徒手療法の世界に身を置いて
第41回「触診」

 徒手療法において触診技術は必須の技術です。
 

皮膚の受容器

 皮膚の受容器には5つの、それぞれ異なる情報やその特性を感知するセンサーがあります。この中で、触診で先ず活用したいのがメルケル盤です。小さな圧や凸凹、また物体の角などなどに良く反応する受容体がメルケル盤です。これらの情報は、術者が患者さんの状態を知るために必要なものばかりで、これを触診に使わない手はありません。メルケル盤は指腹や口唇に多く存在しますが、その中でも特に指腹の中央部に、指尖部よりも密集しています。これはご自身でも確認できると思います。
 

指紋の役割

 指先での感覚情報を伝えるためには、刺激を電気信号に変える必要があります。この役割をしているのが指紋です。物を触ったときに指紋が振動し、その振動が電気信号に変換され脳に伝わります。また触るスピードや凹凸の大きさ(高さや直径)にも左右されることがわかっています。例えばタオルの両端を持って、ゆっくり、または素早く動かした場合、どちらの方がタオルはなびくのか、ということです。
 

メルケル盤は順応が遅く、動かしてなくても発火

 メルケル盤は一度発火すると、順応が遅く慣れがなくなります。このため、手を動かすのを止めても、ある程度の時間は発火が続きます。これは触診する上で、慣れがないのは必要で、慣れが早いと常に動かし続けなければならないからです。

 このように、徒手療法家が触診時にメルケル盤を使用することは、非常にメリットが大きい。メルケル盤を上手く使うコツは、軽く触る(小さな圧力)、ある程度のスピード(なでる程度)で動かす、指腹中央部(指紋が集まっているところ)を使うのがベストと言えるでしょう。

 触診の苦手な先生は、ぜひ参考にしていただき実践してみてください。
 


辻本 善光(つじもと・よしみつ)

現在、辻本カイロプラクティックオフィス(和歌山市)で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

 


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