四肢のモーション・パルペーション(上巻)

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四肢のモーション・パルペーション(上巻)

四肢関節障害のための基本的検査および診断法

著者中川 貴雄D.C. 判型B5判/264頁 発行者科学新聞社
本書の特徴
「モーション・パルペーション」という言葉を聞くと、まず「脊柱」を考えることだろう。すでに、中川貴雄D.C.著「脊柱のモーション・パルペーション」として出版され、現在までロングセラーを続け、可動性検査法の標準となっている。

その続編として、「四肢のモーション・パルペーション上下巻」が出版された。続編出版の理由としては、現在のカイロプラクティックの考えが脊柱だけに焦点を置いたものではなく、身体全体を治療の対象としており、脊柱とともに、四肢、顎関節、頭蓋骨、筋肉、栄養などに対する治療法も含まれていることが挙げられる。

本書(上巻)では、下肢のモーション・パルペーションについて解説している。

上肢、下肢のモーション・パルペーションは、カイロプラクティック検査法の中では比較的新しい検査法である。それまでは、スタティック・パルペーション(静的な検査法)が主流であった。X線検査や整形学検査、神経学検査によって四肢の病変の有無を検査し、その結果、カイロプラクティックによって四肢を治療することが適切と考えられていた。

しかし、スタティック・パルペーションだけでは正確なカイロプラクティック診断は不可能であることが分かってきた。スタティック・パルペーションだけでは、患者が痛みや圧痛を訴えている部位を、正確に検査し、診断し、アジャストメントを行うことができないのである。

回旋サブラクセーション、屈曲サブラクセーション、伸展サブラクセーション、側屈サブラクセーション、あるいは、それらの複合サブラクセーションなどというような、四肢の関節に起こるサブラクセーションを細かく分析することはスタティック・パルペーションでは不可能である。そこで研究が進み、用いられるようになったのがモーション・パルペーション(動的な検査法)である。

四肢の関節運動には

自分の意志で動かすことができる自動運動域
自分の意志では動かすことができないが、他動的には動かすことができる自動運動域を越えた関節の可動域
がある。
この自動運動域を越え、自分では動かすことのできない関節の可動域での運動を“関節の遊び運動”(joint play ジョイント・プレイ)と呼び、“関節の遊び”運動の異常を検出することを目的としたのがモーション・パルペーションである。

この“関節の遊び”が制限されると、自動運動までもが難しくなってしまう。整形学検査、神経学検査、臨床検査、X線検査などのスタティック・パルペーションでは何の異常も認められないのに、患者が異常を訴える場合、この関節の遊び運動の制限が原因であることが多い。

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著者のことば
早いもので『脊柱モーション・パルペーション』が出版されてから 15年が経ってしまった。その間、四肢のモーション・パルペーションを書かなければと思いながら、なかなか取りかかることができなかった。それが一昨年、昨年と科学新聞社主催の私のセミナーで、「下肢の診断と治療」「上肢の診断と治療」をテーマに講義させていただいたことをきっかけに、四肢関節障害のための基本的検査および診断法である『四肢のモーション・パルペーション』をまとめることができた。

この『四肢のモーション・パルペーション』は下肢編と上肢編の上・下二巻にさせていただいた。一冊の本にまとめるにはあまりに検査の数が多く、それではモーション・パルペーションを勉強される方の負担になるのではないかと考えたからである。

カイロプラクティックには多くの四肢のテクニックがある。しかし残念なことに、これらのテクニックを使うための適切な検査法、診断法がなかったのである。

理学検査のための整形学検査、神経学検査、X線検査は、四肢の病変を検査および診断するためには非常に有効であるが、カイロプラクティックの四肢のテクニックを用いるための検査法および診断法としては役に立たない。

脊柱で用いられることの多いカイロプラクティックX線診断法も四肢には応用されていない。これまで最も多く使われたのは一般に行われている触診、いわゆるスタティック・パルペーションであった。この触診で圧痛や関節の歪みを検査し、それに対して四肢のテクニックを使ったのである。

しかし、この検査法では四肢の関節のサブラクセーションを正確に診断できない。その結果として、カイロプラクティックにおける四肢のテクニックは正確でなく、あまり効果を上げることができず、脊柱のテクニックに比べると普及しなかった。

また、かつては脊柱を治療することによって四肢の異常を治すことが中心であったことも、四肢の検査法、診断法が普及しなかった一因であろう。

この欠点を補うために用いられるようになったのが四肢のモーション・パルペーションである。この方法を用いることによって、治療すべき部位はどこなのか、それはどの方向に治療すべきなのか、どのようなテクニックを用いればよいのか、治療効果はあったのかどうかというような、治療を行うために最も必要なことを検査し、診断することができるようになった。

