岡井健の I Love Chiropractic ! 2021/9/29
「稀薄ということの怖ろしさ

1年ぶりのWebセミナー

日本の皆さん、いかがお過ごしでしょうか。そろそろ秋の気配を感じ始める頃でしょうか。先日、カイロデーにZoomセミナーをさせていただき、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。カイロジャーナルの斎藤氏からこのオファーをいただいたとき、もちろん躊躇なく快諾させていただきました。そして、斎藤氏にテーマは「カイロプラクティックを信じる力」にしますとすぐにお伝えしました。それは、多くのカイロプラクターにとって必要なテーマだと思っていたからでした。

 

知らず知らずのうちに

そして、セミナーのために思考を巡らせ構想を練って準備しているうちに、自分自身が「カイロプラクティックを信じる力」というテーマに触発されて、内側から沸々と湧き上がるような熱い感情に感化されていきました。私が最もこのテーマを必要としていたのではないかとさえ思えるほどでした。

長引くパンデミックによって、知らないうちに私の心も薄暗い闇に包まれていたのです。怖ろしいのは、自分自身がそのことに気がついていなかったり、パンデミックを容易に「やらない」理由や言い訳にしてしまう習慣がついていたことです。

 

30年ぶりの国家試験

そのことを念頭に改めてカイロプラクティック界を見回すと、意識しない間に多くのことが稀薄になってしまっているのではないか、ということに気がつきました。その一つが、新しい知識の吸収や忘れかけている知識のブラッシュアップです。私は今年、なんと30年ぶりにアメリカのカイロ国家試験であるナショナルボードのパート3とSPECという二つの試験を受験しました。

30年前、カリフォルニア州には独自の超難関のステートボードという開業試験があり、その代わりナショナルボードはパート2までしか必要ありませんでした。パート3なんかより州の開業テストの方がよっぽど難しかったからです。とは言え、ナショナルボードもかなり難しいですけど。

30年ぶりに検査、レントゲン、テクニック、病理など、学生時代に勉強したすべてを深く勉強し直さなければならないことは、本当に大変でした。でも、すごく自分のためになりました。同時に思ったことは、普段は好きなこと、興味があることにしか目を向けなくなってしまい、知識の幅が狭くなってしまっていることにさえ、気づいていない自分がいるということです。きっと私のような方がほとんどではないでしょうか。そういった知識を吸収することへの意識や意欲が稀薄になっているのです。

 

成長の可能性の芽を自ら摘むな

アジャストメント・テクニック面でも同様です。誰もが経験を積んで自分なりに工夫を凝らし、それなりのアジャストメントができるようにはなってきます。しかし、自分より優れた先生のアジャストメントを見ると、少なからず学ぶべきことがあるものです。自分は十分な技術があり、患者の治療に不自由してないからいいんだ、と思い込んでしまうことはとても危険で、成長の可能性の芽を自ら摘んでしまっています。

アジャストメント・テクニックの上達には、もうここでいいということはなく、少しでも上を目指し続けるべきです。セミナーや勉強会で学ぶことをやめてはいけません。誰でもテクニックを学ぶ熱い気持ちを持っていたはずです。その気持ちがいつの間にか稀薄になってしまっているのです。いつまでも熱い気持ちを持ち続けて技を極めてほしいと思います。

 

自分一人の殻に閉じこもらずに

日本の業界では、カイロは法制化されていないのでライセンス更新に必要なセミナー受講時間などもありません。別に卒後教育を受けなくても、誰にも咎められません。もう何年もセミナーを受講していない方もいるかもしれませんが、それは本来許されるべきではないし、何より自分の成長の機会を逃してしまっている悲しい状況です。

また、決まった先生のセミナーや所属団体主催のセミナーにしか参加しないのも考えものです。どうしても偏った知識や考え方になる可能性があるからです。日本でもいくつかの団体が、多様なセミナーを開催していますので、積極的にバランス良くセミナーを受講して欲しいと思います。

勉強やテクニックの練習への意欲が減退すれば、業界内の仲間との関係も稀薄になっていくものです。その結果、刺激がなくなり余計に意欲が減退するという悪循環に陥るだけでなく、困ったときに悩みを気軽に相談できる仲間の存在をも失って苦しむことになります。仲間と話をするだけで容易に解決できた問題が、自分一人の殻の中では、膿のようにどんどん膨れ上がって、どうしようもない状態になるまで悪化させてしまうこともあります。

それに何より楽しくありません。たとえ私生活では家族や友人に恵まれていても、業界の中で孤独では良くありません。私生活でも仕事の面でも豊かな人間関係は何よりの財産であるということを忘れてはいけません。

 

良き家族、仲間、アドバイス、熱き想いを取り戻そう

私は幸いにも良き家族に恵まれ、業界でも多くの仲間と交流があり、斎藤氏のような素晴らしきアドバイザーもいてくれます。なんと幸せなことでしょう。これからも、日々の診療を一生懸命頑張ることはもちろん、新しい知識を吸収し、少しでも優れたカイロプラクティック・アジャストメントの技を培い、多くの人を幸せにできるように心がけていきたいと思います。

そして、セミナーや勉強会を通して素晴らしい仲間を増やしていきたいと思っています。皆さんは、どうですか? いろいろなことが稀薄になっていませんか? もう一度厳しく自分を省みて、熱き想いを取り戻してみてはいかがでしょうか。きっと、もっと楽しく充実した日々になることと思います。そんな元気な皆さんとパンデミックが終わってお会いできる日を楽しみにしています。


岡井健(おかい たけし)DC
1964年7月4日、東京生まれ。福岡育ち(出身はこちらと答えている)。
福岡西陵高校を卒業後、1984年単身アメリカ、ボストンに語学留学。その後、マサチューセッツ州立大学在学中にカイロプラクティックに出会い、ロサンジェルス・カレッジ・オブ・カイロプラクティック(LACC)に入学、1991年に同校をストレートで卒業する。
在学中はLACCでのディバーシファイド・テクニックに加え、ガンステッド、AK、SOTと幅広いテクニックを積極的に学ぶ。
1992年、カリフォルニア州開業試験を優等で合格。1991年から1995年まで、カリフォルニア州ガーデナの上村DC(パーマー大学出身)のクリニックで、アソシエート・ドクターとして勤務した後、サンフランシスコ空港近郊のサンマテオにて開業。2001年にはシリコンバレーの中心地、サンノゼにもクリニックを開業し、サンフランシスコ・ラジオ毎日での健康相談や地方紙でのコラム連載でも活躍。
2022年8月に27年間経営したカリフォルニアのクリニックを無償譲渡し、2022年9月よりハワイ島コナに新たにクリニックを開業。庭仕事、シュノーケリング、ゴルフを楽しんでいる。
また、積極的に留学中の学生たちの面倒を見、その学生たちの帰国を皮切りに日本での活動を始める。科学新聞社(斎藤)との縁は、2005年に出版した「チキンスープ・シリーズ カイロプラクティックのこころ」の監訳に始まり、以降15年以上にわたって出版物、マイプラクティス・セミナ、カイロ-ジャーナル記念イベントなど、またカイロプラクティック・クラブとして「ソウルナイト」(スタート時はフィロソフィーナイト)など、ありとあらゆる場面で協力関係にある。

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