徒手療法の世界に身を置いて 第43回
『TIME & SPACE 時空をともに』に参加して
10月13日、14日の2日間、東京のJR大井町駅前、「きゅりあん」で第2回目となるカイロプラクティック・フェスティバル『TIME & SPACE 時空をともに』が開催されました。私自身もスピーカー兼スタッフとして参加させていただいたわけですが、参加者の立場として言わせていただくと、活気に溢れカイロプラクティックを見直す良い機会となりました。
プロフェッショナルの集まり
1日目のスピーカーは中川DC、和泉DC、塩川DCの3DC。2日目は榊原DC、小倉DC、丸山先生と私、辻本の4人。それぞれが得意とする技を持つ、私以外は大御所ばかりです。神経-筋-骨格系を扱うカイロプラクティックをはじめとする徒手療法に必要な要素が、このイベントに集約されていたように感じました。
マイクロ・リリース法とアジャストメントの考察
カイロプラクティックにおけるアジャストメントは、決して可動性の制限を取るだけではありません。高速低振幅(HVLA)の刺激を入れることで、ⅠbまたはⅠa求心性線維に入力しています。この観点から見てみれば、中川DCが考案されたマイクロ・リリースも、問題のある筋線維を起始部または停止部で固定し、軽く伸張ストレスを加えています。このときに発火する受容器もまた、ⅠbおよびⅠa求心性線維ということになります。見た目の手法は正反対の手技に見えますが、刺激としてはどちらも同じ求心性線維を利用していることが伺えます。
ガンステッド・テクニックと横隔膜施術と栄養学
ガンステッド・テクニックと言えば塩川DCですが、ガンステッド・テクニックの患者評価は塩川DCによれば、自律神経系のどちらが優位で、どちらが低下しているかがその前提にあると言っています。そして、どちらかが低下していれば、その支配レベルでモーション・パルペーションを行い、椎骨レベルを決定します。また免疫力に関しても、がん細胞とNK細胞について話されました。一方、小倉DCも横隔膜施術について、その重要性を話されましたが、ご存じのように横隔膜は呼吸の主動筋であり、呼吸の異常は自律神経系に直結する問題になるでしょう。また、和泉DCもご自身の体験から、栄養学とカイロプラクティックの相性は抜群だと話されました。和泉DCの栄養学は腸内環境を良くすることが、その根本にあるように思えます。そのために糖質や小麦など、腸内環境を悪くする要素は控えるべきだと話されました。そして免疫機能のほとんどが腸内環境によって行われますと。
生体力学的問題から考える
榊原DCは、体のゆがみには決まった代償パターンが存在すると話されました。もちろん、そのパターンは必ずしも正解とは言えませんが、迷ったときは参考にして欲しいと訴えました。私、辻本はサブラクセーションについて、脊柱安定に関わる要素として脊柱回旋筋群を取り上げました。
結局、最後は丸山先生
丸山先生は神経学について非常に長けた先生です。ご自身は未だに触診ができないから、アジャストメントをしたくてもできません。だから神経学を必死に勉強し、今日に至っていますと話されました。講義の中では、各受容器からの情報がどこに伝達されていくのか? また自律神経系の話では、輻輳反射を用いてわかりやすく説明してくださいました。もちろんのことですが、ヒトの機能は神経系により調節されています。筋骨格だけではなく内臓、血管、内分泌系すべてです。そう考えると2日間、各スピーカーが別の切り口から神経系にアプローチしていたということに収まるのではないでしょうか? 個人的な意見になりますが、アジャストできないカイロプラクターが、カイロプラクティックの本質を語ってくれたように思えます。
今回参加できなかった先生も、ぜひ次回は参加していただきたいと思いますし、私自身、来年も必ず参加しますし、そのの開催を首を長くして待ちたいと思います。
辻本 善光(つじもと・よしみつ)
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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