本書は、四肢のテクニックは習ったが、そのテクニックを用いるための検査法、診断法で悩んでおられる方や、四肢に症状を訴えているにもかかわらず整形学検査や神経学検査では何の異常もない患者の治療に悩んでおられる方に、ぜひ読んでいただきたい本である。

『脊柱モーション・パルペーション』でも述べたように、本書の有効な使い方は、できるだけ四肢の関節に触れ、本書で述べられている各モーション・パルペーションを一つ一つ実際に実習し、身につけていただく以外にはない。

本書を学ぶことによって、多くの四肢のテクニックを学んだにもかかわらず、それを用いるための適切な診断法がないために、実際には使いこなせなかった方々に、より適切な診断の助けになれば幸いである。

本書まえがきより

<目次>
第1章 四肢の検査法
1.四肢のモーション・パルペーション
2.四肢の可動性検査法
3.四肢のモーション・パルペーションと他の検査法
1.四肢のモーション・パルペーション
2.他の検査法
(1)問診
1)主訴
2)現病歴
3)既往症
4)家族歴

(2)視診
(3)整形学検査
(4)神経学検査
(5)触診:スタティック・パルペーション
(6)X線検査
(7)脊柱検査

第2章 四肢のモーション・パルペーション概論
1.モーション・パルペーションによって検査できること
1.各関節の可動性 -関節の遊び運動-
2.可動性減少関節
3.可動性亢進関節
4.一次性サブラクセーションと二次性サブラクセーションの鑑別
5.筋硬縮によるサブラクセーション
6.サブラクセーションの種類(リスティング)
7.カイロプラクティック・アジャストメントの方向
8.カイロプラクティック治療効果の判定
9.カイロプラクティック治療の一つ(モービリゼーション)として用いるモーション・パルペーション

第3章 四肢のモーション・パルペーション各論
1.四肢のモーション・パルペーションにおける注意事項
2.股関節
1.股関節
2.股関節の運動
3.股関節のスタティック・パルペーション
4.股関節の可動性異常
股関節のモーション・パルペーション
1)大腿骨下方可動性検査(股関節長軸伸長検査)
2)大腿骨屈曲可動性検査(股関節屈曲検査法)
3)大腿骨伸展可動性検査(股関節伸展検査)
4)大腿骨内旋可動性検査(股関節内旋検査)
5)大腿骨外旋可動性検査(股関節外旋検査)
6)大腿骨内方可動性検査(股関節外転検査)
7)大腿骨外方可動性検査(股関節内転検査)
8)大腿骨下方可動性検査(股関節屈曲位)
9)大腿骨内旋可動性検査(股関節屈曲位)
10)大腿骨外旋可動性検査(股関節屈曲位)

3.膝関節
1.膝関節
2.膝関節の構成
3.膝関節の筋肉と自動運動
4.膝関節のスタティック・パルペーション
膝関節のモーション・パルペーション
(1)大腿脛骨関節
1) 長軸伸長検査(仰臥位)
2) 長軸伸長検査(腹臥位)
3) 前方可動性検査(膝関節屈曲位)
4) 後方可動性検査(膝関節屈曲位)
5) 前方可動性検査(膝関節伸展位)
6) 後方可動性検査(膝関節伸展位)
7) 外旋可動性検査(仰臥位)
8) 内旋可動性検査(仰臥位)
9) 外旋可動性検査(腹臥位)
10) 内旋可動性検査(腹臥位)
11) 外方可動性検査(仰臥位)
12) 内方可動性検査(仰臥位)
(2)膝蓋大腿関節
1) 上方可動性検査
2) 下方可動性検査
3) 内方可動性検査
4) 外方可動性検査

4.脛腓関節
1.脛腓関節
(1)近位脛腓関節(図 71)
(2)遠位脛腓関節(脛腓靭帯結合)(図 72)
2.スタティック・パルペーションによって検査することのできる所見
近位脛腓関節のモーション・パルペーション
1)腓骨後方可動性検査
2)腓骨前方可動性検査
3)腓骨上方可動性検査
4)腓骨下方可動性検査
遠位脛腓関節のモーション・パルペーション
1)脛骨後方可動性検査
2)脛骨前方可動性検査
3)腓骨後方可動性検査
4)腓骨前方可動性検査

