カイロプラクターのための栄養学
第3回 食物アレルギー

Tさんは30代の男性で、小さい頃から皮膚炎に悩まされていました。ステロイドの軟膏と抗ヒスタミン剤は、過去25年以上にわたって使い続けていました。彼の食生活を詳しく窺ってみると、パン、麺類、乳製品が大好物で、小麦製品と乳製品は、毎日必ず何らか摂取している状態でした。

 

私どものクリニックでは、アレルギー体質の患者さんには、アレルギー反応を起こしやすい小麦や乳製品などの食べ物を食生活から除去する、除去食をお勧めしています。彼にも迷わずお勧めしましたが、大好物をすべて止めるのはハードルが高すぎると、なかなか実行することができませんでした。しかし、仕事のストレスも重なって、肌の状態が酷くなったときに、とうとう決意し、まずは3週間の除去食デトックスを行うことにしました。

肌の状態が改善し始めたのは、始めて1週間を過ぎた頃からでした。3週間後にはすっかり痒みや赤みが取れ、ブツブツした吹き出物のようなものも出なくなりました。彼が特にアレルギー反応を示していたのは小麦でした。除去食を終えた後も、極力小麦や乳製品を避けていたのですが、仕事上の接待で食べたものの中に小麦が混じっていて、以前と同じ症状が戻って来たことでわかりました。彼は依然アトピー性皮膚炎と診断され、本人もそう思い込んでいましたが、実は小麦グルテン・アレルギーによる疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis)だったのです。

彼のように、普段から気づかずに食べている物でアレルギー反応を起こすことは、決して珍しいことではなく、それは大きなケミカル/栄養的ストレスを抱え込む原因となります。体が受け付けない物質を毎日のように摂取することは、消化器系、免疫系、解毒系臓器に多大な負担をかけてしまうのです。彼の肌が赤く炎症を起こしていたことは、体が示す警告サインであり、何が原因で起きているのかを突き止めることは、肌の問題を改善するためだけではなく、体全体のストレス軽減をするためには、大変重要なことなのです。

食物アレルギーは、食後すぐに症状が現れるものであれば、本人または親御さんたちが容易に気づくことができます。例えば、ナッツを食べてすぐ喉が痒くなったりすれば、ナッツに反応していることが一目瞭然でわかります。このようなタイプのアレルギーを、即時型アレルギーと言います。一方で、3、4日、または1週間後に反応が出るようなものであれば、なかなか因果関係をつかむことができません。このようなタイプのものを遅延型アレルギーと呼び、気づかず食べ続けている可能性が高いのが、これです。

小麦グルテン

アメリカではグルテンに関する意識が、過去15年ほどで急速に高まってきています。巷のスーパーマーケットでは、グルテンを含まない食材の特別コーナーが設けられるようになり、グルテン・フリー(グルテンを含まない)と書かれた食品を頻繁に見かけるようになりました。
その理由は、グルテンに対してアレルギー反応を起こす人が急増しているからなのです。

グルテンはラテン語で《接着剤》と言う意味です。グルテン成分は麦類の植物の多くに含まれており、小麦に水を混ぜるとネバネバした感じになるのは、このグルテンによるものです。
日本においても、小麦に関する情報や意識は年々高まってきています。一方で、小麦製品はパン、パスタ、デザート類、麺類、天ぷら、お好み焼きなどの主原料であり、みんなの大好物であり、現代日本食は小麦なしでは考えられません。

アメリカの典型的な食事は、日本食以上に小麦が使用されています。ハンバーガー、ピザ、パスタなどは、アメリカ人にとって最も頻繁に食されているものと言って間違いありません。そのような中で、グルテン・フリー文化が社会に浸透してきているのには理由があります。今アメリカにおいて、小麦製品を摂取することによって、如実に健康が害されることを経験し、その状態から逃れるために、たとえ大好物であったとしても、避けざるを得ない状況に追いやられている人が急増しているからなのです。

