中川貴雄の「四肢のマニピュレーション‐臨床のコツ‐」

中川貴雄《著》「四肢のマニピュレーション」が出版されましたのが約1年半前。時を同じくしてコロナ禍が始まり、対面でのセミナー開催が難しい状況が続いております。
私たちはこの状況下だからこそ、皆さまの日々の臨床に役立つ何かを提供していきたいと考え、中川先生にホームページへの執筆をお願いいたしましたところ、先生からも「せっかく昨年出していただいたのに、皆さんにそれを解説する機会をなかなか持てないので」とおっしゃっていただき、今回掲載することができました。
これに合わせましてSHOP of SCIENCE NEWS では、『New HP開設フェア第1弾』を開催いたします。
これまで科学新聞社より出版されました、中川貴雄《著》の書籍を特別価格でご提供いたします。ぜひこの機会に、中川先生の知識、技術に触れてみてはいかがでしょうか。

中川貴雄の「四肢のマニピュレーション‐臨床のコツ‐」

昨年2月、四肢関節のための治療法として「四肢のマニピュレーション」を出版させていただきました。

テクニックの本は、読んだだけではなかなかわかりにくいことが多いものです。そのため、この本のテクニックを使った関節障害治療の勉強会を始めようと予定していたのですが、コロナ禍のために、それもできなくなってしまいました。
勉強会も思うようにできない昨今、読んだだけでは、なかなか応用の難しいテクニックの本を少しでも使えるようになっていただきたいと思い、カイロジャーナルをお借りして、各テクニックの応用法やコツなどを解説していきたいと考えました。

今回は、肩甲上腕関節の後方モビリゼーションを取り上げてみたいと思います。

肩甲上腕関節 後方モビリゼーション(四肢のマニピュレーションP55)

肩関節後方MP(P20-21)
肩関節後方MOB(P55)

1.肩甲上腕関節 後方モーション・パルペーションと治療(モビリゼーション)の特徴

検査法であるモーション・パルペーション(左)と、その治療法であるモビリゼーション(右)の写真を見比べると、ほとんど形が同じです。
実をいうと、この治療法(右)はモーション・パルペーション(左)の応用なのです。
ということは、モーション・パルペーションができれば、時間差なく検査と治療が同時にできるということになります。モーション・パルペーションで後方に硬く感じる方向(フィクセーション)を見つけ、そのまま硬く感じる方向(後方)にやさしく、痛みのない押圧を断続的に加えることで治療を行います。コンタクトも固定も変えることなく、検査から治療が一つの動作でできるのです。

検査から治療への一連の操作を解説すれば、まず、モーション・パルペーションとして上腕骨頭前面に後方への押圧をかけていきます。そこに硬さを感じれば、その硬さがフィクセーションです。治療は検査と同じ形のまま、フィクセーションに押圧をかけることを断続的に行います。硬く感じた部位が柔らかくなれば治療は終了です。ここでもう一度、モーション・パルペーションを行い、フィクセーションが消えたかどうか、効果を再確認します。

これは、治療法としてモビリゼーションがしっかりできるようになれば、検査としてのモーション・パルペーションもできるようになるということです。

検査と治療が異なると、検査後、いったん手を外し、もう一度、異なる治療法のためのコンタクトをやり直すことになります。このタイムラグが、治療におけるコンタクトのブレと、それによる治療効果低下を引きおこしてしまいます。

検査と治療は、できるだけ同じ形であることが最良の治療法なのです。

2.肩甲上腕関節の柔軟性は他の関節より非常に大きいことに留意する

肩甲上腕関節に治療を行うとき、大きな問題があります。
肩甲上腕関節は可動域と可動性が非常に大きな関節なのです。柔軟性が大きいためグラグラとした関節であり、それが正常なのです。肩が膝関節のように動きが一方向で硬ければ、手をあちこちに動かすこともできません。

肩甲上腕関節がグラグラと動きすぎてしまうため、「このくらいでいいかな?」などと、いい加減なところでモーション・パルペーションを行うと何が悪いのかわかりません。わからないままモビリゼーションを行うと効果が出ません。グラグラしている関節をグラグラと治療を行っても、何の効果も望めないのです。

3. 肩甲上腕関節 後方モーション・パルペーションとモビリゼーションの手順

この可動域の大きな肩甲上腕関節に対する検査と治療のコツは、肩甲上腕関節のゆるみをどれだけうまく除いた状態で検査と治療を行うかということになります。検査と治療は一連の流れの中で行うのが理想的です。

その操作は①、②、③を連続して行います。①は肩甲上腕関節の緩みを除く方法、②はモーション・パルペーション、③がモビリゼーションです。④、⑤、⑥はそのときに起こる現象の解説です。

① 関節のゆるみを除くために重要なことは、写真のように、術者の右手と体重によって患者の右肩をテーブルにつけておくこと、左手で持っている肘が術者の右膝の上で固定されているということです。これが基本肢位で、これを動かしてはなりません。このとき患者は何の痛みも違和感も感じないことが重要です。
肩甲上腕関節の緩みを除きます。操作は、術者の身体を僅かに持ち上げ、術者の体重を上腕骨上端にかけていきます。この操作で肩甲上腕関節の後方への緩みを除きます。このとき肩のグラグラ感がなくなり、肩に “カチッ” とした硬さが感じられればOKです。

② 次が、モーション・パルペーションです。この操作で、右手にフィクセーションが大きく感じられれば、治療が必要です。弾力性が感じられれば正常であり治療の必要はありません。

③ フィクセーションの治療は、フィクセーションが感じられたところから始まります。ここから、フィクセーションが最も大きく感じられる方向に身体を使ってもう少し押圧を加えます。体重をかけるのは1〜2cmくらいの深さです。患者が苦痛や痛みを訴えれば、押圧し過ぎです。まだグラグラしていれば押圧が足りません。
押圧は、押したり引いたりしてはいけません。押すだけです。「押す」「押す」「押す」というように1〜2cm、10回程度、押圧をかけます。

④ 押圧が適切であれば、フィクセーションがだんだん柔らかくなってきます。“フゥー”と、フィクセーションが柔らかくなり、硬さが後方に遠ざかって行くように感じたら治療は終了です。
このときも患者が違和感や痛みを感じてはなりません。

⑤ モビリゼーションによって硬さが変わらなければ、肩甲上腕関節にモビリゼーションの効果が得にくい異常があるか、フィクセーションが大きすぎるか、何回か続けて治療が必要か、術者の操作が適切ではないかなどが考えられます。

⑥ 何度治療しても効果が持続しない場合、すぐに効果が元に戻ってしまう場合は、他の部位から肩甲上腕関節に二次的に症状があらわれている可能性もあるため注意が必要です。

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