5.足部の関節
1.足部の関節
2.足部のモーション・パルペーション
2-1.距腿関節のモーション・パルペーション
(1)距腿関節(いわゆる足関節)
(2)距腿関節スタティック・パルペーションのための触診部位
距腿関節のモーション・パルペーション
1)距腿関節長軸伸長検査(距骨下方可動性検査)
2)下腿前方可動性検査
3)下腿後方可動性検査
2-2.足根間関節のモーション・パルペーション
(1)足根間関節
(2)足根関節スタティック・パルペーションのための触診部位
足根間関節のモーション・パルペーション
〈1〉距骨下関節のモーション・パルペーション
1)距骨後方可動性検査(仰臥位)
2)距骨前方可動性検査(仰臥位)
3)距骨外方可動性検査(仰臥位)
4)距骨内方可動性検査(仰臥位)
5)距骨上方可動性検査(腹臥位)

〈2〉横足根関節(ショパール関節)のモーション・パルペーション
(1)踵骨のモーション・パルペーション
1)踵骨外方可動性検査(仰臥位)
2)踵骨内方可動性検査(仰臥位)
3)踵骨下方可動性検査(仰臥位)
4)踵骨外方可動性検査(腹臥位)
5)踵骨内方可動性検査(腹臥位)
6)踵骨上方可動性検査(腹臥位)
7)踵骨下方可動性検査(腹臥位)
(2)舟状骨のモーション・パルペーション
1)舟状骨外方可動性検査(仰臥位)
2)舟状骨内方可動性検査(仰臥位)
3)舟状骨下方可動性検査(仰臥位)
4)舟状骨上方可動性検査(腹臥位)

(3)立方骨のモーション・パルペーション

1)立方骨外方可動性検査(仰臥位)
2)立方骨内方可動性検査(仰臥位)
3)立方骨下方可動性検査(仰臥位)
4)立方骨上方可動性検査(腹臥位)

(4)楔状骨のモーション・パルペーション

1)内側楔状骨下方可動性検査(仰臥位)
2)内側楔状骨上方可動性検査(腹臥位)

2-3.足根中足関節のモーション・パルペーション
足根中足関節(リスフラン Lisfranc 関節)
足根中足関節(リスフラン関節)のモーション・パルペーション
1)全中足骨下方可動性検査(仰臥位)
2)全中足骨上方可動性検査(仰臥位)
3)全中足骨外旋可動性検査(仰臥位)
4)全中足骨内旋可動性検査(仰臥位)
5)第1中足骨下方可動性検査(仰臥位)
6)第1中足骨上方可動性検査(仰臥位)
7)第1中足骨外旋可動性検査(仰臥位)
8)第1中足骨内旋可動性検査(仰臥位)
9)第1中足骨内方可動性検査(仰臥位)
10)第1中足骨外方可動性検査(仰臥位)

2-4.中足間関節のモーション・パルペーション 中足間関節
中足間関節のモーション・パルペーション
1)第1中足骨下方可動性検査
2)第1中足骨上方可動性検査
3)第1中足骨外旋可動性検査
4)第1中足骨内旋可動性検査

2-5.中足指節関節と指節間関節のモーション・パルペーション
(1)中足指節関節
(2)指節間関節
中足指節関節と指節間関節のモーション・パルペーション

1)第1中足指節間関節長軸伸長検査
2)第1中足指節関節下方可動性検査
3)第1中足指節関節上方可動性検査
4)第1中足指節関節外旋可動性検査
5)第1中足指節関節内旋可動性検査
6)第1中足指節関節外方可動性検査
7)第1中足指節関節内方可動性検査

中川 貴雄(なかがわ たかお)
昭和23年2月、三重県鳥羽に生まれる。昭和53年、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのロサンゼルス・カイロプラクティック大学(LACC、現・南カリフォルニア健康科学大学SCUHS)卒業、ドクター・オブカイロプラクティック(D.C.)取得。カリフォルニア州開業試験合格。同地にてナカガワ・カイロプラクティック・オフィスを開業するかたわら、母校LACCで助手、講師を経て、昭和62年まで助教授としてテクニックの授業を受け持つ。その間、昭和56年には全米カイロプラクティック国家試験委員も務める。カリフォルニア州公認鍼灸師。平成11年、帰国。大阪にて中川カイロプラクティック・オフィス開業。
一般社団法人日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)前 会長
モーション・パルペーション研究会(MPSG) 会長
明治鍼灸大学(現 明治国際医療大学)保健医療学部 柔道整復学科教授
宝塚医療大学 柔道整復学科 教授

著書
脊柱モーション・パルペーション
カイロプラクティック・ノート1&2
四肢のモーションパルペーション上下
四肢のマニピュレーション
他 
訳書
関節の痛み
オステオパシー臨床マニュアル
オステオパシー・テクニック・マニュアル
カイロプラクティック・セラピー

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