徒手療法の世界に身を置いて 第13回
問診
今回は「問診」についてのお話です。
問診は患者さんの状態を把握したり、患者さんとの信頼関係を得るために必要な、かつとても大事な検査方法の一つです。問診が上手くなると患者さんの状態の6~8割が理解できます。これだけわかると残りの検査でそれらを確認したり除外することができ、より患者さんの問題点を把握することができます。
「きく」ということはどういうことなのか?問診を上手に進めるポイントの紹介です。
患者さんとの信頼関係は「聞く」ことから
患者さんは自分の痛みや苦しみを私たち施術者に少しでも理解してもらおうと、一生懸命話してきます。中にはこちらが「どうされました?」とひと言聞くだけで、物語のように話をしてくださる患者さんもいれば、聞いたことだけに答えるだけの方など、様々です。
勉強会などでよくする話ですが「人の話を聞かない、自分の話も聞いてもらえない」。どんな話し方をされても、まずは患者さんの言葉を聞くことから始めてみましょう。
まずは基本(ベース)となる情報を「聴く」
「聴く」には能動的に聞くという意味があります。特に問診での7つの質問に関しては、しっかりと聴きましょう。いつ(When)? どこが(Where)? どんな風に(How)? どうなった(Wat)? の3W1Hの4つは、患者さんの状態を把握するためにとても必要です。残りの3つは患者さんの状態を把握するだけでなく、施術の方向性を教えてくれていることもあります。問診のスタートになる7つの質問はできるだけ「聴く」ことに集中しましょう。
「訊く」=「尋ねる」 あれっ?と思ったら「訊く」
「訊く」には「尋ねる」という意味があります。わからないところや、もう少し詳しく聞きたいときは訊きましょう。7つの質問の中でも特に「何をして悪くなったのか?」は施術者として興味深いところです。ここでは悪くなったメカニズムや損傷組織の予想ができます。また、意外に忘れているのが「楽な姿勢」です。楽な姿勢を考えることで、それを邪魔しているところが見つかれば、それが施術ポイントになります。特にどう施術していいのかわからないときは「楽な姿勢」をしっかり訊いていきましょう。
ここまで3つの「きく」についてお話しさせていただきましたが、共通する大事なことはその解釈/考察です。患者さんの状態をしっかり「きいて」も、その解釈/考察に間違いがあれば、効果的な施術にはつながらず、かえって患者さんの状態を悪くすることにもなりかねません。「きいた」話をどう解釈するのかは施術者次第ということになります。失敗は思い込みやバイアスが関係してきます。
これを防ぐためにお話しさせていただいていることが、7つの質問すべてで1つの解釈/考察をするのではなく、質問のひとつひとつに解釈/考察を考えていくことです。つまり7つの質問それぞれの共通項を見つけるのではなく、7つの答えから最大公約数を導き出すと考えていただければ良いと思います。
そうすることで施術者にとって都合の良い解釈/考察ではなく、患者さんの状態により近い解釈/考察になっていきます。大きな問題点も細かくすれば、それぞれに解決策が出てくるのと同じです。
だから「効く」
問診が上手くなると患者さんの状態がわかり、施術方針も定まるだけではなく患者さんとの信頼関係を築いていくための土台ができ上がります。だから施術も「効く」んです。逆に問診が上手くできなければ、患者さんの状態がわからず施術方針も何となくのままで、患者さんとの信頼関係も築けません。
問診は技術です。技術だからこそ、ポイントを押さえて練習すれば必ず身についてきます。効果のある「きく」施術のためにもぜひ練習してください。
辻本 善光(つじもと・よしみつ)
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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