徒手療法の世界に身を置いて
第34回カイロプラクティックにおけるアジャストメントとは

 カイロプラクティックにおける「アジャストメント」とは、一体どういうものなのでしょうか? また「アジャストメントする」ということは、一体どういうことなのでしょうか?
 

アジャストメントって?

 業界では「サブラクセーション」という言葉と同じくらい、「アジャストメント」という言葉が話題に上ります。英和辞典を引くと、Adjustment(アジャストメント)には調整・修正・適応などと出てきます。施術においては「調整」または「矯正」などの意味が当てはまりますが、これらが実行されていれば、アジャストメントしているということになります。
 しかし、これらは施術者の行為や結果であって、アジャストメントの方法を覚えたからと言って、アジャストメントしていることにはなりません。可動性の減少や椎骨のズレ、神経トーンの回復が成されて、初めてアジャストメントしているということになります。つまり、スラストに代表されるようなHVLA(高速低振幅の刺激)であれ、モビリゼーションのような低速の刺激であったとしても、です。
 

アジャストメントは方法の1つ

 スラストもモビリゼーションも、矯正という意味では何も変わりはありません。どのような刺激を加えるかの違いであり、結果として目的が果たされれば良いとは思います。では目的とは何でしょう? 目的の違いはフィロソフィー(哲学)の違いです。施術者が何のためにアジャストメントを行うのか、ということです。
 

アジャストメント=スラスト(高速低振幅の刺激)ではない

 各地で勉強会をしていると、様々なバックグランドをお持ちの先生方とお話しする機会があります。カイロプラクター、柔整師、理学療法士など様々です。そこで言われるのが、やはり「アジャストメントを教えてください」ということなのですが、彼らの多くが言っているのはスラストやボディドロップのことで、決してカイロプラクティック・アジャストメントではないのです。
 前述の表現を使えば、アジャストメント(調整、矯正)は教えても、カイロプラクティック・アジャストメントを教えるというのは、とても大変なことなのです。例え教えるということになっても、スラストは最後の最後になるでしょう。アジャストメントという言葉と、カイロプラクティック・アジャストメントという言葉には、それくらい、その持つ意味が違うのです。
 

カイロプラクティック・アジャストメント

 岡井健先生の「マイ・プラクティス カイロプラクティック基本テクニック論」を読むと、アジャストメントという言葉からは以下の要素が窺えます。
 ①サブラクセーション ②スラスト ③ ドクター・ポジション(D.P.) ④ペイシェント・ポジション(P.P.) ⑤セグメンタル・コンタクト・ポイント(S.C.P.) ⑥コンタクト・ハンド(C.H.)とコンタクト・ポイント(C.P.) ⑦固定手(I.H.)

 細かなことは実際に本を手に取って確かめていただくとして、これらすべての要素が患者さんに上手く適応できて、初めてアジャストメントということになります。個人的にもそう考えていますし、スラスト自体は外力なので、適応部位(サブラクセーションやフィクセーション)に使われなければ、外傷を与えることにもなりかねません。

 どちらが優れているということではなく、方法が違えば難しさも修得までの時間も違ってきます。また、どんな方法であっても一朝一夕でできるものではありません。とにかく、患者さんを壊さない、というのが先決であることは言うまでもないことです。


辻本 善光(つじもと・よしみつ)

現在、辻本カイロプラクティックオフィス(和歌山市)で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

 


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