第2回 カイロプラクティック・フェスティバル
『TIME&SPACE』に寄せて 木村 功

 10月13日(日)、14日(祝)の両日に行われた第2回 カイロプラクティック・フェスティバル2024 『TIME&SPACE 時空をともに』 に参加した。今回はその感想を書いておきたいと思う。このイベントは、科学新聞社カイロ事業55年、カイロジャーナル35年、第1回から15年の節目に行われたが、主催者の斎藤信次氏によれば、コロナで徒手医学会の活動が休止、解散となってしまったので、垣根なく集まれるイベントとして開催したとのことである。それもあって、懐かしい方々にお会いすることができた。感じとしては、一般講演のない基調講演、ワークショップのみの学術大会のような感じと言えるように思う。

木村 功氏

 今回、司会を依頼されたため慌てて台本を作ったはいいが、元々喋ると噛んでしまう質なのでかなり心配していた。しかし、皆さんが優しく温かい目で見てくださったお陰で、リラックスして話すことができてありがたい限りである。

中川 貴雄 氏

 さて内容であるが、初日のトップバッターは中川貴雄先生による 「徒手療法58年と頚椎治療の変遷」 で、先生の恩師である古賀先生の逸話が秀逸であった。この話だけでも十分参加した意義を感じた。講演の内容は臨床に即していて、頚椎治療を見直すことができたと思う。中川先生は長きにわたり日本カイロプラクティック徒手医学会の会長をされており、私も学会誌編集長や事務局長をしていたため、ひとかたならぬお世話になった。中川先生は気さくな方で、優しい語り口であるのでカイロ界の巨匠でありながら、いつでも誰にでも心安く臨床における質問に答えていただけるので、お会いできれば非常にありがたい存在である。

和泉 宏典 氏

 続いては、和泉宏典先生の 「カイロプラクターのための栄養学」 であった。サブラクセーションの三大要因である物理的ストレス、化学的ストレス、精神的ストレスにおいて、我々が臨床で扱いにくい化学的ストレス、つまり食事などの問題について、臨床に即したお話が聴けた。この化学的ストレスは、精神的ストレスに密接に関係していることも指摘され、これは非常に重要なことである。また栄養という点では食事のみを考えやすいが、体内で合成される ビタミンDなどは日光に当たる必要がある。日焼けを嫌う日本女性の問題点などを指摘され、なるほどと思わされる部分が多々あった。

塩川 満章 氏

 初日のラストは、なんと私の恩師でもある塩川満章先生。紹介文を用意したが、ご本人に紹介を端折っても良いか聞いたところ、気軽に「いいよ」と言ってもらえたので、紹介もそこそこに 「血液検査の数値は変えられるか? -カイロプラティックの矯正を最高のものにする秘訣-」 の講演に入っていただいた。私はシオカワスクールの6期生であるが、40年以上前と変わらない塩川先生の人柄に触れて感無量であった。塩川先生は80歳近い年齢であるが、昔と変わらないエネルギッシュなスピーチに、皆さん時間を忘れて引き込まれていたことと思う。ジョークも交えた塩川先生のお話を聴いていると、おかしなもので自分も若返ったような気がする。クレイ・トムソンやクラレンス・ガンステッド、その弟のマートンの逸話など、カイロプラクティックの裏話を沢山していただけた。テクニックのお話も深く、初心にかえることができた。

塩川氏、中川氏、斎藤 信次氏

 そして、懇親会までの時間を利用して、カイロプラクティック制度化推進会議の山田雄次事務局長より、現在の厚労省とのやりとりなどの制度化進捗状況のお話があり、カイロプラクティックのさらなる発展を目指している推進会議の現況を垣間見ることができた。私も推進会議に関わっているが、JACとは異なる切り口で、制度化を進めている山田事務局長のご努力が滲み出ているお話であった。

 そうして、待ちに待った懇親会となったが、徒手医学会でも懇親会を仕切っていた若林先生のそつのない進行のお陰で、本当に久しぶりに、仲間たちと和やかな時間を過ごすことができた。乾杯の発声は和泉先生にお願いした。上手くまとめていただいてありがたい限りである。私はアルコールに強い方ではないので、ビール2杯程度でダウンしていたため、愛知の北川先生や荒川先生に心配していただいた。我ながら、やれやれであった。

榊原 直樹 氏

 翌日、二日目は、榊原直樹先生の 「仙腸関節」 と題した講演で始まった。運動動作時の仙腸関節の動きに伴う全身状態の変位を中心にわかりやすい説明をしていただいた。運動力学に基づいたお話は、明快で理解しやすいものであった。スポーツ障害に関して、卓越した知識を持っておられる榊原先生のお話は、臨床に即座に役立つものである。いつもながらの論理的な話の組み立てで、仙腸関節における様々な部位との関連性も明確に説明されるので、非常に理解しやすい。

辻本 善光 氏

 続いて、辻本善光先生の 「サブラクセーションを考える」 が行われた。サブラクセーションの言葉の意味から始まり、DD、BJ、カーバーやイリ、ジェンシーなどの考え方の紹介などがあり、さらに現代的な考察を踏まえた、なかなか興味深い内容であった。辻本先生も気さくな方で懇意にしていただいているが、いつもながらその考察にはうならされるものがあり、非常に勉強になった。

小倉 毅 氏

 昼食の後は、小倉毅先生の 「横隔膜治療の重要性」 である。小倉先生も、一般社団法人後の日本カイロプラクティック徒手医学会の会長をされており、事務局長当時、先生にはいろいろとご迷惑をおかけしていたが、いつもながらの優しい対応で、安心して業務に取り組むことができていたのを思い出す。講演の内容は、小倉先生の臨床経験に即したもので、これまた非常に勉強になった。連発されるオヤジギャグも楽しく、こういうお話を平易に、また惜しげもなく話していただけるのは、本当にありがたいと思う。

丸山 正好 氏

 最後の講演は、丸山正好先生の 「神経学が与えてくれた希望」 であった。丸山先生は、敷居の高いカイロプラクティック神経学をわかりやすく、実用的に説明されることに定評があり、ご自身はアジャストが苦手ということで、神経学の治療に傾倒されたとのことであるが、その傾倒の仕方が尋常ではない。神経学の治療で、アジャストメントにも勝る結果を出されている点は秀逸である。ともすれば、理学療法と変わらないような感じを受ける神経学であるが、丸山先生にはイネイト・インテリジェンスを基礎としたカイロプラクティックの考え方が根底にあることを深く感じさせられた。苦労人であるので、人の苦労をよく理解されて、誰にでも懇切丁寧な説明をされ、親しみやすい方である。

 簡単に各講演の感想を書き連ねてみたが、こういうイベントは日頃会えない先生方と会って、いろいろお話しさせていただくことが楽しい。学術大会を彷彿とさせるものであった。業界が低迷する中、こういうイベントに盛り上がりがあるのは嬉しいことである。カイロプラクティックの学校がなくなっていく中、カイロプラクティックに興味がある人たちなら誰でも参加できるイベントは、業界のためにも非常に重要な意味を持っていると思う。主催者の斎藤氏から、毎年秋の恒例とするとの締めの挨拶もあったので、今後も開催される予定である。また、いろんな先生方にお会いできるのが今から楽しみである。

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