代替療法の世界 第29回「同級生」
同級生、同期生、同窓生
義務教育から高校までは同級生と学ぶ。一方、大学、専門学校は現役、浪人がいるから年齢もバラバラで、同い年の集まりではない。同級生というよりは同期生という呼び方が適切だろう。カイロプラクティック、オステオパシーのような各種学校でも同じく同期のよしみという言葉がピッタリくる。
最後に出た学校の同期生とは今でも連絡を取り合う。これは義務教育やその延長である高校は、職業としての目的を一つにしていないから、どうしても疎遠になる表れだ。義務教育時代や高校時代の友人と、たまに同窓会をすれば、そのときの時間にタイムスリップできるのだが、同じ職業を選択しているわけではないので今現在の共通の話題には欠ける。
今年は座談会で見参、岡井DC
先月18日(2021年7月)に科学新聞社の斎藤氏の段取りで、岡井DCを進行役にしたWeb座談会が開かれた。岡井氏は昨年Webセミナーで見参したわけだが、今年は講師と受講生という一方通行の関係ではなく、互いに言葉を交わせる双方向の関係をと6月から始まった2回目、西日本のメンバーに声がかかったものである。
岡井氏は時差をものともせず、いつもと変わらぬパワフルさで、アメリカでは深夜2時を回るというのに元気一杯の様子。座談会にあたり岡井氏から宿題が出された。1つはサブラクセイションを患者さんにどういう風に説明するか? 2つ目はよりカイロプラクティックを良いものにするためには? 3つ目は若いカイロプラクターを増やすには? という宿題の答えを各々が持ち寄り、発表していくという形で座談会は進んでいった。ときおり話は脱線し、日本のカイロプラクティックの現状、一部のコンサルタントが治療業界を食い荒らしている話など。
問3の若いカイロプラクターを増やすにはどうしたら良いのか? アメリカで学ぶのはどうだろうか? 岡井氏の留学時の学費と、現在の学費はざっと計算して約5倍になっていた。これでは本場アメリカで学びたくても金銭的にはハードルが高くなる。日本に目を向けてカイロプラクティックを学びたいと思っても、現状は軒並み学校の廃校、休校、募集停止などで学べる環境は減っている。という風に問題点も山積みである。これでは若いカイロプラクターを増やすどころの話ではない。
志が同じは同期と一緒!?
ふと座談会を冷静に見てみると、この集まりは年齢も違うし、それぞれのバックボーンも違う。しかし、カイロプラクティックという徒手療法が好きで、職業として選択している連中である。これぞ同期生ではあるまいか。同期であるがゆえに業界の話や治療の話が尽きることはない。
また面白いことに岡井氏をはじめ参加者の子供は、皆同じくして徒手療法家を選んでいない。自分が選んだ職業を子供には選択肢の一つとして与えてはいるだろうけども、それを強要していないところに好感が持てる。子供には子供の人生がある。それはわかっていても実践するのは容易ではない。というか、実のところ子供は親の大変な姿を見て徒手療法の厳しさを目の当たりにしているから、選ぼうとはしないかもしれないが。
岡井氏は子供には強制しないが、未来のカイロプラクティック業界を憂いている。若いカイロプラクターを増やすことに関して、一肌でも二肌でも脱ぐつもりである。コロナが収束すれば、何らかの形で未来につなぐ道を示してくれるだろう。
身体のすべては同級生
治療家あるあるで、患者さんからよく言われる言葉で「お年ですから」という殺し文句がある。岡井氏曰く、これは日本だけに限らずアメリカでも同じことだそうだ。メディカル側からそうした言葉を言われ、悲観してオフィスにやって来るそうだ。例えば膝の痛み。「先生、右膝がすごく痛いんですけど」、「残念ですけどお年ですね」、「そうですか…」。こうしたやり取りを聞いたり、経験している治療家は多いだろう。
そんな患者にはこう問いたい。「左膝は問題ないのですか? なければ、症状がある右膝と症状がない左膝は同級生ですよ」と。「同い年なのに片方だけ年のせいにするのはいかがなもんでしょうね」と続ければ、勘のいい患者さんは、それで納得するし、ニヤッと笑うだろう。年のせいは便利な言葉だが、大きく矛盾を含むのもまた事実である。 「お年ですから」は安易に使うとブーメランのように戻ってくる。
山﨑 徹(やまさき・とおる)
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