徒手療法の世界に身を置いて
第35回「先生、マッスルガードという言葉を使わないのはどうしてですか?」という、ある受講生からの質問

 筋が硬くなっている状態に「マッスルガード」「防御性スパズム」「筋スパズム」という言葉がありますが、私は基本的にこれらを使い分けています。
 

受講生からの質問

 先日、セミナー後の懇親会である受講生から、「先生の講義を受けて長いですが、マッスルガードという言葉を一度も聞いた覚えがありません。どうしてですか?」という質問を受けました。確かにテキストに使っている書籍でこの言葉が出てこない限り、ほとんど使ったことがありません。では「マッスルガードとは一体何なのか?」ということになりますが、皆さんは、いつ、どんな状況でマッスルガードという表現をしますか?
 

マッスルガードって?

 そもそもマッスルガードとは、痛みや筋の損傷が起きたとき、痛みを起こさせない、または損傷を悪化させないようにするために起こる筋の短縮のことです。言い方を変えれば、防御性スパズムと言ってもいいでしょう。が基本的には、筋が短縮する原因が比較的はっきりしていて、マッスルガードを起こしているところに、痛みを起こす原因があったり、筋の損傷があったりします。
 私自身、問診や筋力テストにおいて、これらの所見が見つからなければ、マッスルガードという言葉を使用しません。また、運動器の損傷は4~6週間でそのほとんどが修復されていきます。この期間を過ぎてしまえば、マッスルガードという表現は適切でなくなります。
 

スパズムって?

 一方、スパズムは筋の過緊張という意味を持ちますが、これは筋の状態を表現したもので、マッスルガードが比較的運動器障害の意味合いを持つのに対し、こちらは神経系の状態が正常でないときによく使います。つまり、痛みや筋の損傷に関係なく現れてくる可能性があるということです。
 

防御性スパズムって?

 防御性スパズムは、マッスルガードとスパズムの中間的な状態のときに、私は使っています。基本的には、スパズムという用語が使用されていますので、マッスルガードのような構造的な問題がなく、神経系による調整がされているときに使用しています。
 

似て非なるもの

 講師という仕事をさせていただいていると、できる限り受講者が理解しやすい用語を選ぶようになります。上記はマイルールかもしれませんが、状態が同じでも原因が違えば施術の方法や部位も異なってきます。はっきりと判断できないときがあるかもしれませんが、皆様の施術のお役に立てていただければ幸いです。


辻本 善光(つじもと・よしみつ)

現在、辻本カイロプラクティックオフィス(和歌山市)で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

 


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