人によっては、呼吸困難に陥ったり、鬱症状が出たり、肌の状態が急激に悪化したり、下痢や腹痛に襲われたり、症状は多種多様です。さらに、体の痛みや、不快感で、ただもう年だからと諦めているような症状、頭痛や肌の問題、慢性の消化の問題など、自分の体質だからと放置しているような問題などから、リュウマチや橋本病などの自己免疫疾患も、小麦グルテンとの関わりが深いことが今急速に理解されつつあります。

今ある症状と大好物の小麦製品を天秤にかけたときに、あのラーメンを止めるくらいなら、少しぐらいの肌の問題は我慢できると思っている方もいるかもしれませんが、目に見えていたり、感じられる症状は、氷山の一角に過ぎないかもしれません。

小麦に関する問題は、人によって問題の度合いは様々で、完全に除去しなければ症状からの開放されない場合もありますし、単に量を減少させることによって、快適な生活が送ることが可能な場合もあります。またほとんど何も影響を受けない人もいます。非常に個人差がある問題ではありますが、小麦によってどれほど影響を受けているかを理解できれば、食材を選ぶときに、より的確な判断ができるようになると思います。

カイロプラクティック・コネクション

食物に対する反応で、体の様々な部分に炎症が起きていることは珍しくありません。私どものクリニックでは、年に2回(春と秋)に3週間の除去食デトックスをお勧めしています。小麦、乳製品、レクチン、砂糖などを数週間除去することで、これまで何度施術しても改善しなかった問題が、嘘のように消失するケースは多々あります。

2018年に行ったデトックスの説明会動画のリンクです。参考にしてください。

https://www.youtube.com/watch?v=vlfsCBm5dkI


和泉宏典(いずみひろのり)DC

  • 1970年 京都府宇治市出身
  • 1992年 同志社大学卒業
  • 1999年 University of Georgia卒業
  • 2003年 Life University卒業、ジョージア州アトランタにて開業
  • 2010年 ニューヨーク州マンハッタン郊外にてIzumi Family Chiropractic and Wellnessをオープン
  • 2021年 フロリダ州に移住
資格
ドクターオブカイロプラクティック
ダイジェスティヴヘルススペシャリスト(Food Enzyme Instituteの認定医)

Dr. Izumiの人となりを詳しく知りたい方は以下のリンクをどうぞ
https://www.izumiwellness.net/about-dr-izumi.html


終了したセミナー

『カイロプラクターのための栄養学』Web第Ⅶ期「脳の健康」

『カイロプラクターのための栄養学』Web第Ⅶ期「脳の健康」  (izumi_Nutrition_Ⅶ) 定価¥15,400販売価格¥15,400在庫状態 : 売り切れ※こちらのセミナーは終了いたしました 日時 5月22日(日)、6月5日(日)、19日(日)、7月3日(日) 全4回 8:00~10:0...
コメントなし

『カイロプラクターのための栄養学』第Ⅴ期「触診と視診でわかる患者の健康状態」動画配信

『カイロプラクターのための栄養学』第Ⅴ期「触診と視診でわかる患者の健康状態」動画配信  (izumi_Nutrition_202110) 定価¥15,400販売価格¥15,400在庫状態 : 売り切れ動画配信開始日時:2021年11月29日(月)10:00 動画配信終了日時:2022年 1月 6日...
コメントなし

『カイロプラクターのための栄養学』Web第Ⅵ期「栄養学における美容とアンチエイジング(抗加齢)」

『カイロプラクターのための栄養学』Web第Ⅵ期「栄養学における美容とアンチエイジング(抗加齢)」  (izumi_Nutrition_Ⅵ) 定価¥15,400販売価格¥15,400在庫状態 : 売り切れ※こちらのセミナーは終了いたしました。動画視聴ご希望の方は、Webセミナー事務局 sci-pub...
コメントなし


