徒手療法の世界に身を置いて 第20回
可動域検査エンドフィール
前回は可動域検査の動く、動かない(量的問題)のお話をさせていただきました。今回は可動域検査のエンドフィール(最終域感)のお話で、可動域の「質」についてです。徒手療法の分野では重要な内容だと思います。
わかりやすい硬さは要注意!
関節運動制限の質は大きく2つに分けられます。まずは一番硬い骨性の制限(Hard End Feel)。これはガチっと止まる感じで制限が出てきます。正常でもこういった制限因子の関節があります。例えば肘の伸展がこれにあたります。はっきりとわかる硬さです。わかりやすいですよね。
しかし他の関節において、このような感覚を術者が感じればそれは要注意です。関節の変形や癒合が考えられます。変形性膝関節症の患者さんの膝を屈曲したときなどに、いきなりガチっと止まりますよね!
動いているけど…
一般的に動きにくいと表現されますが、ここが一番わかりづらいかも知れません。可動域検査の中ではSoft End Feelとして分類されていますが、これには3つあります。
1つ目は結合組織性の制限。これは骨を動かしたときに、反対方向から「引っ張られる」ような感覚です。例えば腹臥位で、膝を屈曲していったときの大腿四頭筋の伸張がこれにあたります。腱や靭帯を引っ張ったときに感じられるものです。よく運動部の生徒や学生がトレーニングのときに、腰にチューブをつけて走るような感じです。
2つ目は筋肉性の制限。ちょうど力こぶを作ったときに上腕二頭筋が収縮し、その容積を大きくします。これに前腕が衝突することにより肘の屈曲制限を作りますが、この時は骨を動かした方向から「押し返される」ような感じになります。
3つ目は関節間の制限。脊柱などによく見られる制限となりますが、筋性の制限と同様に骨を動かした方向から「押し返される」ような感じになりますが。
硬い軟らかいだけではダメ!
このようにエンドフィール(最終域感)は、どの組織が制限因子になっているかでエンドフィールが異なります。組織が違えば施術の方法も変わってくるのではないでしょうか?
地味な作業から大きな成果
どんなに素晴らしい建物も、ねじ1本が緩むことで歪みがでれば倒壊することもあります。どんなに素晴らしい絵画も一本一本の絵の具を少しずつ混ぜ合わせることで、作者のイメージした色が出せます。
徒手療法の世界でも同じで、こういった地味な知識や検査が施術を支えてくれているのではないでしょうか? わかりやすい情報がすべてではありません。地味な作業を怠って、和歌山の水道橋のように落ちないようにしたいものですね。
辻本 善光(つじもと・よしみつ)
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。
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