カイロプラクティック動態学  上巻

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カイロプラクティック動態学  上巻

モーション・パルぺーションとカイロプラクティック・テクニックの原理

商品概要
ジレーの功績と言えば、サブラクセーションの概念を変えたことを第一に挙げたい。「椎骨サブラクセーション」が定説であった時代に、「椎骨」から「モーターユニット」での可動に焦点を当てたジレーの「関節フィクセーション」の概念は、カイロプラクティックのパラダイムを変えた、と言ってもよい。

著者R.C.Schafer D.C./ L.J.Faye D.C. 判型B5判/312頁 訳者守屋 靖大 監訳者守屋 徹/馬場 信年 発行者科学新聞社 発行年2003年
主な内容動態学的カイロプラクティック・パラダイム序論
(動態学的カイロプラクティック・アプロ-チの概論/脊椎関節の正常な動き/フィクセーションのさまざまな種類/重要な生理学 および生体力学的メカニズム/関節疾患と関節機能不全の鑑別/近代サブラクセーション複合体パラダイムの実際/適切な生体力学的用語/カイロプラクティック.アジャストメント・テクニックの基本)
動的カイロプラクティックの基本的臨床アプローチ
(動的な臨床プロトコル概要/触診一般的考察/レントゲン分析/衛生学と身体的健康)
頚椎
(応用解剖学考察/生体力学的考察/診断学/治療法)
胸椎
(基本的考察/診断における考察/治療法/結語)
本書の特徴
◆関節の動きの異常を、単に運動力学のみでとらえるのではなく、神経学、組織学(筋肉、結合組織、血管、炎症反応)、生化学などさまざまな要因を持つサブラクセーション複合体としてとらえ、検査し、診断する方法を紹介している。
◆サブラクセーション複合体、フィクセーション、関節の遊びなど、モーション・パルぺーションとカイロプラクティック動態学を理解するのに欠かせない概念を詳しく論じている。
◆問診、パルぺーションの方法の総合的解説、関節の痛みの種類と鑑別診断の方法など、今すぐ役立つ臨床知識が満載。
◆上半身(頚椎、胸椎)の応用解剖学、生体力学、パルぺーションの行い方、診断、治療の方法を詳しく解説。

