患者さんが快方に向かい、喜ぶ顔を見られたら、こんな嬉しいことはない。患者さんに良くなったと「自覚」してもらえるのは、もちろん良いことだが、施術家の仕事の大前提にそれがあることも忘れてはならない。
自覚症状の改善は施術のゴールではない。その場の喜びは宴会芸のマジックでも味わうことができる。しかし、一流マジシャンのように「もう一度見てみたい!」と思わせるには、タネや仕掛けをほんの一瞬のステージのために練習するのと同様、どれだけたくさんの時間をかけて準備するかだ。
表面には現れないことに時間と労力を費やせる施術家が、プロと呼ばれる先生となり、はじめて「ゴッドハンド」と呼ばれるべきではないだろうか。本当に良くなったとか、治ったというのは、検査で得られた「他覚症状」がどれだけ陰性になったかではないだろうか。
「一度見たら、もういいわ」と言われるマジシャンには、絶対なりたくない!
辻本 善光(つじもと・よしみつ)
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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