和泉宏典に関する記事一覧

第2回カイロプラクティック・フェスティバル
「TIME & SPACE 時空をともに」を終えて

 今月13日、14日に開催した、第2回カイロプラクティック・フェスティバル「TIME & SPACE 時空をともに」を終えて、今後このイベントを毎年恒例のものとするため、今回を振り返り数回にわたって連載させていただくことにした。まず今回、開催に至った経緯を紹介させていただく。本サイトでコラムを連載中...
コメントなし

第2回 カイロプラクティック・フェスティバル
『TIME&SPACE』に寄せて 木村 功

 10月13日(日)、14日(祝)の両日に行われた第2回 カイロプラクティック・フェスティバル2024 『TIME&SPACE 時空をともに』 に参加した。今回はその感想を書いておきたいと思う。このイベントは、科学新聞社カイロ事業55年、カイロジャーナル35年、第1回から15年の節目に行われたが、主催者の斎...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』
その9 神経学を学び続ける 丸山正好氏

 今回のスピーカーの中に、もう一人「呼び捨てで」という男がいる。丸山である。先に紹介した辻本は、講師紹介で先生、さんと呼んでも、それはそれと軽く流してくれるが、丸山は即座に「やめてくださいよ、いつも通りに呼んでくださいよ」と言葉を挟んでくる。お陰で「あれっ、これから何を話そうとしてたんだっけな?」と忘れてし...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』
その8 JSCC最後の会長 小倉毅氏

 小倉氏と初めてお会いしたのは、もう30年以上も前のことである。1993年に業界の法人・法制化を目指し糾合したカイロ連(日本カイロプラクティック連絡協議会)が、設立準備のための会議を盛んに開いているときだった。AJCA(全国カイロプラクティック師会)という団体から、三十歳そこそこの若さで出席していた。と言っ...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』
その7 スーパー・ベーシック 辻本善光氏

 いつから親しくなって、呼び捨てにするようになったのか全く覚えていないが、また当人が本気で言っているのかどうかわからないが、「斎藤さんに、先生、さん、君づけされたら、かえって気持ち悪いですよ」と言うので、本欄では普段通りにさせていただく。不快に感じる方もいらっしゃるかもしれないが、どうかご容赦いただきたい。...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』
その6 泰然自若 榊原直樹氏

 「『さかきばら』の5文字が長いんで、別な呼び方をしたいんですけど、今まで何と呼ばれることが多かったですか?」と失礼極まりないことを聞いても、「そうですよね、長いですよね、たぶん、そんな理由からなんでしょうね! 大学時代は『さかき』と呼ばれていました」とさらりと答えてくれる。いつの間にか、吸い取り紙のように...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』
その5 ”ドクター” 塩川満章氏

 1980年代前半の頃、日本橋の氏のオフィスに出入りしているうちに、ほぼ同世代のスタッフ(芝崎、神庭、伊東、建部氏ほか)と仲良くなっていった。そうこうしているうちに、いつの間にか私も氏をドクターと呼ぶようになっていた。特に芝崎氏とは、その後、ドクターのビデオや書籍を、ルネッサンス・ジャパン=作る人、科学新聞...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』その4
モーション・パルペーションのパイオニア
中川貴雄氏

 私が科学新聞社で、こうやってのうのうとやってこられたのも、中川氏のお陰と言っても過言ではない。ご夫婦で鰻の寝床のような当社の旧社屋に来られたのは、40年以上前のことだった。その頃はまだカイロの仕事が回ってきてなくて、らしきものと言えば、休日のセミナー等での展示販売要員か、塩川満章氏や須藤清次氏のところへ使...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』
その3 栄養学のプロフェッショナル 和泉宏典氏

 彼とのお付き合いは比較的浅い。まだ5、6年ほどといったところだ。コロナが大騒ぎになる直前に、「日本で栄養学のセミナーを開きたい」と連絡をいただいた。お会いしたことはなかったが、和泉さんと聞いて「ん、アトランタの矢島さんがオフィスを引き継いだのがIZUMI CHIROPRACTICだったな!」と思い出し、聞...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』
その2 マイプラクティス 岡井健氏