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訳者のことば
守屋 徹
「臨床的な身体現象に対する鋭い考察」
カイロプラクティックのパラダイムを変えたモーション・パルペーションとテクニックの原理
■カイロプラクティックの検査法とテクニックを変えた概念
フェイDCとシェーファーDCの共著として1989年に出版された「Motion Palpation and Chiropractic Technic」は、身体あるいは関節における可動の原理に言及した名著である。90年には第二版が刊行された。「カイロプラクティック動態学」は、その翻訳書である。監訳者として書名に「動態学」と冠したのは、臨床的な身体現象における動きの原理とその機能を探究し続けた成果が、全編に貫かれていたからに他ならない。
この本は、H・J・ジレーDCの功績なしには生まれなかった。ジレーは1928年にパーマー大学を卒業後、ベルギーで開業している。そして48年間の臨床と調査研究を成就させて、ヨーロッパのカイロプラクティック界はもとより世界のカイロプラクティックの発展に多大な業績を残したのである。また著作活動を通じて、ベルギー国家や州の定期刊行物、ヨーロッパおよび諸外国のジャーナルにも40年にわたって調査結果を発表し続けてきた。そんな業績が、この本には凝縮されている。
ジレーの功績と言えば、サブラクセーションの概念を変えたことを第一に挙げたい。「椎骨サブラクセーション」が定説であった時代に、「椎骨」から「モーターユニット」での可動に焦点を当てたジレーの「関節フィクセーション」の概念は、カイロプラクティックのパラダイムを変えた、と言ってもよい。
そこからモーション・パルペーションの検査法とテクニックが生まれた。今では当たり前の概念も、ジレーの時代は「位置のずれた骨」という静的概念でしかなかったのである。「骨はサブラクセーションを起こさない」のであり、「椎骨の可動ユニット」の解析とその機能に関するジレーらの研究テーマは、今日のカイロプラクティック治療の方向を示した調査でもあった。
日本に初めてモーション・パルペーションを紹介したのは中川貴雄DCである。1985年には、「脊柱モーション・パルペーション」(科学新聞社刊)を発表している。私も中川先生の著作等に学んできた一人であるが、こうした労作もジレーら先達がもたらした研究調査の延長線上に発展した方法論と言ってもよいだろう。言うまでもなく、ジレーの発想も唐突と生まれたものではなかった。サブラクセーションに科学の光を与えようと努力してきたカイロプラクティックの先達たちが、研鑽し見据えた先をジレーらが捉えた結果ではなかったろうか。
こうして、ひとつのエピソードからその学問的系譜を辿ると、歴史的な発表も唐突と出現したものではなく、脈々と続く研究と意思の連続を感じることができる。この本の第一章と第二章には、臨床の現場で悩みながらも身体現象を解析し、新たな概念を確立しようとしたジレーらの努力の跡を読み取ることができる。
■臨床的身体現象の解析と治療法
第三章以下には、頚椎、胸椎、腰椎、骨盤、四肢関節と、各部位ごとに章を割いて動態学的な解析とアプローチが述べられている(腰椎以下は下巻に収録)。動態学的解析とは、モーターユニットにおける可動状態の診かたであるが、そこには少なくとも五つの障害タイプからの解析が考慮されている。
一つは神経病態生理学で、刺激による促痛の状態、圧力による変性がもたらす神経生理学的変化、軸索流の減少を診ること。二つ目は運動病理学で、可動性の減少あるいは過剰、関節の遊びの減少、代償性の動き、運動軸の変化を診ること。三つ目は筋病理学で、スパズムとアトニーを診ること。四つ目は組織病理学で、炎症過程や椎間孔内の浮腫を診ること。五つ目は生化学的変化を診ること。以上の視点から動態を捉えることで、サブラクセーションを「複合体」としたジレーらの主張を裏付けるように、解析と考察が展開していく。
その治療のアプローチも多岐に及んでいる。局所の可動テクニックから反射テクニック、エクササイズ、ダイエット・サプリメント、職業的アドバイス等など。著者らは、各部位での予測できる疾患や病態を踏まえて、症候学から鑑別診断、その検査法や治療法の選択まで、自らの考察を披瀝しながら述べている。
そして臨床上のアドバイスも織り交ぜて、治療家にとって必要な情報を懇切丁寧に提供している。例えば、補助手段としてのクライオセラピーと温熱刺激の生理作用や用途についても、詳細に比較している。こうした情報は、一見して分かるように多くの表にまとめられているから、うれしい限りだ。また初診から来院ごとに、ジレーが臨床で行った方法の紹介もあれば、フェイの臨床上のアドバイスもコラムで登場する。治療と診断を行う上で不可欠の応用解剖学や生体力学的分析も、微に入り細にわたって解説されている。テクニックについても、写真付の解説で分かりやすい。
読者はこの本を通じて、あらゆる側面から臨床で見られる身体現象の本質を理解することだろう。カイロプラクティックの臨床家はもとより、動態学に関する基本的な知識から応用まで、徒手医学のテキストとしてもお薦めしたい。臨床家としては座右に置いて参考にしたい本でもある。

守屋 徹(もりや とおる)

  • 山形県酒田市出身
  • 守屋カイロプラクティック・オフィス酒田 院長
  • 日本カイロプラクティック徒手医学会・理事(学会誌編集長)
  • 痛みの理学療法研究会・会員
  • 日本カイロプラクティック師協会(JSC)・会員
  • マニュアルメディスン研究会・会員
  • 脳医学BASE研究会・副会

    「カイロプラクティック動態学・上下巻」監訳(科学新聞社刊)、その他あり。

    「脳‐身体‐心」の治療室(守屋カイロプラクティック・オフィス) ブログ

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