カイロプラクティックを学んでいる方々へ、カイロプラクティックを学びきれていない方々へ、そして、 より優れたカイロプラクターを目指して日々研鑽している仲間たちへ。これは日々のカイロプラクティッ クの診療を支える基本テクニックを紹介する一冊です。
最初は、カイロプラクティック・テクニックの基礎、入門編となるものを書き始めましたが、下書き が仕上がってみると、ここで紹介するテクニックは現在でも自分自身が患者の治療に日々使っている 基本ベースとなっているものばかりであり、決して初心者向けに特化したものではないことに気がつき ました。それならば、この大切な治療の基本となるアジャストメント・テクニックをなるべくシンプル にわかり易い言葉で伝えようと思いました。
テクニックを学ぶ上で、最も基本的で大切なことに 「考え方」というものがあります。「考え方」を 知らないとつまずいた時に立ち上がれない、どうしていいかわからなくなります。そういう壁にぶつ かった時に「考え方」を知っていれば、原点に立ち戻って理論や基本からたどって考えていくことが でき、答えのヒントが見えてきます。あとは、それから試行錯誤していけばいいのです。自分で考え ることができるようになれば、必ず上達するはずです。答えは一つではありません。あなたには、あ なたの個性に合った答えがあるはずです。それを導き出せるように、随所にヒントや「考え方」を散 りばめて伝授したいと思います。
カイロプラクターは、カイロプラクティック・テクニックを学ぶ上で、施術者としての自分の体の使 い方をもっと研究するべきです。アジャストメントにおいては、患者の背骨の一部に適切な力を的確 な方向とスピードで与えることが、大切なポイントとなります。その力を与えるという作業は施術者 が行うわけで、思い通りに効率的にその力を患者に伝える工夫が必要になるのです。
また、施術者の力を受け取る患者の体の位置、角度、リラックス状態などが、施術者の力と絶妙 なハーモニーを生み出す時に、最も効率的、かつ効果的な結果が得られるのです。患者の体にはそ れぞれ特徴があり、全く同じ体は存在しません。同じ患者であっても、その日の体の状態は変化し ます。それにスムーズに対応するためには、「考える力」と経験がものを言います。
施術者と患者の体の位置関係によって、施術者の体の使い方は大きく変わるものです。より効果 的に適切に力を伝えるには、どのような位置関係で患者に向かい合い、どのような角度で腕や手、 指を使うかなどがポイントとなります。このように、 患者の体を知り、自分の体の使い方を知ることが、 テクニック上達のカギともなるのです。そのことを理解しないと、効果的に練習するこもできずにフラ ストレーションばかりがたまり、アジャストメントを諦めてしまうことにもつながりかねません。
ここでは、カイロプラクティック・テクニックを学び行う上での「考え方」を伝えることで、上達の 大きな障害にぶつかった時に、それを乗り越えられるようにということを念頭に構成しています。解 剖学やバイオメカニクスを含めた患者の体、そして施術者の自分の体の使い方、さらにその二つの ハーモニーを考えていきたいと思います。
カイロプロクターとして、患者をアジャストしていく上で、自分の治療を支えるバックボーンとなるしっ かりとしたテクニックの基本形を確立していくことは大切です。これから先、長年にわたってきっと頼 りになる武器となり、支えとなります。自分の基本形をしっかりと構築し、その技をマスターし、「考 え方」を持ち合わせていれば、幅広い応用力や適応力が得られ、自然と応用形や発展形のテクニッ クは生まれてきます。
カイロプラクティックのテクニックとは、一生をかけて学び続けるものです。より効果的で、より安 全で、より快適なものを目指して努力するのです。皆さんが高い知識、技術、倫理感を持ち、そし て愛情にあふれるカイロプラクターとして、多くの方の健康の役に立てるように成長し続けることがで きることを願います。
2018 年 6 月吉日 岡井 健
岡井健(おかい たけし)DC
福岡西陵高校を卒業後、1984年単身アメリカ、ボストンに語学留学。その後、マサチューセッツ州立大学在学中にカイロプラクティックに出会い、ロサンジェルス・カレッジ・オブ・カイロプラクティック(LACC)に入学、1991年に同校をストレートで卒業する。
1992年、カリフォルニア州開業試験を優等で合格。1991年から1995年まで、カリフォルニア州ガーデナの上村DC(パーマー大学出身)のクリニックで、アソシエート・ドクターとして勤務した後、サンフランシスコ空港近郊のサンマテオにて開業。2001年にはシリコンバレーの中心地、サンノゼにもクリニックを開業し、サンフランシスコ・ラジオ毎日での健康相談や地方紙でのコラム連載でも活躍。
また、積極的に留学中の学生たちの面倒を見、その学生たちの帰国を皮切りに日本での活動を始める。科学新聞社(斎藤)との縁は、2005年に出版した「チキンスープ・シリーズ カイロプラクティックのこころ」の監訳に始まり、以降15年以上にわたって出版物、マイプラクティス・セミナ、カイロ-ジャーナル記念イベントなど、またカイロプラクティック・クラブとして「ソウルナイト」(スタート時はフィロソフィーナイト)など、ありとあらゆる場面で協力関係にある。