 彼との出会いは2004年、ちょうど20年になる。なので、2009年の第1回フェスのときも登場していただいている。30数年前に幾度かLAの中川先生のところに行ったことがあって、LACC在学中の彼の存在は、先生やLA在住の幾人かのDCから聞いていた。が、会って話すというところまではなかった。  20年前、その...
コメントなし

『科学新聞社プレゼンツ 10月イベント』
その1 まずはご挨拶

 9月21、22日の洞爺湖、29日の3団体合同イベントの募集も山場を越えたようなので、そろそろ私が段取りを進めている10月のイベントを、本格的に募集させていただこうと思う。  まず日程を簡単に紹介させていただくと、5日(土)、6日(日)は毎年秋の恒例となっている「岡井健のマイプラクティス2024」。今年のテ...
コメントなし

セミナーレポート
和泉宏典による『カイロプラクターのための栄養学』

昨年4月に開催予定だった、和泉宏典先生による「カイロプラクターのための栄養学」が10月24日(日)に、満を持して開催されました。 1年半の間Webセミナーとして開催される中で、回を重ねることに評判を呼び、参加者数も当初の倍にまでなる人気セミナーとなりましたが、今回は和泉先生も主催者も待望の対面セミナーの実現...
コメントなし

カイロプラクターのための栄養学
第6回 貧血

Mさんは慢性の肩こり、頭痛、疲労感で来院されました。これまで様々な医療機関、マッサージ、鍼、気功、カイロプラクティック・・・などを試したのですが改善が見られず、なぜ私のところに来られたかと言うと、虚弱だった彼女の母親が私のところの治療と指導で元気になられたからでした。   鎮痛剤で痛みを抑えても、...
コメントなし

カイロプラクターのための栄養学
第5回 腰痛とタンパク質不足

Yさんの場合 Yさんは幼稚園の先生をされている47歳の女性です。椎間板損傷(線維輪断裂)による腰痛で来院されました。つまり腰椎の骨と骨の間にある、クッションのような役目をする椎間板が弱って傷ついている状態です。 仕事では、立ったり、座ったり、お遊戯をしたりと、結構ハードな肉体労働に加え、家族間の悩みも多く、...
コメントなし

カイロプラクターのための栄養学
第4回 恒常性(Homeostasis)

体内環境を一定に維持 地球に生物が存在できるのは、気温や大気中の酸素の濃度など、環境面の極めて微妙なバランスが保たれているからです。それと同じように、人間も生命を維持するためには、体温、血圧、水素イオン濃度を示すペーハー(pH)値、血糖値、電解質濃度、血清たんぱく質量などが一定の幅に保たれている必要がありま...
コメントなし

カイロプラクターのための栄養学
第3回 食物アレルギー

Tさんは30代の男性で、小さい頃から皮膚炎に悩まされていました。ステロイドの軟膏と抗ヒスタミン剤は、過去25年以上にわたって使い続けていました。彼の食生活を詳しく窺ってみると、パン、麺類、乳製品が大好物で、小麦製品と乳製品は、毎日必ず何らか摂取している状態でした。   私どものクリニックでは、アレ...
コメントなし

カイロプラクターのための栄養学
第2回 「交感神経をオフにできない現代人 」

忙しい日本人の典型的な1日は、朝の満員電車から始まり、職場に着くと1日中コンピュータ画面に向き合って作業を続けます。仕事の締め切りに追われ、胸が痛くなるようなストレスを感じながら、残業を何時間も行い、日付が変わる前に帰宅できれば上出来という人もいるでしょう。睡眠時間が1日6時間を切ってしまう日も少なくないは...
コメントなし

カイロプラクターのための栄養学
第1回 万病の原因:ストレス

1900 年代半ばにハンガリー出身の生理学者、ハンス・セリエが「病気の原因はストレスである」と説明しています。ストレスと言うと一般的には精神的なストレスのことを連想するかもしれませんが、実際にはストレスは3つの種類に分類することができます。 精神的ストレス 肉体的ストレス 栄養的/ケミカル的ストレス。 ちな...
コメントなし

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。