カイロプラクターのための栄養学
第1回 万病の原因:ストレス
1900 年代半ばにハンガリー出身の生理学者、ハンス・セリエが「病気の原因はストレスである」と説明しています。ストレスと言うと一般的には精神的なストレスのことを連想するかもしれませんが、実際にはストレスは3つの種類に分類することができます。
- 精神的ストレス
- 肉体的ストレス
- 栄養的/ケミカル的ストレス。
ちなみにD.D.パーマーは1900年代初頭に、既にこの3種類を
- Thought/Autosuggestion (精神的要因)
- Trauma(ケガなどによる外的要因)
- Toxins(体の中に入る物質、つまり食事や化学物質のことを指す)
と説明しています。呼び方は違いますが、基本的には同じことを言っています。
すべての病気や症状はストレスによって引き起こされます。個々が受けているストレスは、肉体的、精神的、または栄養/ケミカル的なストレス、もしくはそれらのコンビネーションである可能性もあります。
いずれにせよ、これらの3つのストレスの全体量が、個人のストレスに対応する能力を上回った状態が長期的に続く場合、もしくは非常に強いストレスを短期間でも被ることによって、身体の臓器や組織が疲弊し、その過程で症状(警告サイン)が出現します。その状態を放置しておくことによって、やがて病気になっていくのです。
どの時代に生きていたとしても、ストレスは存在しますし、現代人も例外ではありません。
しかし、100年前と現在ではストレスの種類が変わってきていることに注目する必要があるのです。現代人にも精神的や肉体的ストレスは十分に存在します。しかし、時代によっても状況は異なるとは思いますが、冷暖房は完備され、生活保護、失業手当、年金制度がある近代日本において、精神的、肉体的ストレスが過去と比べて、特別突出して増加しているとは考えにくいのではないでしょうか?
では今と昔では何が違うのでしょうか?
近代化する前の日本の住宅環境、衛生状態は今とは比較にならないほど悪かったため、主な死亡原因は結核、肺炎、胃腸炎といった感染症でした。
戦後、住宅環境や衛生状態が改善され、また抗生剤などの薬が使われるようになり、感染で命を落とす人の数は激減します。
一方で1957年頃からガン、脳血管疾患、心臓疾患が3大成人病と称されるようになり、日本人の死亡原因は大きく変化しました。これらの病気は、糖尿病、高血圧、高脂血症なども含め「生活習慣病」と呼ばれるようになります。
この背景には日本における食文化と生活環境が、戦後大きく変化したことと深くかかわりがあります。
便利さと効率性を追い求める現代社会は一見飽食の時代のように見えますが、実際は食品の質が低下し、必要な栄養素を満たすことが困難になるどころか、農薬、化学調味料、添加物が山のように含まれるようになっています。周囲の環境も衛生状態は改善されたものの、様々な化学物質で汚染されています。このような時代の流れとともに、現代日本人が患う病気や症状も大きく変化しました。いまでは生活習慣病に加え、花粉症、アトピー、食物アレルギー、喘息といった、アレルギーに関する問題、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎などの胃腸病や自己免疫疾患、鬱、不安障害などの精神的疾患、さらに自閉症、アスペルガーなどの発達障害など100年前はほぼ皆無であったような問題が当たり前のように存在します。
これらの問題を遺伝子で説明しようとしても、遺伝子が100年くらいの単位で変化することは考えにくく(実際変わっていない!)、唯一劇的に変化した要因である、食生活を含む生活習慣がこれらの健康問題を作り上げることに寄与していることに疑う余地はありません。つまり、栄養/ケミカル的ストレスが増大し、全体的なストレス量を大幅に増やしてしまっているのです。
アメリカではデトックス(解毒)や栄養指導を行うカイロプラクターが年々増えています。これは必然的に起きている現象であると私は考えています。なぜなら、現代人の訴える様々な不調を改善するうえで、多くのケースは解毒や栄養的サポートがなければ、速やかに改善することができなくなってきているからです。
私がクリニックで診させていただいている患者さんも例外ではなく、栄養/ケミカル的ストレスを抱えておられます。近頃は日本に住んでおられる方をオンラインで治療させていただくことも増えていますが、日本人の栄養状態は決して良いものではなく、特にタンパク質や必須脂肪酸の不足と、砂糖の過剰摂取は、多くの方の健康状態を低下させる原因となっています。
カイロプラクターは肉体的ストレスの一種である構造的な歪み(特に脊柱における)を見つけ出し、正常な状態を取り戻すプロです。このタイプのストレスは誰にでも、どの時代にも存在するストレスです。背骨の歪みを取り除くことは、神経系の働きを正常化することを助けるだけではなく、ストレスの絶対量を軽減させることに大きく貢献しますから、腰痛や首の痛みを緩和することのみならず、患者が期待もしていなかったような、健康向上効果を経験することは、この業界では珍しいことではないと思います。
しかし、カイロプラクターが肉体的(構造的)ストレスの軽減のみならず、現代人の大半が持つ栄養/ケミカル的ストレスを軽減するサービスを提供することによって、さらにより良い治療効果を提供できるようになるのです。また、筋骨格系は栄養状態を如実に反映するため、カイロプラクターは構造、機能、栄養状態を同時に把握し適切な指導と治療を行うことのできる極めて貴重な存在と言えるのです。
和泉宏典(いずみひろのり)DC

- 1970年 京都府宇治市出身
- 1992年 同志社大学卒業
- 1999年 University of Georgia卒業
- 2003年 Life University卒業、ジョージア州アトランタにて開業
- 2010年 ニューヨーク州マンハッタン郊外にてIzumi Family Chiropractic and Wellnessをオープン
- 2021年 フロリダ州に移住
- 資格
- ドクターオブカイロプラクティック
- ダイジェスティヴヘルススペシャリスト(Food Enzyme Instituteの認定医)
Dr. Izumiの人となりを詳しく知りたい方は以下のリンクをどうぞ
https://www.izumiwellness.net/about-dr-izumi.html
終了したセミナー

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『カイロプラクターのための栄養学』第Ⅴ期「触診と視診でわかる患者の健康状態」動画配信

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その1 まずはご挨拶

セミナーレポート
和泉宏典による『カイロプラクターのための栄養学』

カイロプラクターのための栄養学
第6回 貧血

カイロプラクターのための栄養学
第5回 腰痛とタンパク質不足

カイロプラクターのための栄養学
第4回 恒常性(Homeostasis)

カイロプラクターのための栄養学
第3回 食物アレルギー

カイロプラクターのための栄養学
第2回 「交感神経をオフにできない現代人 」

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